退会済のユーザー さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
文句無しの名作
本作の最も素晴らしい点はキャラクターの描かれ方である。
主人公のエルリック兄弟の掘り下げは、当然充分に行われているし、その他のメインキャラクターもバックグラウンドは実にしっかりしている。
さらに言えば、2、3話程度しか出番の無い、名有りのサブキャラクターでさえ、活躍の機会が確保されている。
掘り下げや活躍の場に配分された時間に差はあれど、この作品のキャラクター達は丁寧な描かれ方によって、他作品のそれと比べて確実に存在感を発揮している。
そんなキャラクター達によって彩られたストーリーは完璧という他ない。
王道少年漫画の気質を保ちながら、どこか闇を潜ませた展開はとても引き込まれた。
伏線の扱いが上手く、何十話越しで回収される興奮は作中に幾度もある。
本作は多くの素晴らしいテーマを含有している。
特に生命に関しては作者の強い思いを感じた。
この作品は、生命への冒涜を徹底的にタブーとしているのだ。
作中の例を少し挙げてみる。
死んだ人間を蘇らせられると伝わる禁忌を犯すと、手足や内臓を失う等の重い代償を受ける。
生きた人間と動物を組み合わせて新たな知的生命体を作ると、禍々しい異形のものが生まれる。
本作のいたるところで、命は簡単に犠牲にしてはいけないし、弄んではいけないという、作者の強いメッセージ性を私は感じ取った。
当たり前とも言える基本的な道徳なのだが、我々人間にはどうしてもその当たり前が希薄になる瞬間が必ずあるはずだ。
作者はその危うさに対する警鐘の意味もテーマとして作品に込めているのかもしれない。
全64話の膨大な話数を1話たりとも無駄にせず、個性的なキャラクターで紡がれた壮大なストーリーと、生命の基本に立ち還った崇高なテーマを余すことなく描ききった不朽の名作。