kurosuke40 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
好意を受けて
彼女らの話は、燃えるような恋のお話。
同級生たちのなんちゃって恋とは一線を画する恋の感情です。
対象は心が導く相手であり、打算など微塵も入り込む余地はありません。
相思相愛になれば大団円ですが、実際のところは皆違う方向を向いています。
私の好意はあなたには届かない。一方で、向けられる有象無象からの好意。
違う。私が欲しい好意はキミらからではないのです。
彼女らは他者から自分に向けられる好意を利用したり、容赦ない言葉で拒絶したり、好意をもって優越感に浸ったりします。
この作品におけて言及されるクズな行為の1つは、他者の好意をどのような形であれ踏みにじる行為のこと。
あくまで恋は好意の一種とみると、恋愛以外でも、私もクズだった、と刺さる人がいるのでないかと思います。
またタイトルの「クズの本懐」は「盗人にも三分の理」の類義に見えます。
盗人も盗人にならざるを得なくて盗人になり、
クズだってクズになりたくてなったわけではないのだ、と。
貴族の生まれは貴族になるように、
恋愛ヒエラルキーの上位の素質をもって生まれたぶりっ子茜先生だって、
客観的にクズだと言及はされていており、踏みにじった他者から許されるかどうかは別として
ああいう生き方しかしらない人というだけですし、
花火だって純粋な恋愛感情から流れで堕ちていきます。
神や仏のごとく愛の深い鐘井先生や、ぶりっ子でいざるを得ない茜先生が好きだった麦のように、
クズでもクズのまま受け入れていくれる人がいることで、
今まで他者からの好意を一心に奪って悪びれもしなかった茜先生が、
花火に対して、彼女なりの奪ってごめんなさいという含意で薔薇を渡せるようになる。
どこか蜘蛛の糸を思い出しますね。
また花火も自身の好意が結ばれない結果を通して、
他者から向けられる好意に対して、敬意をもって返答ができるようになる。
あの「ありがとう」が一番印象に残っています。
以下、あんまり作品とは関係ないかもしれないけど思ったことです。
他者から好意を向けられること、向けることについては2つほど考えるに値する話を知っています。
1つ目は同じ壁の枚数を破った人同士しか対等に話し合えないという話。
一般人が世界的な著名人と対等に話し合えるとかというと、趣味の話でもない限り、
本当の意味で対等には対話できるわけがないと。
美女と野獣だって、見た目は正反対でも心は対等です。
2つ目は、『ご冗談でしょう ファインマンさん』という本で印象に残っているエピソード。
ファインマンは物理学者としても鍵開け師としても、それなりに名が通っていたのだけど、
ある日ファインマンが解錠できない鍵が現れる。そこにひょっこりと職人が現れ、そつなく鍵を開けて帰っていく。
ファインマン自体それなり名が通っている状態だったが、鍵の開け方を教えてもらうために、
まずその職人が抱えている課題をファインマンが代わりに受けて、解決するというフローを踏む。
いくら有名だろうが、相手に対等に思われてないことはある。
だから相手に認められるためのフローを踏む。
(ちなみにオチは本で確認してほしい。全体的に面白い本なのでおすすめです。)
『クズの本懐』では、好意を受ける側の話を主にしているけど、
好意を向ける側もただただ何もしていないのに、
好意が認められないことを嘆くのはお門違いなんじゃなかなーという話。
人は誰しも時として受ける側となり、時として向ける側となると思うけど、
向ける側としてはちゃんと認められる努力をすること、
受ける側としては好意に敬意を払うこと
が回答なのかな。私自身ここらへんはちゃんと回答が出せていない。
向ける側としてはちゃんと認められる努力をすること、は私自身の器の小ささから、
そう思い込んでいるだけなのかもしれない。
実際『クズの本懐』に対しては、受ける側としては興味がなければ、きっぱり断ること。ありがとうという言葉とともに。
それ以上はもうないのかなぁと個人的に不完全燃焼。
主題は恋愛だけど、もう一歩踏み込んでほしかったかも。
ご精読ありがとうございました。
蛇足
恋に関しては、花火と麦は本物を探すというゴールを見たけど、
恋は本物を見つけれたとしても、恋は冷めるもの。
(そのような冷めてしまう恋を主題に扱って印象に残っているのは「冠を持つ神の手」というフリゲ)
個人的に客観的に見ると恋という感情はあんまり好きになれないな。
モカの態度が一番好きかな。
個人的に代償行為自体はそこまでクズっぽく思えなかったのは、結局個人の心の中の問題のみに収まるから、だろうか。
本物と本物になりたい者の構造は個人的にぞくぞくする。
茜先生はもはや花火とは性質からして異なる。
ああいう生き方しかできなかった本物と同じ土俵で戦うなんて無理ゲである。
競うな、活かせ、なんでしょうね。
心を閉じたまま、偽る。大人の階段を上る。
メンヘラの方向性が違うけど
Iemitsu.の『Re5-W-』が私もメンヘラ気質があるなと気づかされたアルバムで
視聴後、久しぶりに聞きました。
もし聞く機会があれば、片方の歌手の方の声に癖があるのでご注意を。
(ちなみに歌詞の掲載はCDになく、HPも閉鎖になったので心の声で歌詞を読み取るしかないです)
Re6の方が好きだけど、印象深いのはRe5。