おぬごん さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
視聴前「スタァライトしちゃいますって何だよwww」→視聴後「スタァライトされたわ…」
ミュージカルとアニメが相互に作用し合うというコンセプトのブシロードの新企画
既にキャストによる舞台第1弾が上演済み、このアニメの後にアニメの内容を受けた第2弾を上演するようです
ストーリーは聖翔音楽学園に通う「舞台少女」たちが、学園の地下の謎空間で謎のキリンが仕切る謎の戦い「オーディション」に参加し、それを勝ち抜いて舞台少女の願い「運命の舞台」を実現させる…というもの
日本、特にヲタ界隈ではミュージカルはどうしても女性の趣味という印象が強いのもあり、
アニメ視聴前は「ま~たブシロードが変なこと始めてるわw」くらいにしか思っていませんでした
同じブシロードの『バンドリ』のアニメが酷かったのも期待感を下げていました
しかし三森すずこ、佐藤日向のラブライブ声優が主要キャストにいたこと、アニメ版の音楽が藤澤慶昌&加藤達也と新旧のラブライブ作曲家コンビだったためにほいほい釣られて視聴w
ところが実際見てみると、古川知宏監督の師匠・幾原邦彦を思わせる急展開やド派手バンク、ガチ作画の戦闘などもあり1話からグッと引き込まれてしまいました
その後も3話で真矢に魅了され、箸休めの4話で「あれ、みんな意外と仲良いんじゃん!」と良い意味で驚かされ、5~6話の百合にニヤニヤし、6話ラスト~7話では衝撃を受けました
また言及は避けますが、この7話のおかげでそれまでの1~6話を見返したくなっちゃうんですよねw
これにより各話、各シーンをよりしっかり見るよう意識付けられ、気付いた頃にはこの作品の虜でした
この構成が非常に巧みで、私は見事にスタッフの術中にハマってしまったわけですw
ただこの作品終わってみて読み解くと凄くシンプルなんですけど、伏線は盛り盛り・暗喩が特盛り・演出に至ってはマシマシ!って感じの作りなので、ラブライブやアイマス、バンドリみたいに軽~く見ようと思って楽しめる作品では無かったかと思います
(恐らく)そういう方々の感想を見ると「分からなかった」「雰囲気だけ」「何がしたかったの?」という感想も多いです
ミュージカルという題材がある程度人を選ぶため、アニメ自体も敢えて人を選ぶ造りに割り切り、刺さる人にはとことん刺さるようにしたのかな~と思います
ただし演劇やミュージカルを凝縮したようなストーリーや演出が特徴の本作ですが、歌って踊るのはオーディションの時だけなんですよね
ミュージカルについてよく言われる「何でいきなり歌って踊るの?」っていうのは無かったかとw
そういう意味では現実のミュージカルよりはいくらかハードルが下げられてるのかもしれません
難点は上述のライト層に辛い造りに加え、声優の下手さですかね
これはラブライブにも似てるのですが、現実でキャストがミュージカルを演じる都合上、メインキャストの約半分が声優が本職じゃない方で締められています
本職声優側の人も、三森すずこ以外はほぼ新人ですし
独白の多い重要キャラにもあまり上手でないキャストが当てられていたりして、ここが受け付けなかったという人もいると思います…まあキャストの上手い下手で展開が予測できるよりは良かったのかもしれませんが
人を選ぶ作品だとは思いますが、私は最終回視聴後「スタァライトされたわ…」と思ってしまうくらいにはこの作品に魅せられましたw
考えてみればブシロードの深夜アニメなのに、MXじゃなくてTBSで放送されてる時点で本気度が違うんですよね
ミュージカルや演劇に興味がある方、伏線や演出に富んだアニメが好きな方、考察しがいのあるアニメが好きな方にはオススメです
一番下に私の考察(ネタバレ含む)を載せましたので、興味がある方は呼んで頂けたら嬉しいです
~余談1~
この作品で象徴的な扱いを受ける東京タワーですが、その1階にあり作中4話と10話でも登場した「東京タワー水族館」は最終回直後の2018年9月30日で閉館しました
また東京タワーの本来の目的である電波塔としての役割も、同日に終了したそうです
このアニメは第1話の放送日がバナナの誕生日、最終回放送日が華恋の誕生日だったりと、偶然だとは思いますが放送日に何かしら縁がついて回ることが多かったようです
~余談2~
真矢役の富田麻帆は『かみちゅ!』のOPでしか知らなかったんですが、今は専ら舞台やミュージカルで活躍されているそうです。発声も舞台のそれのようで一人存在感がありましたが、3話の歌声はかみちゅOPのキャピキャピした感じとは対照的なプロの歌声で、圧倒されました。
~以下、私なりの考察~
{netabare}
・舞台少女の「煌めき」≒「舞台への熱意」。ただしその形・内容は舞台少女によって違う。
・オーディションに勝つのは単なる技術や実力だけでなく、熱意や作品との相性が生む「煌めき」が必要。これは現実のオーディションと同じ。華恋とひかりが真矢クロに勝てたのも、真矢が言うように「2人の方がスタァライトしていたから」≒「2人の方がスタァライトという作品に合っていたから」
・オーディションに勝った一人は願いが叶うが、その燃料は他の参加者の「煌めき」。他全員を蹴落とすジレンマに苛まれるのは現実同様。その救いの無い運命に参加者が時間遡行や自己犠牲といった搦め手で抗おうとするのは『Fate』や『まどかマギカ』あたりを意識?
・しかしそういった搦め手で無く「キリンの願望を叶える」、つまり「予測できない舞台」「舞台少女の一瞬の煌めき」を見せるという舞台少女としてのド直球の手法で最終的に解決したのが素晴らしい。
・イギリスで煌めきを奪われたことで華恋が煌めきを失う恐怖から自己犠牲を選んだひかりに対し、「舞台少女は舞台のたびに生まれ変われる。煌めきを失っても何度でも立ち上がれる」と救いを与える華恋も良い。
・最後は8人分の煌めきを肩代わりしていたひかりに華恋という煌めきが与えられ、また華恋がキリンを魅了し事実上の勝者となったことで、全員が煌めきを持ったまま華恋の運命の舞台「ひかりと2人でスタァライト」で大団円。
・舞台の主催者兼観客で、視聴者に語りかけるなど「第四の壁」を超える存在のキリン。雑誌のインタビューによると口調のモデルは古川監督らしく、舞台少女たちを翻弄し舞台を提供し一番近くで見守るその正体はまさに「スタッフの具現化」なのかな? 同じインタビューによるとキリンなのは「可愛いから」だそうだけど、観客とはまた違う高い視点から舞台を見守るという意味が込められてそう。
・聖翔音楽学園のモデルはもちろん宝塚音楽学校。華恋たちは99期生で2年生(≒学園は創立100年)だが、宝塚音楽歌劇学校の設立は1919年。
・真矢の名前は宝塚出身の真矢みきに由来してそうだけど、別に他キャラ名は宝塚女優に由来してるわけじゃなさそう?
・声優を全面に押し出した作品では多い事ですが、この作品でもキャラに担当声優の要素が組み込まれていると思われます
香子の京都出身設定、まひるのレヴューの時の野球盤(中の人は西武ドームでバイトしていた西武ファン)などですが、
三森すずこ演じるひかりの境遇が「ゆゆゆ」の東郷さんに随分似てるのは偶然なんでしょうかね?
{/netabare}