アスカ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
全然悪くなかった!
20代女性ですが、父が銀英伝が好きで私も子供の頃から前作と原作共に何度も繰り返し見て読みました。
再アニメ化の狙いとしてはやはりこの作品を広く沢山の人に知ってもらう事と新規ファンの獲得だと思っています。この狙いについては大賛成です。同世代で男女問わず銀英伝を知っている人は少ないですから。しかし新規獲得の割には初見断り!な小難しい雰囲気に続きは劇場版ときた。本当に獲得する気あるのかな?と疑いたくなります。
再アニメ化は酷評や悪評が多いのは当然。今作も評価はあまり良くない様ですがそこまで悪いとは感じませんでした。話を省略しすぎ!という批判に対しては前作が話を増長させすぎにすぎないと思わず反論したくなりました。笑
前作と今作のみを比べてる方に酷評が多いのかなとも感じました。
音楽に関しては前作同様にそのままクラシックをバンバン使って欲しかったのですが……スペースオペラの名を今作でも轟かせて欲しかった。
①ストーリー
これについては前作よりも原作にかなり近いものになっています。例えばヤンがアスターテ会戦戦没者の慰霊祭に出席した点やアッテンボローの登場のタイミングやヤンとフレデリカがプライベートで食事をするなど。
今作で謎なのはヤンの自宅を襲う憂国騎士団の撤退要因ですが放水機の使用で消防署に通報が行き消防車の出動というワンシーンをなぜケチったのか。それをケチったばかりに彼らはただ放水の水圧にやられただけというなんとも軟弱な印象を与えられました。
イゼルローン攻略については今作品の流れの方が整合性があったのではないのかなと感じています。原作、前作同様に中央司令官室までの道のりがあまりにも容易に突破できていますが今作では刺青がバレそうであったり最終的な場面でID認証がされないなど"潜入作戦"における緊迫感が描かれており攻略出来ると分かっていても楽しめるものがありました。
ただそうする事によって「どんな厳重なシステムも運用する人間次第」という今後も出てくるセリフを削る方向になったのは微妙なところでしたが「作り話の中には真実の一つでもないと男ならともかく女性には嘘だとバレてしまう」(ニアンスでの記憶ですが)なんともシェーンコップらしいセリフがあった事で相殺出来たのではないかと考えます。
後は今作ではペンに重きを置いたところには「ペンは剣よりも強し」というヤン自身も信じたい格言を実体化したのかなと解釈してみるとなかなか面白いオリジナリティだなと思いました。
カストロプ動乱は原作と前作の両者から話を構成しています。旗艦同士を何の損害も無く目と鼻の先で対峙する事って可能なの?とも思いましたが…アルテミスの首飾りの破壊ではなく艦隊戦での動乱の解決の方が見応えがありますし原作に近いですし。あと変にギリシャ仕様でないところは安心しました。
ただ納得がいかないのは死線においてキルヒアイスと第十三艦隊が対峙し後退をしている際にキルヒアイス軍が既に降伏(敗走?)させたにも関わらず第七艦隊がこの戦場に横槍を入れてきた事です。ここはヤンの戦術により第十三艦隊は損害を受けながらも後退していくという場面であるはずが、キルヒアイスの後始末の悪さが起こしたいわば失態によって後退させた様な印象になっています。キルヒアイスがそんなケアレスミスをするとも思えず腑に落ちない展開でした。まあでも危機的状況に陥り音のフェイドアウトから味方艦の援護というのは戦闘映えしますからね…でもあれはいらない演出だなと……
ストーリーとしては原作に沿った今作の方が良いかと思います。前作はあまりにもオリジナルが多すぎるかなと…まあそれはそれでいい事もあるけども。
少・青年漫画やラノベみたいに俺つえー的な展開がないし白兵戦もあるものの艦隊戦が主になる為個人対個人がペチャクチャと喋りながら戦うというシーンはないのでそういう派手なジャンルが好きな方には退屈に感じるかもしれない。バトルアクションやファンタジーではなくあくまでもヒューマンドラマに重きを置いている作品ですからね。
②映像、デザイン
映像に関しては特に文句の付け所はありません。前作での艦隊の重々しい感じも良いのですが、宇宙という事もあり今作の艦隊の浮遊感もこれはこれで良いなと思います。後は艦列の立体感もいいですね。今ではこの映像が作れるのは普通なのかもしれませんが力を入れているという事が伝わるには十分な綺麗さ繊細さだと思います。
デザインですね…ここが原作が小説であるからこそ難しいところ。やはり主な問題はキャラクターデザインでしょうか。
基本的に全員が若い!という印象です。ただこれは前作と比べての意見です。70年代80年代のアイドルの現役当時を今みると良く言えば大人っぽく悪く言えば老けて見える。これと同じ感覚なのではないかと思います。サザエさんのアナゴさんの様な感じ?極論ではありますが…
文字だけで自分の中で作り上げる登場人物像と他者によって映像と音声付きで作り上げられた登場人物像とのイメージの差への落胆は圧倒的に後者の方が大きいでしょうし。
確かに全然違うな〜と私自身も感じますが舞台の役者が変わると思って見れば許容範囲できるかなと思いました。
ただロイエンタールはなぜあんなにも軽薄な大学みたいになってしまったのか。個人的に一番好きな人物なのでこんなのロイエンタールじゃない!と思わず叫びたくなりました。笑
③声優
基本一人一役とされていた前作はまさに銀河声優伝説そのものでしたが現時点で今作がそうと言えるかと言えば現時点ではまだ不完全ですね。銀河声優伝説としたいのなら出すべき声優はまだ沢山いるはずです。しかしながら本編OVAには登場していないものの外伝OVAにて"緑川光"子安武人"森川智之"櫻井孝宏"吉野裕行"石田彰"関俊彦"といった当時若手だった声優がちょい役やモブ、緑川と子安に関しては少年期のラインハルトとキルヒアイス(コミカライズの劇場版だけど)として参加しているがこの人達を参加させるのかという線引き…。"老練"なる名声優達が不在の中で名前を挙げた声優全員を出さずとなると物足りなさを感じてしまう。既に豪華である事は間違いありませんが、まだ作品の触り程度しかアニメをしてない今作の今後にもっと期待したいですね。
かなり個人的な意見をだらだら書きましたが、原作、前作がある事からどうしても比べてしまい異なる部分を悪いと評価してしまいがちになってしまいます。ただやはり今作にある良い点も多くあるので相違だけで判断はしていただきたくないなと思いました。近所に映画館がない為わざわざ足を運ぶまで続きを見たいかと言われれば少し迷いますが劇場版のPV次第という感じです。笑
ただこれを期に原作と前作のファンが増えてくれる事を願います!