STONE さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
キャラクタードラマとしては良かったが
原案は既読。
「あしたのジョー」を原案とする一種のオマージュ作品だが、単にオリジナルをなぞるのでは
なく、もう一つの「あしたのジョー」を作ろうとしていた感じ。
単に舞台を近未来にした「あしたのジョー」をやっても、オリジナルに並ぶような作品には
とうていなれないだろうと思えるので、このやり方で良かったなんじゃいかなと思う。
オリジナルとの違いの最たるものがラストの結末かなあ。
オリジナルの力石 徹との戦いがある種の悲壮感のあるものだったの対して、本作はなんと
さわやかな結末。
これは「あしたのジョー」において「もし力石が死ななかったら?」というIF的要素も
加味されているみたい。
キャラクター並びにその関係性は当然オリジナルの「あしたのジョー」に類似しているが、
無名のボクサーが短期間で最高峰のトーナメントに名を連なるまでの展開などは「修羅の門」の
ボクシング編を思わせる。
そういったわけで展開自体はオリジナルとはかなり異なるが、それだけにジャンクドッグが
ジョーを名乗ったり、南部 贋作が名台詞「立つんだ、ジョー!」と叫んだりなどなど、
時折オリジナルとシンクロするような部分はゾクゾクさせてくれる。
セリフに関しては序盤においては「立つんじゃねえ」、「明日のためになんて、俺達には
ねえんだよ」といったオリジナルとは反対のものが多く、裏返った引用がニヤリとさせられる。
1クールでうまいこと締めてくれたと思うが、多くのキャラの生き方が魅力的だったので、
そういったキャラ達のドラマを観たかった感も。個人的には勇利、白都 ゆき子、藤巻などは
面白い話がいっぱい転がっていそう。
ここで書いていて気付いたのだが、キャラクタードラマという部分では主要キャラの中では、
主人公であるジョーが一番薄かった気がする。
そういう点では主役であるジョー自身を強烈に描くのではなく、彼と対峙することで
それぞれのキャラが自身の何かに気付いたり変わったりといった感じで、ジョー自身は各キャラの
生き様を映す鏡のような存在だったのかも。
内容的には人間ドラマに重きを置いたような感じで、そちらに関しては申し分ないが、
その反面メガロボクスというスポーツを描いたスポーツものとしては物足りなさを感じる。
藤巻の八百長試合の強制などは南部を中心とした人間ドラマとしては重要なファクターだったり
するが、ジョーを中心としたスポーツものとして観るとむしろ邪魔なものに写ってしまう。
原案の「あしたのジョー」、いや高森 朝雄(梶原 一騎)原作のスポーツもの全般に言えるが、
濃いキャラクタードラマを展開しつつ、スポーツものとしての面白さもおざなりになっておらず、
本作を観ると逆に梶原作品の凄さを改めて感じたり。
本作でのスポーツものとしての物足りなさで、特に気になったのがメガロボクスの
象徴的存在であるギア。
演出的にはジョーが装着しないことによる持たざる者としての象徴、本物と偽物の区別化、
あるいは勇利を縛る枷的存在など、メタ的には充分機能していたと思うが、
近未来スポーツであるメガロボクスの、ボクシングとは違う魅力を観たかったと思うのは
贅沢だろうか?。
ギア装着ゆえの、ボクシングでは得られない迫力などはアニメ向きだったと思うんだけど。
2018/07/23
2020/09/05 追記