ぺー さんの感想・評価
4.2
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
きらりと光る青春の裏で脈打つ創業50年老舗の味
2018.08.09記
原作既読。原田知世の実写版をその昔観た。
未来のミライ公開記念で地上波で放送していたのを鑑賞。
「君の名は。」と謳ってても真知子巻きの気配すら感じなかった新海誠作品と同様に、こっちも関係なかろうもんと思っていたら。。。
芳山和子(原田知世がやってた役)の姪っ子の話でした
{netabare}なんでこの魔女おばさん、あっさりとタイムリープ受け止めてるんだろう??
ん!?和子!?どっかで聞いたことあるようなないような。。。
ちょっと待て!!あんたちょっと前に時をかけていた和子さんじゃあーりませんか(驚愕){/netabare}
このままでも充分楽しい映画でしたが、原作か実写化されたものを観とくとさらに楽しめます。本筋のストーリーを邪魔せずに並行して叔母さんのストーリーが重層的に絡んでくる感覚を得られるでしょうし、少なくとも劇中で違和感のあった描写のほとんどに回答をくれるのではないかと思われます。
そう思って2周目観てみると、筒井康隆へのリスペクトが随所に感じられる見事なオマージュ作品でした、というのが結論になるかしら。
{netabare}原作だと和子は待っている女性の立ち位置です。このアニメでは、「でも、真琴。あなたは私みたいなタイプじゃないでしょ」と主人公の背中を押し、その真琴はクライマックスで「うん、すぐいく、走っていく」という和子とは対照的な選択をします。同じ状況でも180度違う行動を視聴者に提示する。{/netabare}
秀逸な本歌取りと言っても差し支えないですね。
実写映画は「お湯をかける少女」というパロディーCMが作られるなど大ヒットした作品です。余力があれば挑戦されてみてください。
いったん原作や実写版とは離れて本作に焦点を絞ります。
映画タイトルから想像できるように一種のタイムリープものです。
主人公JK紺野真琴と二人の男子高校生千昭と功介の仲良し三人組を軸とした青春ストーリー。いいですね、嫌いじゃないです。
前半はきらきらしている三人を活写しながら中盤あたりでシリアス要素が入り込んできてという展開も王道、安心して観ることができます。
そしてシリアス展開への布石となるのが、
“過去を改変することの副作用”
でしょう。
タイムトラベル系列作品の命題といってもよいですね。
では、本作はこの命題についてどのように表現されているか?
{netabare}言葉にした想いをなかったことにしてしまったことで生じる{/netabare}
三人の関係性の変化として表出します。どこまでもほろ苦い青春です。
この作品の人気が高い理由がわかるってもんです。
さらに副作用はもう一段深化して感情を揺さぶる展開が!
はじめキラキラ、なかほろ苦く、最後ラストは、、、愛だね愛
きっとこうなんだろう、というのはあります。ただ、直接ご自身の目で確かめてみていただいたほうが良ろしかろうと思います。
たかだか2時間でまとめるのは至難の作業だったと思いますが、テンポも良く
多少の粗さはあるものの気にはならないほどでした。
少々残念なのが声優さん。俳優さん起用により感情幅が狭い登場人物に堕した印象です。見方を変えれば高校生の朴訥さがにじみ出てたとも言えなくもなく、このへんは賛否が分かれそうです。
それ以外は文句はないですね。
ここからは余談となりますが、この基本プロットを半世紀くらい前に提示した筒井康隆の才能については素直に賞賛するものであります。
筒井氏は作中の表現が差別的だとの指摘を受けてからの断筆宣言のイメージが強いんですが、その頃よりさらに時間が経過した今では、言葉狩りが過ぎて自主規制レベルMAX状態です。これじゃなかなか尖ったもの作れないなという中で頑張ってる作り手さんはほんとエライなと心底思いますよ。
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2019.01.19追記
《配点を修正》
タイムリープの矛盾は青春の輝きで蓋をして鑑賞。実際、気になりませんでした。