退会済のユーザー さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
アニメ単体としては全然アリ
原作既読。アニメ化の発表をきっかけに存在を知り、予習がてら1巻を手に取ったところ思いの外面白く、話が一区切りつく7巻まで一気読みしました。アニメではその7巻までの内容が、13話+劇場版で描かれています。
以下、原作の批評とも合わせて。
少々長くなります。
◎内容
思春期症候群という架空の超常現象を扱った学園ファンタジー。詳しいストーリーについてはここでは割愛します。
プロットや設定などに目新しさはあまりなく、既存作に既視感を抱かせます。ネットの評判でも「〇〇っぽい」という表現を頻繁に見ますし、やはりそういう点は否めません。安易に「パクリ」と言うのは早計だと思いますが、そう感じる人は少なからずいるでしょうね。
しかしながら、恐らくは作者である鴨志田一さんの話の運び方が上手いのでしょう、個人的にはそれほど気にならず、純粋に楽しめました。実際7巻まで一気読みしてしまいましたし……笑
ここからは主にアニメについてです。
◎脚本
原作5巻分が、1巻あたり3話・3話・2話・2話・3話で描かれています。
1クールのTVシリーズとして綺麗にまとめつつ、劇場版に繋げる伏線も張った構成になっていて、その点は見事でした。細かいシーンの改変やカットは多いですが、原作読者もアニメからの人も違和感なく見れるよう、上手く工夫されています。
シリーズ構成がある程度のキャリアを持った方なので、その実力が発揮されたと言えるでしょう。
ただ、1クールで5巻分をアニメ化する代償として、エピソードによっては駆け足感の否めないものになっています。
特に2話構成になった「ロジカルウィッチ」編と「シスコンアイドル」編は、どうしてもダイジェスト感が拭い切れません。
{netabare}最終話Bパートは、原作における『ゆめみる少女の夢を見ない』の序盤の内容が描かれています。
これは先述の「1クールに綺麗にまとめた」という点では非常に上手い構成なのですが、反面、本筋の話である「おるすばん妹」編が、やや霞んでしまうという結果になりました。
また尺に収めるため、原作で印象的だったシーンがごっそりカットされたのも、ファンとしては不満に感じる人も多いかもしれません。まあこれは、原作を読んでいないとあまり関係のない話ですが。{/netabare}
2クールにしてほしかった、という声もあり、尺的には確かにそれの方がよかったと思いますが、2クールに構成するとなるとまた勝手も変わってくるでしょうし、こればかりは難しいところです。
そもそも7巻という巻数が、微妙にアニメ化しづらかったんじゃないかなー…とも思ってしまいました。
と、いろいろマイナス点を言ってきましたが、個人的にアニメだけをまず見る分には、十分に楽しめるものだと思います。
◎作画・演出
作画は素晴らしく、同期に放送されていたアニメの中でもトップクラスのクオリティです。モブの一人一人の動きや、電車に乗る人々の微かな揺れなども、CGに頼らず手描きされていて驚きました。
放送前から、「アニプレックスは随分とこのアニメに気合い入れてるなあ…」と思っていたのですが、それがよく伝わるものでした。
一方で、演出はイマイチです。一つ一つのシーンにあまり重みや迫力が感じられず、特に各エピソードのクライマックスは、個人的にはもう少しバシッと決めてほしかったです。
ただ先述のように作画がすごく、キャラの表情なども細かく書き分けられているため、その点で演出はある程度カバーされていたようにも思いました。
◎音楽
劇伴に関しては、これがまたすごくいいです。fox capture planという音楽ユニットが手がけているのですが、作品全体の、どこか不思議で幻想的な雰囲気を見事に表現していました。
サントラを買ってしまうかもしれませんし、fox capture planのアルバムも買ってしまいそうです。
主題歌は、OP・ED共に印象的でよかったです。OPは初め合わないかなと予想していましたが、いざ見始めると全然違和感がありませんでした。EDも、あの幻想的なサウンド・メロディに病み付きになりました。
◎声優
もう何も言うことはありません。どの方も素晴らしく、圧巻の演技力でした。この作品の魅力をぐっと引き上げていたのは間違いありません。
*総評
作画や音楽、キャストの演技は一級品。ストーリー上動きは少ないし、演出はそれほどよくありませんが、それでもアニメとしてかなり見応えがあります。
一方脚本は、気にしなければ普通に楽しめるとは思いますが、気になってしまうとどうしてもダイジェスト感や駆け足感が目につきます。先に原作を読んだ方がこのアニメを見ると、人によってはかなりガッカリするかもしれません。
とはいえ個人的には、アニメ単体としては比較的よくできていると思います。ストーリー自体が面白く、また続きが気になるよう上手く脚本構成されているので。
「じっくり味わいたい!」と思って原作を買う人が続出しているようですし、少なくとも販売促進という面では大成功だと思います。
両方作品に触れるとすれば
アニメ→原作
の順がおすすめかと思います。
最終的な評価は劇場版『ゆめみる少女』を見てからですが、現時点では比較的期待できそうです。