たわし(爆豪) さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
人間の存在
製作者はSFの造詣は結構深いのが良い。
高度高齢化社会で置き去りにされてきた老人や子供たちの存在を見据えて描いていることに好感が持てる。「見て見ぬふり」をされている人たちは存在しているし、実際に生きているのだ。
原作コミックでも結構重要な要素でもあり、映画としての深みもばっちりである。
「システム化」された社会にはもはや人間味のある人間など育たなく、「法律や規律」の奴隷と化すことを原作では強く訴えている。しかし、「ヒューマニズム」とは人間が中心と動く個人主義の社会であり、システムではなく周囲の絆や繋がりが重要視され、むしろ西洋哲学では後者の方が優先される。アメリカのキリスト教圏特有の「リバタリアニズム」が代表例だ。
そのことを理解して作られているので非常に見ていて奥の深いテーマが見え隠れする。
SF最大のテーマは「何故、我々は存在するのか」であり、「地球上の人間は皆奇跡的な存在である。ただ、それがごく自然に日常にありふれて気づかないだけ。ほんの少しだけ視点を変えれば、世の中は驚嘆すべきことだらけなのだ。」
そのことに気付かされる視点をこの作品は提供してくれるだろう。
我々の知る限り、
人間の生存の
唯一の目的は、
単に存在する
ことの暗黒に、
意味の光を
灯すことである
C.G.ユング 『記憶、夢、反射』