MLK さんの感想・評価
2.6
物語 : 1.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:----
無題
まず第一に、これは「未来」に関する話ではない。
今回出てくるのは、徹底して「過去」の話である。
この映画を要約すると、話のクライマックスは
主人公が妹の「兄」であることを自覚し受け入れるところにある。
しかし、そこに行き着くまでに延々と行われる家族史の振り返りが、全くクライマックスに結びつかない。
少しややこしい話になる。
そもそも、家族というものは結婚や出産がなくとも簡単に拡張可能な存在だ。
極端に言えば、たとえ血縁関係がなくとも相互にそう思うことができれば家族関係は成立する物であり、むしろ映画はそういった形の家族にフォーカスしたものが多かった。
今回で言えば、先祖が多くいるというのは遺伝血縁的な話であり、兄になる、というのは認識の問題だ。
私に多くの先祖がいることと、私が彼女の兄になる、というところに何の関係があろうか。
ところが、本作では血縁性と認識の問題が混同され、中盤と終盤が全く結びつかなくなっている。
これが、過去作でも家族の血縁性をどうしても捨てきれなかった細田監督のせいなのか、歴史的な運命と個人的恋愛感情を短絡させた「君の名は」の弊害なのかは分からないが、とにかくオススメしがたい。
日本の30~60代向けにマーケットを絞ったとすればかなり納得してしまうが。
7/22追記
私のこの作品に対する怒りは、必然性への怒りかもしれない。
家族史の発見により自分をより大きな視点で見れるように成長した主人公。
しかし、それが負のものであったら?
血縁家族との関係が「必然」であるならば、その「必然」へと飲まれるほかないのか?
細田作品はどうもそのあたりが能天気というか、家族に嫌な思い出のある人は私のようにアレルギーでまくりになります。
私があなたの子であることも、親が私を生んだことも、本当はすべて偶然なんです。
あるのは今私がここにいる(かもしれない)ということだけであり、それならば血縁的に妹であるかそうでないかに関わらず、守りたいと思ったら守ればいいんです。
現実でなかなかそれができない私は、映画だからこそそういうものが見たかった。