「君の膵臓をたべたい(アニメ映画)」

総合得点
75.7
感想・評価
305
棚に入れた
1464
ランキング
783
★★★★☆ 3.8 (305)
物語
3.8
作画
4.0
声優
3.7
音楽
3.8
キャラ
3.8

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ネタバレ

fuushin さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

待つことの意味。 それを活かす価値。

原作は未読、実写版は観ていません。
レビューというか、感想です。


人は、どんなふうに死ぬのでしょう?

天寿を全うするのでしょうか。
病気で、亡くなるのでしょうか。
事故で、亡くなるのでしょうか。

桜良は、{netabare} 通り魔に殺されました。{/netabare}


人は、どのくらいの歳で死ぬのでしょう?

90歳? 80歳? 70歳?
桜良は、・・・高校生でした。


では、人は、どれほど "余命" を想像できるものなのでしょう?

60年? 40年? 20年?
桜良は、・・・1年でした。


最後に、人の余命は、{netabare} "どれだけ、確かなもの" {/netabare} なのでしょうか?


・・・桜良には、分かりせんでした・・・。

自分の "存在の確かさ" を。
誰かに "必要とされる自分でいられること" を。

桜良には、見つけられませんでした。

進んでいく病気を受け止めてくれる人。
残されている時間を共有してくれる人。
毎日、共病文庫に名前を登場させられる人、を。


生きる、死ぬ。 生きる、死ぬ。 生きる・・・。  そして、私は死んでいく。

まだ、出逢ってない。
ずっと、出逢えていない、
あとちょっとで、出逢えるかもしれない。

待ちつづけて、待ちわびて、 待ち焦がれて、待ちくたびれて・・・。


そして、ついに桜良は、"選んだのです" 。

生きている今、この実感を知りたくて、彼との出逢いの一瞬を。

生きてきた過去の意味を見つけたくて、彼と語らうチャンスを。

生きてゆける限りの歓びを感じたくて、彼といられるひとときを。

ようやくつかんだ、"奇跡の出逢い" なんだよ。
ようやく巡り合えた、人なんだよ。

だから私は、生きていたい! 精一杯、生きていたい!
だからもう、後悔はいらない! わずかな怖気も持たない!

君と思いきり、君と思いっきり、私の青春を謳歌していくんだ!!

残り1年・・・残り1日・・・残り1時間・・・残り1分・・・残り1秒・・・その瞬間すらも・・・その刹那でさえも。

桜良は、"珠玉の運命" なんだと思っている。

桜良は、幸せでいられる運命が、まだ残っていると、迷いなく信じている。



私は、

春樹と出会うまでの桜良の心情を、ぼんやり想像しています。
春樹と出逢ってからの桜良の笑顔を、まぶしいほどに感じてきました。
春樹と生き切ろうとする桜良の願いを、しずかに終幕まで受け止めようとしました。

そして桜良が、

短い余命さえも、全うできなかった "事実" を知りました。
長く、共病文庫にしたためてきた {netabare}"メッセージ"{/netabare}を、読みました。
ちゃんと、伝えたかった本心を、{netabare}"不思議な夢世界"{/netabare}で、聞きました。


本作は、
桜良と春樹の、淋しかった時間と、幸せな時間を、たっぷりと共有できます。
恭子と春樹の、{netabare}悔しく思う時間も、穏やかな時間も、しんみりと、共有{/netabare} できます。
そのつどに、泣かされました。


君の膵臓をたべたい。

この言葉には、"生きてみたい"、"ちゃんと生きていきたい"
"もっと、ずっと、君に生きていってほしい"
"いつまでも、どこまでも、君と生きつづけたかった"
そんな微かなニュアンスや、儚い願いが込められているように感じます。


"君" としか、"呼ばない" 。 "君"としか、"呼べない"。

桜良と春樹は、お互いの名前を、"呼び合わなかったし、呼び合えなかった" 。

そこに秘めた、2人の深い心情を、ぜひ、スクリーンでお感じになってみてください。


君の膵臓をたべたい。

ステキな作品でした。

P.S.
{netabare} でこぽんさんのレビューのおかげで、{/netabare} 大事なシーンを見逃さずに鑑賞できました。感謝です。


2018.9.8 追記です。

{netabare}
実は、私は、鑑賞後 "感動" の波に浸りきれなくて、 "?" マークが残ったままでした。
「物語と人物と絵」をうまく受け止められなかった・・。たぶんそんな感覚です。

そんなわけで、本作視聴後に、原作、漫画、実写に触れ、そのうえで、もう一度劇場へ足を運びました。

理由は、本作鑑賞後に得た、まとまらない想いを整理したかったから。
背景は、本作の魅力をキャッチできないままで済ませるのが怖かったから、です。

それで、ちびっと分かったことがあります。
今回はそれをレビューしておこうと思いました。

それは、最終幕の "共病文庫の見せかたの妙" にありました。
原作は、「文字の配置とページめくり効果」
漫画は、「+絵・音喩(効果音)」
実写は、「+脚色・演出」
本作は、「+ファンタジー色を強めたアニメならではの表現」です。


桜良には小さい時から好きだった、ただ一冊の本がありました。
春樹にも作者は知っていましたが、未読だった本がありました。
それが、サン・テグジュペリの "星の王子様" です。
2人はそれぞれに、「文字」で創った世界観を持っていたと思うのです。


終幕で「ビジュアル」で表現されていた要素は二つ。

一つは、共病文庫の行間を彩ってきた、2人で共に創造してきた、たくさんの「エピソード」。
それが、{netabare}スクリーンをこれでもかと埋め尽くした春の樹、桜の木{/netabare} です。

もう一つは、星の王子様を読んだことで、2人が知っただろう「キーワード」。
それが、{netabare}『いちばん大切なものは、目に見えない』ということです。スクリーンに展開した宇宙と星のファンシーなビジュアル{/netabare}です。

桜良は、一本の桜の若木に水遣りをしていました。
「今はまだ、誰の目にも止まらない頼りなくて、小さくて折れそうな枝ぶりだけど、いつかはきっと大きく育って、たくさんの人に幸せを振りまける大きな桜になってほしい。」と、願っていたのかも知れませんね。

この二つの要素が、混じりあい、溶け合って、ほんのり甘酸っぱいシーンとして描かれていたように思います。

そんな2人だけのファンタジックなストーリー。 
2人は、話せなかった "本心" を語り合い、伝えたかった "願い" を交わしあっていました。
それは、まるで、2人の若々しい魂が、軽やかに触れあい、でももう重なり合えない "儚い精神性" を、豊かに表現した姿のように見えました。

そのように見立てたことで、ようやく私は、「桜良も、春樹も、ともにお互いを必要としていた。ともに生きる意味を待ち焦がれてきた」ことの意味を、あらためて、少しだけ深く、知ることができました。


アニメ作品ならではの "2人の柔らかな精神性" の表現。

彼女でも、恋人でもない、日常にいる、ただ仲良しな存在。

お互いの名前の響きの中に、魂の出逢いに驚いたり、生きてきた命の時間をいっしょに運んできたりしてきた、2人の仲睦まじいあしあとが、残っていました。

「人は、いつか死ぬよ」。
そう、その意味を、2人は2人の確かな選択に見つけ出し、喜びあえる存在だった。

桜良が、春樹と恭子に託したこと。2人がやれること、できること。
そんな桜良が遺した言葉を抱きしめて、希望を感じたくなる思いになりました。



orange(オレンジ、高野苺原作、2016年放送、13話、)を視聴後に本作を観たのですが、2作品だけでお腹がいっぱいになりました。

「大切なものは目には見えない」意味に触れられた作品でした。

でも、いつか、目に触れていない、他の作品にも目を通したいと思います。
{/netabare}


長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本作が、皆に愛されますように。

投稿 : 2018/09/08
閲覧 : 332
サンキュー:

33

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