oxPGx85958 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
地に足のついたゆるふわ趣味マーケティングもの
第3期が始まるということで、慌てて第1期から始めてこの第2期も見通しました。第1期は3分アニメという枠の中で高い完成度を備えていましたが、第2期は15分枠という、より普通なフィールドで、より普通な戦いをしています。技術的な面では、第1期と同じく高いレベルで安定しています。ただ、本作にはそれ以上の美点がありました。
いままで、女の子の主人公におっさん趣味をやらせる、現実世界での経済効果に目を配ったアニメ企画をいろいろと見てきましたが、そのタイプの作品のなかで本作は一番といっていいぐらいに気に入りました。他の類似作品にありがちな、「おっさんの願望を女の子の主人公に投影した感」がほとんど感じられないのです。私は女子高生ではないし、女子高生だったこともないので、本作で描かれているものが女子高生の現実を反映しているかどうかはわからないし、たぶんそうでないだろうとは思うのだけれども、「おっさんの願望」の投影度合いが少ないことはわかる、わけです。こういう作品の主人公にはこうあってほしいとか、自分ならこうするだろうといったキャラクター設定上の押しつけだけでなく、企画を立ち上げる上でのマーケティング上の配慮という点でも。
原作がそういうもので、アニメ化のプロジェクトもその点に配慮したものだったのかな、などと想像していますが、私は詳しい事情を知らないのでよくわかりません。
山登りをテーマにしている本作の一番いいところは、登場人物たちが、とりわけ主人公が、大して山登りにのめりこんでいないこと。体力が必要だからトレーニングをしなくちゃ、とか、山登りの雑誌とかを見てこのグッズがいい、あのグッズがいい、とかの描写がほぼない。どんな意味でも登山マニアではない主人公たちが、日常の延長としてカジュアルに山に登る。その意味でこの作品はほんものの日常系アニメです。
山登りに対するそのようなアプローチには、ときに懸念の声や批判も寄せられるし、このアプローチを他の分野に適用したアニメが雨後の筍のように作られるなか、悪影響が無視できなくなっているケースもあるとは思います。
ただ1つ言えるのは、女子高生を主人公にするなら、彼女たちのスキルや思い入れのレベルがこのていどであるのは自然なことだ、ということ。超人的な能力や知識を備えた中高生の部活ものやら趣味ものは、彼らの人間としての他の側面や、彼らの行動範囲外の社会のあり方との整合性がとれなくなるという問題を抱えざるをえないわけです。その点で本作にはそのような齟齬が感じられない。
主人公は登山に対してと同じように、人間としての生き方においてもヘタレであり、他の登場人物たちもそれぞれに不完全で、さらに重要なことには、それらの要素は混然とそこにあって、ドラマを一直線に駆動するような配置になっていない。
主人公たちの登山に対するスキルも意識も、そのような高校生の生き方と整合性がある。主人公はそのようにゆるふわな態度で向かった山にしっかりとはねかえされるだけでなく、失敗を分析して何か具体的な教訓を引き出そうとか考えない。夏休みの宿題を、他人の助けを借りてやっつける、というエピソード相応の、行き当たりばったりの態度を貫き通す。
原作はまだ続いており、本作の登場人物たちもこの後、もっと合目的な行動をとるようになって、それが「成長」として讃えられるのかもしれませんが、このアニメは、少なくとも第2期までは、そんな成長物語の要素が薄いこと、それがあったとしてもあまりに歩みが遅いことが、他のアニメ作品にはあまり見られない美点となっている。とそのように思いました。