「殺戮の天使(TVアニメ動画)」

総合得点
66.9
感想・評価
344
棚に入れた
1452
ランキング
2681
★★★★☆ 3.2 (344)
物語
3.0
作画
3.3
声優
3.4
音楽
3.3
キャラ
3.2

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ネタバレ

kurosuke40 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

私は神様の一部だから……

原作未読

最終話まで見て。
メロドラマだった。
運命の人はいる、なんて言葉はとても残酷。

ごめん、レイチェルの本質だったのだね。失礼した。


12話まで見て。
とあるレビューで
 ・「薄幸系美少女と殺人鬼の青年の関係性を、ニヤニヤしながら楽しむ」系
とあったが、私もそれ以上でもそれ以下でもないと思う。
フリゲらしい、内面世界のお話。


以下小難しい話。
円を思い浮かべてほしい。
きっと真円が思い浮かべたはずで、わざわざ歪な円を浮かべる人は少ないだろう。

人にはどうも理想的なものを追い求める傾向がある。
理想的な自分や将来像、理想的な家族を思い浮かべたことはないだろうか。
そして、往々にして現実は理想に落ち着くことはなく、
それなりに安定したところでやりくりしているんじゃないだろうか。

レイチェルは理想的でない現実を認めない。
認めないというより、見ていないという方が近いか。
彼女は、縫い合わせて形だけでも理想に近づける。
そしてもちろん彼女は彼女自身も完全でなければならないと考える。
だが、彼女は(詳細は明らかになっていないが)嘘つきであり完璧ではない。

完全性を追い求める彼女にとって、神様とは頂点の存在であり、完全性の象徴である。
しかし嘘つきになってしまった彼女自身は、完全性からは程遠い。
自殺も(聖書で)理想的な行為ではないとされている以上、
かくして、完全性を希求する彼女は完全ではない「私を殺して」とザックに申し出る。
この作品にて殺人鬼を天使と形容するのも、神様の掃除という含意を表に出したものでしょうね。(神父側が言っているからブラフっぽいのだけど)
OPでレイチェルの後ろに落ちている壊れた人形が彼女による、彼女自身の自己像でしょう。
レイチェルの「役に立つから」という静かな言葉は、私(レイチェル)と神様との関係をなんとかやりくりして取り持とうとする、痛烈な叫びに聞こえる。

レイチェルには信仰の欠片もないと神父が指摘したのは、
彼女は不完全な自身を認め、許しを請うのではなく、
不完全な自身を認めず、まだ私は神の一部であると神にへりくだっているから。
神父からすれば、おごがましいの一言に尽きるだろう。

神様の一部であったレイチェルは、相対的価値観を理解しない。
それは絶対的な位置づけにいれば、相対的なものなんて必要ないから。
神父が「迷える子羊か悪魔か」とこぼしたのはレイチェルが幼く相対的価値観を獲得していないのか、はたまた本質的に理解することができない存在なのか、ということなのでしょう。
相対的価値観を理解しない彼女が自己のためだけに行動するというのは、ある意味当たり前なのかもしれない。

魔女裁判で自己中心的な態度を指摘され、火あぶりにされるレイチェル。
その際に神父の「私の中の神様」というパワーワードに触発され、レイチェルの中の神様はザックに転移する。正確には既に転移していたのを自覚した。萌芽は既に見られていた。
転移できた理由はあれもこれも思い浮かぶが、一番の条件は、ザックがレイチェルの思う穢れなきものという神様の一部である資格を有していると思っているところだろうか。
社会的な汚れと宗教的な魂の汚れは別物らしい。
神学的な展開になるが、神は論理を超越した存在であり、すべてが真となる存在である。神の一部は全体であり、全体はまた一部でもある。
神様の一部であるザックはまた神様でもある。
かくして、神は顕現なされた。

だが、神様は肉体を持った神様である。レイチェルの中の神が現実に寄ってきている。
レイチェルが現実の不完全な自身を認め、完全な世界を追い求めるのをやめるならば、レイチェルが死ぬべき理由がなくなる。
その転換の鍵を握っているのは、レイチェルの中で完全性の象徴となったザックであることは言うまでもないだろう。

薄幸系美少女と殺人鬼の青年の関係性を楽しむ系とは言い得て妙です。
(ニヤニヤしながらはちょっと趣味が悪い)



蛇足
最終話だと思ったら最終話じゃなかった。基本最後まで終わってから見るスタイルなので肩透かしを食らった。

コミックスのCM、可愛い。

当初は、罪人の死刑は殺されるか処刑人になるかを選べる。
殺すのが好きな罪人に殺させれば良いという設定かと思った。
だが、フリゲらしい内面世界で、私はフリゲ脚本の方が好きかな。

恵まれた容姿ってのも考え物なのかもなー。現実を受け止める機会が少なくなる。

タイトルからして、ザックが死んだら神がいなくなった世界は要らない世界。
私(レイチェル)と一緒に消し去るという暴走ENDもあり得そう。
ここらへんアニメは一本道だからそっちに持っていくことはあり得ないだろうけど、
ゲームだったら選択肢としてはありか。
メディアとしてアニメより複数ENDがあるゲームの方があっている話でしょうね。

結構フリゲはやったほうだけど、この作品はやったことないな。なんで抜けたんだろう。

投稿 : 2019/04/19
閲覧 : 441
サンキュー:

12

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