かにぱん さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「切ない」じゃ済まされないリアリティ
自分が新海誠作品にハマるきっかけになった作品です。
新海誠と言えば背景の美しさ。これはもう言わずもがななのであえてここでは言及しません。
私が言いたいのは、この作品の醍醐味はやはりリアリティだということです。
「は?どこがリアルやねん」という方もいらっしゃるでしょう、それもそのはず、中学生が田んぼ脇の蔵で寝泊まり?親何してんの?とか、現実的に考えたら謎めく部分が多々ありますからねw
ここで言うリアリティは、登場人物の心理的な動きについてのものです。なぜ貴樹は明里を追い続けて、それに囚われた半生を送ってしまったのか。それに対し明里は結婚もして、貴樹のことは既に思い出と化している…というこの残酷な展開は、よくよく考えてみればそりゃそうだ、という感じで。小・中学生の恋を大人になっても引き立っているわけがない。貴樹自身も、自分が追いかけていたのは明里ではないことに気がつき、ラストシーンでは笑みを浮かべて明里から去る。消えた明里を、いつのまにか消えていた自分の恋心を追うことはもうしないんです。
では、貴樹はずっと何をしていたのか。というと、これは私の考えでしかないですが、あれだけ好きだった明里への思いを実感できなくなり、「自分は明里が好き」という自分の心を信じられなくなるのを恐れた結果、明里を追うフリをしていた、そんなところかなぁと思います。
この作品が大好きな人も、大嫌いな人もいると思いますが、その差は「自分を騙して行動する」貴樹への共感度の高さによるのかなぁと思ったりします。
きみの悪い後味の良さ?みたいなものを残してくれる作品だと思います。