101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
欧州のゴスロリ探偵は複雑怪奇
原作小説は未読。コミックは立ち読み程度。
1920年代のヨーロッパ。
アルプスを望む、仏伊、スイスと国境を接した、
怪談やオカルトが蔓延る架空の王国「ソヴュール」
「日本帝国」から王国の寄宿学校に留学して来た
帝国軍人の三男である少年が、図書館塔の頂上にて、
天才的な頭脳を持つ金髪少女・ヴィクトリカと出遭い、
彼女の退屈しのぎに?様々な事件の推理や解決に巻き込まれていくミステリー。
欧州でミステリーと言うと、安直に描けば、
洋館や中世以来の怪しげな風習を
ファッション感覚でまとっただけの茶番になりがち……。
ですが、本作は、パラレルワールドでありながら、
戦間期という時代背景も事件に丹念に折り込むことで、
巧みに物語の重みを増した良作でした。
二度の世界大戦と言うと、例えば近代科学文明の暴走だとか、
信仰を忘却した資本主義(その亜種たる社会主義も含む)の悲惨な末路などと
論評されたりします。
が、一方で、各国の侵略活動や人種差別、大量殺戮。
それらを正当化する論理は合理的、科学的思考を装いながら、
その実は、暴力を煽る集団、時代の心理共々、酷くオカルトチックであった。
本作ではこうした着想に基づいて、
マクロレベルで近代兵器が入り乱れる大戦という嵐を招く科学の時代の狂気。
ミクロレベルで猟奇事件を起こすオカルトな残虐性。
一見、無縁に思える二つの要素が、事件の中でしばしば交錯し、
はたと考えさせられます。
欧州の複雑怪奇な情勢は、各登場人物の設定にもしっかりと反映。
私もまた、ヴィクトリカちゃんの生態観察をモチベーションに完走した紳士の一人ですがw
このゴスロリ少女には、分かりやすい?と思えてきた頃に、
生い立ちや、時代が強いた運命といった
複雑性をブスリと突き刺して来る、目が離せない魅力があります。
何だ。どこにでもいる普通のツンデレじゃないか。
案外チョロイじゃん♪と高をくくって
馴れ馴れしく{netabare}デコピン{/netabare}でもしようものならエラいことになりますw
こうした観点から、私が気に入っている設定、展開は、
{netabare}本作の世界が第二次大戦を現実世界より早く迎えてしまうこと。
作品上の都合から斜に見ればヴィクトリカが若い内にキーとして、
二つの大戦を跨がせる便宜上の戦間期圧縮。
ですが、私には科学とオカルトを糾合させ、
狂気を攪拌する「ソヴュール王国」という台風の目が組み込まれることで、
破滅の嵐に向けて時代が加速する風圧が確かに感じられました。{/netabare}
余談:私がヴィクトリカを観察していて気になって仕方なかったのが、
煙の出ないパイプをくわえている描写。
原作ではちゃんとプカプカとパイプを吹かしていたそうですが、
アニメ化に当って、未成年喫煙を煽らないようにとの配慮から自粛したのだとか……。
出血多量の殺人事件はぶちまけてもOKで、未成年喫煙は断固規制。
とは一体どういう了見なのでしょうか。
結果、パイプというより、ゴスロリ幼女のおしゃぶりみたいな、
シュールな光景が繰り返されることにw
ただ、お陰様で、CV悠木碧さんのロリっ娘ボイスが、
ヤニに潰され、しわがれずに済んだと好意的に解釈しても良いのでしょうが……。
声のデカい方々に配慮した歪なルールが表現を滑稽にしていく。
平成の表現規制、自粛もまた、奇々怪々なり。