「天体のメソッド(TVアニメ動画)」

総合得点
69.6
感想・評価
963
棚に入れた
4739
ランキング
1769
★★★★☆ 3.6 (963)
物語
3.3
作画
3.8
声優
3.6
音楽
3.8
キャラ
3.6

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ネタバレ

東アジア親日武装戦線 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 2.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

視聴者をニッコリさせるのって大変だな〜(苦笑)

作品概要
●原作:オリジナル
「カレイドシフト」(権利者)

●アニメ制作
Studio 3Hz
{netabare}
【元請代表作品】
Dimension W(共同)
フリップフラッパーズ
プリンセス・プリンシパル(共同)
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン

監督:迫井政行
【代表作品】
・監督
Strawberry Panic
怪物王女
仮面のメイドガイ
熱風海陸ブシロード
装神少女まとい

原案・脚本:久弥直樹
【代表作品】
sola(原案・脚本)

キャラクターデザイン・総作画監督
秋谷有紀恵(制作時キネマシトラス)
【代表作品】
・キャラクターデザイン・総作画監督
CODE:BREAKER
ゆゆ式
プリンセス・プリンシパル
・総作画監督(共同)
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン

キャスト(略)
{/netabare}

本作はリアル放送で視聴済みだが、先日、姪っ子と一緒に本作を見直したこともあり記憶が鮮明なうちにレビューすることとした。

エピローグ

本作は深夜アニメにありがちなエロ、グロ、下品の毒素もなく深く考えなければある意味幼稚に作られているから、子供には安心して勧められる。
また、アニメをあまり鑑賞しない層でも映像が綺麗なので、観るだけでも楽しいかしれない。
しかし、相当数のアニメを視聴している方々には、凝りすぎた設定なので、考察目的以外はあえて推奨はしない。

ざっと、あらすじは
{netabare}地球外生物の幼女「ノエル」が壊した5人の中学生の友情を、彼女が犠牲を払って解決するお涙頂戴の物語。{/netabare}

本作はStudio 3Hzの処女作かつオリジナル。
しかし、出足から躓いた感が否めない。

監督の迫井氏、『装神少女まとい』まで監督出番はなかったんだ。
やっぱ本作の評価に問題があったのかな?

さて、当たり前にレビューをすれば突っ込み所が満載な作品。
北海道在住ならこの設定にまず白目。
いくらSFが入ったファンタジー設定だからと言って、何でも有りは如何がものか。

以後から表現がきつくなるのでたたみます。
{netabare}
だいたい、洞爺湖から札幌まで中学生が通学出来る距離ではない。
いや、通勤だって厳しい。
道庁赤レンガ庁舎を絵にしたくて、あんな無茶な設定にしたのかな。
放送時は、あの通学シーンを観るたび吹き出していた。
まぁ『ゴールデンカムイ』も「?」という設定はあるからファンタジーは大目みるべきかね?

大通公園の背景作画なら『食戟のソーマ 餐ノ皿』が現状俊逸。
大通公園を背景に使用するならもっと、時間を選ぶべきだろう。
あそこはイルミネーションが点灯して始めて絵になる。
本来なら冬の夕暮れがベスト。
雪のない昼間の描写ならただの都市公園だ。
なお、現在においても3Hzの背景美術はJCスタッフのレベルに至ってはいない。

それと、主舞台を洞爺湖にしたのはなぜか。
道民目線で見たら、洞爺湖を含めて道央圏の湖は観光メジャー過ぎてさしてロマンも感じないし、人工的な工作物が多く風光明媚とも言えないから背景映えもしない。
温泉街で浴衣羽織って酔っ払って歩き、毎晩飽きもしないで花火を打ち上げている俗世的なイメージもある。
札幌ロケを捨てて、円盤やノエルの存在に神秘性を持たせるなら摩周湖あたりを舞台にしたのならまだ納得がいったかも。
しかし、ストーリーがアレだから、この程度の改変は意味はないか。
洞爺湖設定は色々とIやK社と金の匂いがしたから、突っ込みはここまでにしておこう。

ついでにアニメを利用したまち興しは、そのアニメが不評だった場合のリスクも勘案すべきだろう。
正直、放送後の洞爺湖での本作あやかりは端から見ていても恥ずかしかったが、最近は自分達が思っているほど本作はメジャーではないと夢から覚めたようで一安心した。
また、富山の某スタジオで制作された作品の舞台になった地域のような失敗例もある。
逆に好評過ぎても、浜松の某小学校付近に基地の何やらが沸いて来て対策を講じた例もあるから諸刃の矢だね。
{/netabare}

●物語の構成について(考察有り)
{netabare}
さて、本作は専任のシリーズ構成を置いていない。
物語の構成まで「カレイドシフト」がやったから、集団運営で色々と盛りすぎ結果、メタファーを多用した上、超展開が裏目に出て感動を押し売りするような作品となってしまった。
考えてみたらメタファーに頼る癖は既に本作でやっていたのか。
因みに、メタファーを多用すると『フリップフラッパーズ』のようになる。
「カレイドシフト」には脚本の久弥氏も参加しているだろうから、作品企画とシリーズ構成の役割はしっかりと線引きすべきだった。
作品の方向性が決まったら、構成はライターに一任して責任の所在を明確にするべきだったのではないだろうか。
そうしないと、それぞれの意見を立てて盛り込む結果となり、誰がやっても伏線回収に超展開トリックが必要になり、結果、理解に苦しむ物語となる。

また、サブキャラの物語も混在する群像劇で不特定多数の視聴者を感動に導くのであれば、最低プロの構成を置かないと良作にならないのは当然だ。
優れた作品を生み出すには役割分担が厳格であることと、さらに、感動は足し算ではなく引くことで成立させることに重点を置いていることが必要。
また、演繹的に感動を誘導しても、不自然な小細工を見破られると更に逆効果。
あくまで、プロットは帰納的に処理しなければいけないし、名作として残るものは感動が帰納的に受け容れられているものだ。

これは認知科学で考えても合理。
何で認知科学?←私、門外漢ながら仕事上AI理論に携わっていますので考察に用います。
専門用語を用いると読まれている方が大変なので平易に記述。
社会的な「感動」とは学術的には「情動」であるが英語の"emotion"が意味として一番近い。
ここだけ専門用語を用いるが「情動行動のリフレイン(以下リフレイン)」を時系列を考えて組み立て感覚器官に上手く認知させると達成される。
しかし、これはまかり間違うと「洗脳」にも悪用可能なので詳細な理論解説は省略する。

映画もドラマもアニメも「リフレイン」を熟知してプロットすると、まあまあ感動をしてもらえる作品を作ることは可能。
ただし、「リフレイン」はプロットを最適化する理論の基軸であり、プロット能力があることが前提であるので「リフレイン」をマスターすれば誰でも可能という意味ではな。
具体的には統計処理などで、テンションとリダクションのマクロなリズムと流れを可視化し、パターンを効果的に組み立てることだ。
例の三話で激変も「リフレイン」からみて合理的な構成となる。
この辺は映像メディアの専門学科でも教えていること。

AIに関して述べれば、「リフレイン」の精度を上げるには統計処理を行うが、その過程で大衆の感動パターンの数値化が為されれば、それを解析してアルゴリズムが組める。
よってAIがシナリオ書くことは理論的に可能である。

しかし、良作や名作にまで昇華させるのは上記理論+αとなる。
「+α」は固有感性のことだが、感性は人それぞれ偏差が均質化は不可能。そしてこの閾値が高ければ高いほど天才であると理解してもらえればいいかな。
現在のAI技術で「+α」に行き着く迄にはまだまだ時間がかかるが、逆にAIにプロットさせシナリオを書かせても凡作レベル程度は可能という現実に至っていることは認識しておくべこと。ただし2018年現在、海外の最新AI技術という限定で。(日本のAI研究は海外から見て残念ながら20年は遅れている。)
さらに、3DCGの進歩も目覚ましく、遅かれ早かれ、アニメ制作が自動化される時代が訪れるだろ。
(大量生産されて一作に味も素っ気もなくなるかも。しかしIoT革命とはこういうことを目指しているわけだ。)

さて、本作を「リフレイン」に沿って考察してみる。
大雑把にモデル化すると、テンション構築は10話まで続き、11話でリダクション、12話でテンション再構築、最終回でリダクションの流れとなる。
問題は11話のリダクションをアウフヘーベン(情動の極大値)と最終回のアウフヘーベンの相関だが、最終回で11話のアウフヘーベンを超えれば、多くの方々は本作を良作と位置付けただろうが、本作の情動最大値は11話であり、したがって残り2話の間延び感が本作の評価を下げてしまったと結論できる。
これでは、抽象的な表現なので、本作の課題点をオーソライズして具体的に絞り込みをかけてみる。

まず、本作では劇中での問題解決の手法として「世界線移動」という便利な小道具である超展開を用いたことが、多くの視聴者を唖然とさせている。(一部のオタク向けの演出だ)
本作の場合、11話まで超展開の気配すら出さなかったのだから、大多数の視聴者は社会的な解決(人間ドラマ)を期待していたのではないだろうか?
特に脚本の久弥氏は元keyに所属しており、key展開の期待値は高かった。

しかし、ここで疑問となるのは後に大ヒットした『君の名は。』でも本作同様に超展開トリップで物語を展開したが一般の方々にも好評だった点だ。
これが、前述で指摘している「構成」の良し悪しの課題点となる。
『君の名は。』では超展開が疑問なく受け容れられても、本作ではこの展開が魔境となった根本の原因は、超展開への伏線の張り方の良し悪しに起因する。
更に、『君の名は。』の場合は「黄昏」や「口噛み酒」だの伏線の張り方が重層的かつ周到であり、これらのキーワードで超展開への心理的準備も抜かりなく行っている。
つまり、『君の名は。』での超展開は既に入れ替わりで常態化しており、観衆は更なる超展開があっても既に心の準備を無意識に誘導されていたことと、下手に考える隙を与えないクイックモーションで超展開を繰り出し、観衆を世界観に引き摺り込んだ事が勝因だろう。
しかし、本作では超展開の伏線がなく唐突にこれが起こったことで視聴者を混乱させ、結果、評価が二分した。
人間とは生活上常に一定の予測を行っており、その予測では処理出来ない事象に遭遇するとどうしても思考の混乱を招く。
混乱を鎮める為に脳味噌からあらゆる情報を引き出し、心理の合理化を図る。
その結果、経験として世界線移動のシナリオを理解している層と、理解出来てない層で評価が二分してしまうこととなる。
無論、後者の方が圧倒的に多数なので、この層の支持を外すと凡作との評価が固定される。

したがって、本作の構成の最大の欠陥は超展開への伏線をさぼったこと(又はあえて隠したこと)に起因し、結果として、物語全般の品質まで劣化した。

(しかし、平行考察をすると、制作年次からして『君の名は。』が本作をパクったようにも思える。世界線移動はもとより物語の転機が流星だったとか…まーいいか)

多少擁護になるが、実質最終回の11話の演出だけ見れば、リアルタイム放送時には好印象であり率直に感動もした。
ただ、円盤のない世界線である残り2話をどう感じたかも本作評価の分岐点だろう。
今まで、延々と「ののか」と「しおね」の意味不明な確執につき合わされた上に、超展開でも「ののか」の心配は晴れず、肝心の「しおね」がいない世界線だったが、天文台に唐突に現れた「しおね」をどう考えるか。

12話と最終回までの私の印象(放送当時)を率直に述べると。

世界線移動→「ののか」と「しおね」のみ記憶の持ち越し→「ノエル消失」で「しおね」改心→ご都合主義
としか映らなかった。
逆に12話と最終回の設定の為にせっかくの11話の感動も興醒めしたぐらいだ。
「ノエル」復活のハッピーエンドで最終回が何となく救われた感じかな。
ここで母を亡くした「ののか」の辛い記憶が、「ノエル」との関係や「しおね」他3名との絆のキーワード。

「ノエルのいない世界線」でのお願いでも、皆のお願いのうち、記憶を保持している「ののか」と「しおね」の意識には「ノエル」も含まれているから最終回最後でノエルが復活するオチだが、世界線に含めたメタファーを普通に視聴をしていて「現在の世界線」と「別の世界線の記憶の保持」と最後の「ニッコリ」の関係は考察や視返しでもしないと気付けないし、凝りすぎた設定を盛りすぎて考察を要求するストーリーにしたことも本作の大きなミス。
本作の視聴対象を考えたら、もっと単純化しないとついていけないだろう。

ところで、一部のオタク受け超展開を選択した時点で評価が二分する程度のことを3Hzは認識できなかったのだろうか?
スタジオ立ち上げ処女作であればなおのこと、慎重になるべきだろう。
実験的なシナリオはスタジオの評価を固めてからやるべきであった。

本作で懲りたのか、以後のオリジナル『フリップフラッパー』と『プリンセス・プリンシパル』では構成を置いたが『フリップフラッパー』は破綻し、『プリンセス・プリンシパル』は本作同様、物語の詰めの甘さがあった。
しかし、シリーズ構成を置いても物語を巧く作れないのは、仲間内で盛り上がって客観的な視点が欠落する、小規模スタジオ特有の姿勢にも問題があるのではないかと思う。

結論として本作は構成の欠陥で凡作となったが、逆にポテンシャルが高い分、構成がしっかりとされていれば良作となった残念な作品だ。
ある意味、本作が大ヒットしたら『君の名は。』の企画に影響を与えていたのではないかとも思う。

3Hzは個人的に好きなスタジオであり、今後、良い作品を期待しているので、叱咤激励を込めて辛口批評をした。

実は最初、同じオリジナル1クールで名作評価を受けた『よりもい』との平行考察を行ったが、これ以上記述するとクドイので、この内容は『よりもい』のレビューに持ち越そう。

以上をもって評価は2.5、11話を加点しても精々3といったところか。
期待を裏切られた減点も考慮する必要があるな。{/netabare}

●キャラデザについて(考察有り)
{netabare}
本作のキャラクター原案はQP:flapper。
女の子キャラが可愛いことに異議はないと思う。
この方々のイラストの女の子は実際可愛いし、もっとキャラクター原案に進出をしても良いように思う。
「ノエル」や女の子の衣裳はレイヤー向けに配慮がされている。
しかし、キャラクター原案がいくら良くてもアニメではこれを動かすという課題がある。
ストーリー性よりも、女の子が可愛くなければ成立しないアニメでは問題はないが、表情演技が必要な本作でこの絵柄はアニメーター泣かせであろう。
萌画系は笑顔が表情の基本であり、内面感情のシリアス表現は元来不得意である。
本作のように人間関係のシリアスな場面が多いと、表情表現の限界から作画からどうしても訴求力を感じない。
もっと深刻な表情をしろよっ!といってもキャラデザ的な限界がある。
特に「しおね」の表情変化は他のキャラよりも多く要求されるが、黒しおねも、白しおねもハイライトの使い方のみで処理し、線画処理をしなかった(キャラデザ的に厳しかった?)は本作の作画演出の限界とも思える。
「ノエル」も11話はもっと表情演技をさせないと視聴者に心情が伝わらないところ、水瀬さんの熱演で乗り切ったラッキーキャラ。
表情演技が乏しいから、声優さんの演技力にどうしても頼ってしまう作品とも言える。
その点『はねバド!』の「羽咲」の表情の使い分けは見事だと思った。
他のキャラが劇画チックなキャラデザであるから、表情を豹変させても浮かないというのもあるが、表情演技の作画の切り替えは本作では重要な演出であったのに、絵柄とストーリーの相性が良かったとはけっして言えない。
『七星スバル』の「あさひ」や「のぞみ」のようにキャラデザが崩れることを臆することなく、思い切った表情変化があっても良かっただろう。
それでも、同じQP:flapper原案の『ガーリッシュナンバー』よりも表情変化には工夫を凝らしていた。
ディオメディアは絵柄というよりスタジオとしてギャグ顔は巧いが、シリアス表現は不得意な傾向にある。
この点は『BEATLESS』か『ハッピーシュガーライフ』のレビューで斬り込もう。{/netabare}

さて、なぜキャラデザの項目を設けてまでレビューをしているかと言えば、事後の3Hzの作品のキャラが、杞憂かもしれないが、本作のキャラデザの影響を受けている気がしてならないからだ。
特に『プリンセス・プリンシパル』と『GGO』。
作品の幅を広げて行くのであれば、キャラデザの束縛から早く脱皮した方が良いと思う。
まぁ京アニも堀口絵からの脱皮はそれなりに時間がかかったから、なかなか難しい面もあるのだろう。
それに『GGO』では「レン」に変顔をさせていたから大丈夫かな?

●音楽
OPもEDも挿入歌も申し分ないだろう。
ED『星屑のインターリュード』に至っては神曲との評価も見かけるからね。
(私はそこまで思わないが)
ここは率直に加藤氏の力量を認める。

CVは項目を設けないが「ノエル」役の水瀬さんはイメージぴったり。
その他のキャラも大きく外してはいないが、CVは主観が極端に出る分野でもあるので、問題がなければ通常は「3」としている。演技がよければ加点をする。
本作では「ノエル」の演技が光っていたので高得点でも良かろう。

ここまで読んでくれた方々にちょっとした情報を。
本作でも聖地巡礼なるものが行われていたが「しおね」のアパートはなかなか発見できないらしい。
正確な住所を書くわけにはいかないのでヒントだけ。
{netabare}所在地は白石区。{/netabare}
建物だけを模写したようで、周囲の背景は合わない。
だから発見が困難なのだろう。
なお、これは放送当時に私が確認したもので、現在存在するか否かは確認していない。

あと、東急ハンズは駅前に移転したので、現在は存在しない。

投稿 : 2018/09/25
閲覧 : 506
サンキュー:

35

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