Progress さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
マクロス観が変わる
いわずとしれたマクロスの原点ともいうべき作品ですが、
キャラデザの古さや、
「愛・おぼえていますか」という曲にジェネレーションギャップを感じ敬遠していたのですが(まあTVアニメ版ではこの曲放送されないんだけどね)
視聴してみた所・・・
マクロスという作品に対するイメージが大きく変わりました!
マクロスに関してはマクロス7、マクロスF、マクロスΔを視聴してきましたが、
「超時空要塞マクロス」はマクロスシリーズの要点、マクロスシリーズとはこれがなければならないという設定がわかりやすく、もしくは明確にわかるほどきらめいていると感じます。
【マクロスのヒロイン】
序盤から終盤まで驚かされたのは、マクロスのヒロインについて。
まず、リン・ミンメイというヒロインが登場します。
彼女をヒロインとして描いた時の、魅力の出し方が凄い。
最初の彼女は、明るく、裏表のなさから生まれる、衝動的な言動による無意識に男性を勘違いさせ振り回す子悪魔性から、ミンメイの世界の捉え方がどこかに大人びた魅力を醸し出しており、ギャップとして機能しています。
後半をみていけば、プレゼントのセーターに名前を書くのは独占欲がつよいとか、物語後半になってヒカルに戦争に行ってほしくないというのはワガママだとか、まあ色々出てくるでしょうけど、
そういった彼女の理性と反した衝動的なところに、彼女の魅力があると感じました。
大きく捉えれば、私達はどこか引いた場所で彼女の魅力の虜にされている、
ステージと観客席、彼女とヒカルは同じ時間で感情を交し合う喜びがなかったのだと思います。そう思わせる理由は。
真のヒロイン、早瀬美沙の覚醒。
実は視聴中にこちらにヒロインがシフトすることを知ったのですが
序盤は圧倒的にリン・ミンメイのヒロイン性が際立っており、
美沙にシフトすることがありえない、どうなっているんだと感じました。
しかし、早瀬美沙、視聴者から見える彼女の性格の魅力は、リンミンメイよりも少女性の高いものでした。
一つのデートや会話で一喜一憂する揺れ動く心の弱さ、ヒカルの周りにミンメイのものがあるだけで怒ってしまう子供っぽい嫉妬心、いつまでもこないヒカルを待ち続ける一途性。
恐らく、ゆらゆらととらえどころのない火のように盲目に見てしまうリン・ミンメイよりも、理沙は感情の溢れ方から人としての輪郭がはっきりと描写され、打てば返ってくるその存在の確かさに、ヒカルが安心感を感じ、最終的に選ばれるのが美沙であるのは、
視聴語に再考すればごく当然の事だと納得できます。
こういったヒロインがどんな人物であるか、主人公のパイロットにどんな魅力を与えるのか、わかりやすく視聴者に提示している所が、シリーズ原点となる魅力であると感じましたね。
しっかし、美沙とのデートにミンメイにもらったマフラーをもっていき、
美沙に掛けてやるってのはデリカシーがなさ過ぎるだろヒカル・・・
【男達はなぜ戦場にいくのか】
ヒカルはなぜ軍隊に入ったか、そういったことに悩みます。
その悩みの種を生み出したのはリン・カイフンでしょうね。
カイフンの主義主張は理想論じみていたけど、ヒカルという男を成長させる種にはなりました。(普通の中華料理屋の息子があんな思想は持たないとは思いましたけどね、統合戦争により反戦争派が大量に生まれたと考えれば自然かな)
ヒカルの上司であったロイ・フォッカー大佐の死に場所にしても、愛する女性のいる家までたどり着いてソファーに座りクローディアの料理を待ちながら息絶えます。愛する人の場所に帰ることが目的だったのでしょう。
「ミンメイを守るために俺は戦うんだ」とある種自分を納得させるように答えを出したヒカル。
ロイにしろヒカルにしろ、マックスにしろ、形は違うなれど、かっこよさも違うけれど、パイロットがヒロインを守る、愛する誰かを守るというテーマが、その後のマクロスシリーズに受け継がれていきます。
【人類とゼントラーディはお互いを理解出来たのか】
確かに文化は大事なもので、文化は理解し合い、お互いを尊重すべきです。
ですが、今作品を見ていたときに、人類は文化があり、ゼントラーディは文化が無い、だから文化を教えて戦争をやめるんだ。という目的でマクロス側は動きます。
しかしこの思想は偏った部分がなくはない。
設定としてゼントラーディに文化を与えなかったことで、
人類による文化侵略を容易にしたことを。
最近の作品にもありますが、「異世界」というものを文明レベルを下げることで現代の文明の利器や知恵を活用する。
一種のゲームの攻略のような、相手側の文化を尊重しない姿勢にも見えます。
ゼントラーディは設定でプロトカルチャーに文化を与えられなかった、かわいそう!憐憫の情を感じる・・・だから文化を教えて「あげよう!」そんな生易しい描写がありますが、結局は作家の都合であり、容易に文化侵略できるような「敵」を作り出したようにも見えます。
だからこそ、相手に対して武力で対抗すべきという地球統合軍の方針は、相手の文化を無視はすれど、貶めてはいない。
このマクロス作品で重要なのはお互いを理解することです。
マクロス7やFでは、人間の形ではない生命体との相互理解が図られ、
マクロスΔで文化のある宇宙人を敵にすることで相手の文化の尊重することが語られていると思います。
原点であるこの作品は、第一次星間戦争時の一方的に文化を教えることを批判する意味合いをしっかり持っています。カムジンがラプラミズに「後で文化の続きをしてやる」と、文化=キスとしてしまったこと。笑うべきシーンなのかとちょっと思いましたが・・・。ゼントラーディに押し付けてしまったようになった文化と、文化とは兵器を直すための技術だと間違った認識をもたせてしまったこと、文化を知った相手に対し、私達はどんな理由をつけて戦わなければならないか、そういったことを描きたかったのが、ゼントラーディとの第一次星間戦争後の意味ではないでしょうか。
【総評】
使いまわしが多かったり、所々人物作画が崩れていたりと、まあ目を瞑りたい所も有りますが、OPの映像は、時代が過ぎても素直に凄いと感じられました。
特に言えば、ヒロインの性格の深みや主要な登場人物の性格から主張、ライフスタイルまで、深みがある作品になっています。36話という中で最近の作品にはない、人物の提示が面白い。
観ればマクロスシリーズを評価するポイントがつかめると思うので、マクロス観が変わる事は間違いないと思います。