M.out さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
すごい画
自然主義的な動き、と言えばいいのか。私が感じたのはキャラの実在感。片足ずつ階段を下ったり、外を眺めようとして窓ガラスを曇らせてしまったりする。そんな子どもらしさ、はとてつもないのではないか。
まあ、話はどうなのか、といえば陳腐な気がしないでもないし、似たテーマで言うなら「リメンバミー」に敵わない。
なんかくんちゃんが「好きくない!」と叫び、中庭みたいなとこに出たと思ったら、ファンタジー世界にすっ飛んでいき、過去の血縁者に遭遇し、よく分からないけど何か解決する。みたいなエピソードが、4つ入ってる短編集みたいな感じ。
ただ、やはり実在感だけは飛び抜けてる。あと、抽象的な描写もパッとキメる画の鋭さ。もうこれだけで観てられるし、それだけのために観れば良いと思う。
{netabare}うーん、あの東京駅の禍々しい新幹線のあの恐ろしさたるや。家族が居なくなったことで、「家族による自分という存在の証明」ができなくなった先に何があるのか。その回答があの「ひとりぼっちの国」行きの新幹線である。ドクロの座席がくんちゃんを歓迎するようにぞろぞろと道を開け、待ち構える。怖くなって逃げるけど、驚きの吸引力により再び車内に吸い込まれる。みたいなギャグ的シーンもこの恐怖を全く緩和できない。
あの血のような赤色とか、死を感じさせる雰囲気とか、どこかで見たなぁと思えば細田守版ワンピースである。あの、オマツリ男爵のやつである。そういえば、あのオマツリ島って「ひとりぼっち」だったよな。ここでワンピースのネタバレをしていくのは気が引けるけど、簡単に言えば「仲間を失ってその事実を忘れられない男爵」の話であり、「生者がいなくなったものを忘却できない」話である。
細田守は親しい者との別離に何故か死の匂いをくっ付ける、面白い感性がある気がする。これは悪意な気がするが、まあよい。
もはや私の妄想を語ってるだけなのだが、くんちゃんがもしもあの新幹線に乗ったのなら、居なくなった家族に囚われることになったのではないか。そんなことを思った。
{/netabare}