じん さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
誰の邪魔も入らない世界だけどそれってどうなの?
先に言っておこう。このアニメは攻殻機動隊の影響を色濃く受けている。それじゃその作品の劣化版なのかと言われればそうではない。このアニメが優れているのはそれでいてオリジナル要素も味わい深い所なのだ。
放送時期がTVアニメ攻殻機動隊STANDALONECOMPLEXの丁度10年後であること、ビル群やヘリコプターの飛び方、青緑色の強調されたCGなど、語りはじめればキリがない。私が最も好きなアニメの1つである攻殻機動隊に通じるものがあると最初に引き込まれたものである。
ストーリーは世界観の導入となる1話完結の話が最初にあり、そのうちに数珠のように繋がれて本質に近づいてゆく。繋がれているのはこの作品のテーマである、「社会運営とは何か」というものである。我々が住む現実世界で起きる犯罪についてよく話題になるのは動機である。この動機の元となる興味などをあらゆるデータから測り取り、事前に防止するようになった未来社会を舞台にしている。よくネットでは「そんなおかしいやつは初めからいなくていい」「どうあがいてもお前には無駄」などといった極端な発想が一部で熱狂的な支持を得る。そんな極端が実在してしまったら?我々はどう分けられるのだろうか。大多数のための犠牲が認められる社会運営として、一部の異端な人間を裏で排除する現実は予想以上に近い。別に特定の誰を責めるでもない、一部の意見でそうなってしまうことがあるのだ。またよく挟まれる文学の引用も的を得ている。
全体的に暗い雰囲気が漂う作品だが、常守は順調に成長してゆく。実践的な事に疎かった彼女が最終的に自立して行動するのがこの作品の見所だ。システムに沿うしかない均質的な人々との巧みな対比であろう。
クオリティも申し分ない。声優の演技にも不満はない。ただし所々露骨に残酷な描写が入るので苦手な人は注意しよう。元々そういう世界である。
語りが長くなってしまった。ストーリーがしっかりしていて、考えさせられる作品が見たいなら見ることをおすすめする。攻殻機動隊を見た人はこちらも。こちらを見た人は攻殻機動隊も。世界観やストーリー上どちらかといえばこちらが分かりやすい。