退会済のユーザー さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
新たな青春の王道
【はじめに】
女子高生4人組が、南極を目指して旅するロードムービー。
【脚本構成】
{netabare}
本作のメインストーリーは、3話程度の区切りで、以下の4つに分けられる。
[主要人物4人の紹介]
[旅に向けての準備]
[南極までの道程]
[南極に到着]
シンプルながらも分かりやすい、良くまとまった構成だと思う。
また、基本的に1話完結型なので、前話で発生した問題をいつまでも引っ張ったり、ということもないので、気持ちを切り替えやすく、新鮮な気分で毎話楽しめる。
{/netabare}
【四者四様の女子高生】
{netabare}
南極を目指す4人の女子高生は、非常に個性的で各々、南極に馳せる思いも違う上に、抱える問題も違っている。
・キマリ
ポジティブで天真爛漫だが、新しいことに対しては消極的。
新しいことを始めたい、という思いから南極を目指す。
・報瀬
ポンコツで人見知りだが、行動力は人一倍あり、この物語のエンジンのような存在。
南極で行方不明になった観測隊員の母について知るため、南極を目指す。
・日向
4人の中では比較的常識人でまとめ役。
何かを成し遂げたい、という目的で南極を目指す。
とある理由から、高校を中退しているが、その過去に向き合えていない。
・結月
他の3人より一つ年下だが、言動は大人びている。
芸能人という立場も影響し、友達がいない。
南極行きのキーマンで、最初は乗り気ではなかったが、キマリたちへの友達意識が芽生え、南極行きを決意。
基本的に、この4人はどこか分かりやすい欠点があり、お互いにそれを埋め合っている。
要するに残念キャラなのだ。
それ故に性格の癖も強い。
この性格の癖が受け入れられないという意見もよく聞くが、癖は人間味を表現する重要な要素だと思っている。
私は、アニメのキャラとは言え、なんの欠点も無い人間を魅力的だとは到底思えない。
{/netabare}
【青春】
{netabare}
本作のテーマはなんと言っても青春だろう。
正直なところ、この青春というテーマは、過去のアニメ作品で十分に使い古されたため、このような陳腐なイメージが付き始めた。
「喧嘩はするが、後腐れなく仲直り」
「意味もなく、キャラが激走」
はっきり言おう。
この懸念していたシーンは当たり前のように存在した。
しかし、決して陳腐に感じることは無かった。
むしろ、逆に王道的な素晴らしささえ感じた。
恐らくシーンとしては、ありふれているのだが、上手い具合にテンプレートを躱している気がする。
例えば、南極の旅出発当日に、キマリの親友めぐみがキマリ宅を訪ねるシーン。
めぐみは、キマリの面倒役という立場を自らのアイデンティティとし、それを守りたいが為に、報瀬に関する悪評を流し、南極行きの妨害をしていたのだ。
自分の罪を告白するのと同時に絶交話を切り出しためぐみ。
それに対して、キマリは「絶交無効」と耳元に囁き、一目散に駆け出す。
これが普通のアニメなら、めぐみは
「また友達になって良いか?」みたいな都合の良いことを涙ながらに吐露してそうだ。
キマリも簡単に許して、二人は泣きながら肩を寄せ合ってそう。
どっちが良いと感じるのは人それぞれかもしれないが、少なくとも、どちらが人間味を感じるかは言うまでも無い気がする。
キマリたちが夜の新宿を駆けるシーンも面白い。
もし、普通のアニメがキャラを走らせて青春を表現するなら、晴れた真昼の空か、夕焼けの下で川の土手みたいなところで走らせだろう。
しかし、本作におけるシーンの舞台は新宿だ。それも夜の。
アニメのキャラとは言え、夜の新宿に女子高生がいるのはどちらかというと不自然。
なのに、どのアニメの走るシーンよりも青春を感じられる。
理由は監督の過去作にあると思われる。
監督のいしづかあつこ氏は、
「プリンス・オブ・ストライド」という作品を手掛けたことがある。
「ストライド」という、パルクールと駅伝を融合させたような競技で、街を駆け抜ける爽快さが魅力的な作品だったが、このノウハウが活きているのかもしれない。
本作からは王道のパターンをなぞりながらも、従来のセオリーとは、あえて少し外した、全く新しい青春の王道を自ら作り出そうとする、挑戦のようなものを感じた。
{/netabare}
【挿入歌】
{netabare}
この作品における挿入歌はとても効果的な働きをしてくれている。
全部で挿入歌は4曲あるが、共通して、空気感を大事にしている印象だ。
要するに、挿入歌がシーンの邪魔をしない。
強烈なイントロを流したりはせず、自然に流れてきて、いつのまにか歌が入ってくるような感覚だ。
あくまで、シーンを引き立てる役目に徹している。
最終回の挿入歌のフルコースは、この作品の挿入歌だからこそ許される芸当だろう。
{/netabare}
【終わりに】
特に文句の付けようがない素晴らしい作品。
5年に一度あるか無いかの傑出度。
2018年No. 1アニメの候補(暫定)