oxPGx85958 さんの感想・評価
1.8
物語 : 1.5
作画 : 3.0
声優 : 1.5
音楽 : 1.5
キャラ : 1.5
状態:観終わった
派手に失敗した野心作
本サイトでは現時点で56点、ランキング4700位付近と、手厳しい評価を下されています。この評価自体は仕方がないかもしれないが、1つ言っておきたいのは、本作が「野心的な作品」だということ。何かでかいものを作ろうとして大失敗した、ということであり、枠を埋めるためとか、企画が来たからとか、手グセで作ってみました、という類いのものではありませんでした。
それだけに哀しいわけです。監督・原作・脚本の人のインタビューを見ると、もともとアニメ畑ではないとのこと。外からアニメの世界に入った人が、業界固有の制約の下で困難にぶつかったということなのかな、などと想像を逞しくしてしまいました。このインタビュー https://akiba-souken.com/article/34009/ は、本人がどの部分を自分の功績としたいと思っているのか、どの部分がコントロール不可能だったのかが垣間見えて興味深いです。
その野心の核にあるストーリー構成についてですが、キャラクターと世界をしっかりと描写していないと視聴者は物語について来ない、受け手が叙述に信頼を置いていないと叙述トリックは効かない、ということを改めて思いました。「こういう仕掛けをしているのだな」と頭で理解することはあっても、ストーリーそのものを信頼して思い入れをしていないと、「ふーん、それで?」となってしまう。
ミュージカル好きの私としては、本作のアニメ作品としての核にある「歌」の点で、多大な不満を抱きました。端的に言うと、主役の2人を演じる鈴木このみと田村ゆかりの歌が、世界にポジティブにせよネガティブにせよ大きなインパクトを与える歌にまったく聞こえないわけです。これは楽曲のせいでもありますが、2人の歌手としての能力不足も大きい。脇役のたかはし智秋が一番歌がうまいという時点で大問題です。ミュージカル映画のファンは、俳優・声優の起用にあたってこの手の問題が生じるリスクはよくわかっているはず。
もちろん、この物語世界の中で、歌い手としてのパワーを持つためには、歌が上手でなくてはならない、感動的な歌でなくてはならない、ということは必ずしもないのだろうとは思いますが、実はそこらへんの描写からも逃げているのではないか。少なくともたかはし智秋のキャラクターが最初に歌うシーンでは、「彼女の歌が素晴らしい」という描写はなされていたわけですが…
いずれにせよ、優れた歌手と楽曲を用意できなかった時点で、本作の出来には限度がありました。でもそもそも普通の人は、実写映画であれアニメであれ、「世界を救う/滅ぼすような歌」を実際に流すというような大それたことにチャレンジしようとは思わないわけで…