MmmM さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.5
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
『約束』の美しさ
なぜか一番多く観返している作品です。
合う合わないは別として、つまるところ「美しさ」が根底にあります。
想いの、決断の、そして覚悟の。
内面的なものを描き出し彩色する一助として画面の色彩や人物の声色があるような、そんな作品です。
人ならざる吸血鬼の女王が主人公と交わした約束。
為政者たる女王としての葛藤、ミナ・ツェペシュ個人としての悩み、主人公の決断、そして両者の覚悟。
ままならぬ周囲の状況や障壁をいかに乗り越え、自分達の想いを通すか。
主人公に関わってくる人物達だけがあまりに凛として美しく、それを際立たせんが為に彼岸の人物や作品の背景が表層的・抽象的な、ともすれば雑な描かれ方をしているのが欠点でもあります。
言ってしまえば吸血鬼の女王と主人公が基軸となっている、「ノッティングヒルの恋人」っぽさがあるかと。(個人の感想です)
逆を言えば、その両者に対して何らかの引っかかりを感じてしまえば作品としての評価が一気に下がってしまうということでもあるでしょう。
私もさほど多数の作品を観ている訳ではありませんが、近年でここまで愚直かつ全面的に「愛情」を掲げた作品は無いのではないかと。
しかしながらそれ故に王道っぽさが残り、色調も暗くストーリーにも重さがあるにも関わらずテンポよく観られました。
随分と評価の隔たりが有るようですが、全てが最終話で収束し明快な結末となる作品ではないことや、あまり具体的には描ききれていない部分、若干クセのある演出などを鑑みれば致し方ないと思います。
私自身は割と理詰めで作品を観ず、雰囲気に流され易いことに加え、制作会社や監督などを考慮して作品を観るタイプではないので先入観なく観られたのも幸運だったかもしれません。
エロティシズムも散見されますが、私はベッドシーンあらば即ちポルノ映画だと抗議するタイプではないので気にはしませんでした。
作中にはクレオメの花が出てきますが、ひなげしの花が好きな某女優さんの逆鱗に触れる趣味はないことも言明させて頂きます。
また、あまり声優さん個人について言及したくはないのですが、この作品及び世界観を支えている柱はミナ・ツェペシュ役である悠木碧さんの演技であることは否定できません。
この作品での演技は白眉たりと敢えて添えておきます。