じん さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
青春の枯れに注がれるエネルギー映画。
作品自体への評価をするならば、製作予算は関係するが、興行収入の話はしたくないというのが私のポリシーである。そういう意味で補正をかけるわけにはいかないのだが...この作品は異常なまでのヒットを記録した。
日本映画史上2位という記録をロングランで打ち立てたこの作品は、現在最も多くの人が知るアニメ映画と言える立ち位置を確立した。私はこの映画にレビューしてみようと思う。
素直に言うと物語には多少の粗が見られる。納得がいかない部分が散見され、設定も不確実なように感じる部分がある。ストーリー後半は監督がこの作品のテーマにしたかった「もう一度やり直せる過去に何をしたいか」に合わせて矯正したような印象を受けた。ただ、劇場公開作品ということもあり、場面展開の見せ方としては一般大衆、ターゲットの若年層宛には十分と判断したのだろう。
作画についてはさすがの技術である。背景に限っても書き込みが非常に多く、映画としての力量には十分すぎる。エフェクトが多く誤魔化されていると論評する人もいるだろうが、影の使い方や視線移動などのコンテに関しては現代映画のレベルすら大きく凌駕していると言ってよいだろう。このことも、作品を盛り上げた要素の一つだ。
キャラクターは誰の目にも馴染みやすいデザインであると感じる。リアルさを削って登場人物を少しだけ幼く書くやり方の成功例だろう。ヒットしたアニメ映画は実際にこのようなキャラクター特徴を汲んでいる場合が多い。
音楽。私は以前からRADWINPSのファンであったが、おそらくこの映画で知ることになっても絶賛しただろう。歌だけでなくサウンドトラックも非常にうまくテンションを描ききっていた。特に後半は楽曲に合わせてコンテが切られており、劇場作品を流行させたのはここなんだろう。ヒットOVAのフリクリみたく「ミュージックビデオ」と化した、なんて揶揄されても、そのやり方が理にかなっていることは海外のヒット映画に挿入歌が多いことからも明らかだ(日本の映画には極端に少ない)。
声優の演技は十分だと思う。棒と言われるほどのものではないし劇場アニメ映画でいうところの狂気が必要とされるほどのそれでもない。実際に専業声優を多く使わないという選択は映画のマーケティングを考える上で合っていたように感じる。
さて、私も近くの劇場に見に行った見に行った映画だが、座席を埋め尽くしていた周りは十分に若い人ばかりで、SNSでのヒットや宣伝効果を強く実感した。じゃあ話題だけの過大評価と評価するのは早計である。私には足りないところが合っても(前述のストーリーなど)、作画や音楽には文句無い出来であり、これらは若い層をターゲットにして計算高く作り込まれた結果、例えるならばツボを押すように、青春の枯れに注がれたものだったのだ。