「メイドインアビス(TVアニメ動画)」

総合得点
92.7
感想・評価
2263
棚に入れた
9356
ランキング
18
★★★★★ 4.1 (2263)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.1
音楽
4.1
キャラ
4.1

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

命は闇の中でこそ輝く

【はじめに】
舞台は孤島に存在する、直径1㎞、深さ不明の大穴「アビス」である。
本作のメインストーリーは、孤児で冒険家見習いの少女リコと、記憶の無いロボットの少年レグが、共に手を取り合いながら、アビスの最深部を目指すことだ。

【洗練された世界観】
{netabare}
アビスには、総じて高値で取引されたり、人知を超えた特質を持つお宝、「遺物」が眠っている。
遺物は、アビスの階層が深くなるにつれて、価値や特質を増して行き、「探窟家」と呼ばれる冒険者たちは、この遺物の収集を主な生業とし、危険で過酷なアビスに挑んでゆく。

一攫千金のチャンスを秘めたアビスだが、そこには過酷な自然環境、凶暴で危険な生物など、相応の危険が探窟家を待ち受ける。
そして、最も探窟家の脅威となるもの、それは「アビスの呪い」の存在だ。

アビスの呪いは通称「上昇負荷」とも呼ばれ、その名の通り、アビス内において、地底側から地上側へ上昇する際に発生する。
比較的浅い場所からの上昇による呪いは、めまいや吐き気などの軽微なものだが、最深部に近い場所からの上昇になると、人ならざるものへと変貌、身体中のあらゆる穴からの出血、人間性の喪失、などの重度のものになり、最悪の場合、死に至ることもある。

この単純明快ながらも、綿密な設定で、残酷さと幻想的な要素を兼ね備えた世界観は、本作の非常に大きな魅力の一つだろう。
{/netabare}
【命の輝き】
{netabare}
先述の説明の通り、危険で過酷なアビスという世界観だが、当然、その残酷な矛先は主人公たちにも、例外無く向けられる。
私はそこに本作の最大のテーマを感じた。
順を追って説明したい。

ヒロインのリコは、豊富な探窟やアビスの知識を持つが、あくまで未熟な探窟家見習いで、年も12歳前後の普通の少女である。

主人公のレグは、ロボットのため、アビスの呪いに耐え得る強靭な身体と、強力な熱光線を発射する機能が備わっているが、熱光線の発射後は2時間の昏睡状態に陥ってしまうという不完全さがある。

このように、決して完璧とは言えない少年少女が、己の能力を最大限に活かし、足りない部分は補い合うシビアな状況は、物語に非常に大きな緊張感を与え、見応えのあるものにしてくれる。

さて、いくつもの障害に阻まれながらも、順調にアビスの深部へ進むリコとレグだが、ストーリー終盤に、リコが左腕に、獰猛な獣の毒針を受けてしまい、かつてない危機的状況に陥る。
猛毒の進行を防ぐため、リコは左腕の切断をレグに懇願する。
苦渋の決断の末、リコの腕を切断するレグ。
切断中に、心肺停止の状態に陥ったため、腕の切断は未遂に終わり、主要人物の一人である、ナナチの協力もあって、リコの死は回避できたが、半分まで切断されたリコの左腕には後遺症と凄惨さを物語る大きな傷が残ってしまう。
レグはそのことを気に病み、リコに謝罪するも、リコは、このように返した。

「この傷は証なの。レグが守ってくれた大切な証なのよ。」

過去のアニメ作品でも、登場人物が、身体の一部を損失したり、機能が失われる展開はよくある。
そのほとんどは奇跡的に回復し、ハッピーエンドとして扱われ、幕を閉じる。
正直なところ、演出にもよるが、私の印象としては大半が薄っぺらく思えてしまった。
この作品は、障害や傷を後ろめたい忌まわしいものとしてではなく、希望や絆の証として昇華させた。
まさに、命とは苦しくて、不自由で、理不尽な闇の中でこそ、輝きを増すのだという、この作品のテーマ性を感じた。
{/netabare}
【第三の主人公、ナナチ】
{netabare}
前項にも記したが、リコは猛毒により、死に瀕してしまう。
そんな中、レグが協力を仰いだのが、本作の第三の主人公と言っても過言ではない、ナナチである。
ナナチの見た目はウサギのような風貌で、これはアビスの呪いの一つ、人あらざるもの、即ち、成れ果ての呪いによるものだ。

医療技術に長け、飄々としているナナチだったが、その裏腹には、高位の探窟家による、上昇負荷の実験の実験対象だったという、重い過去があった。
ナナチは同じく、実験対象の友達であるミーティを連れ、施設から逃走する。
ミーティにかけられた呪いは、異形な姿への変貌、そして、不死の重い呪いだった。
そんなミーティの哀れな魂を解放するため、ナナチは、あらゆる手段を用いたが、ミーティは逝けず、苦しむだけであった。
ナナチは、最後の可能性をレグに見出し、彼に熱光線による火葬を頼み込む。
苦悩の果てにレグは願いを受け入れ、ミーティの魂は散っていった。

ナナチは登場シーンこそ短いが、視聴者にとって、とても大きなインパクトを与えた、魅力あるキャラクターであるのは間違いない。
{/netabare}
【高品質な音楽、美術】
{netabare}
メイドインアビスを語る上で外せないのは劇伴音楽だ。
儚さと悲壮感を漂わせながらも、どこか力強いメロディは過酷なアビスに挑むリコとレグを体現しているようだった。

美術も非常に良い仕事をしている。
どれを取っても美麗だが、その中に禍々しさもある。そして、なんと言っても、描き込みが丁寧だ。
メイドインアビスの残酷かつ美しい世界観の誕生は、この二つの要素抜きでは成し得なかっただろう。
{/netabare}

【さいごに】
アニメを構成する、あらゆる要素が高品質で、テーマ性にも富んでいる。
個人的には2010年代を代表するアニメの一つだと思っている。
続編にも期待したい。

投稿 : 2018/08/30
閲覧 : 334

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