Progress さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
雨に惹かれる
日本には雨の呼び名が400以上もあるといいます。
時期によって、雨の強さによって、雨の形によって、雨を見る人のこころによって、
その雨の呼び名は生まれてきました。
梅雨、神立、秋雨、時雨。
また、文学の世界や漫画の世界に置いても、あめを形容する言葉が生まれてきました。
しとしと、ぱらぱら、ぽつぽつ、ざあざあ。
言葉を作ってきた人達も、私達と同じように、日常の中で雨を感じて雨の言葉が紡がれてきました。
ある人にとっては恵みの雨になることもあるし、外出する人にとっては、厄介な雨かもしれない。
雨を、目で見て、音を聞いて、匂いを嗅ぎ取って、肌で感じる。もしかしたら、雨を飲んで味わっちゃう人もいるかも。
私は、この作品を見ているとき、雨が降るとき、どんな雨かなと、見ていました。
そこに、私の中から自然と出てくる雨の名前。
あの梅雨の時期を思い出して、雨が降ったときは、空は雲に覆われ、少し湿気ばんで、土のにおいがして、雨が静かに降り落ちる、あの静寂への憧れが燻ります。
作品中で描かれる秋月君と雪野さんの出会いでもありいつもの場所は、湖や川が雨を受け止めて波紋を作って、雲の切れ間から木々に光が当たり、木々の隙間から草木の一部に光がさしてきらめいています。
わたしはそこから、私の中にあるその時感じた匂いや湿気を引き出してしまいます。
日常の中でふと雨をじっと雨を感じます。その時間に永遠を感じるように、静かに聞き入って、そんなふうに雨の魅力に取り憑かれてしまう。秋月君が「雨の世界」といったうように、いつものハレの日とは、時間の流れも、物を表す言葉も、感覚全てで感じるその場所の雰囲気も、世界が変わったよう。
秋月君が晴れの日よりも雨の日を願ったように、雪野さんが梅雨を終わって欲しくなかったと思うように、雨の世界に惹かれる五感の記憶を、この作品は引き出してくれます。