「響け!ユーフォニアム2(TVアニメ動画)」

総合得点
89.1
感想・評価
1602
棚に入れた
7186
ランキング
92
★★★★★ 4.3 (1602)
物語
4.2
作画
4.5
声優
4.2
音楽
4.3
キャラ
4.2

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Dkn さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

圧巻のドラマに吹奏楽は添えるだけの王道作品

《酷評なので好きな人はブラウザバックしてね。》

圧倒的なドラマ展開があると、聞きたくなくても入ってくる「響け!ユーフォニアム2」ですが、先に感想から言うと、演出に作画や背景美術などあらゆる面で一級品のものを使いオーソドックスなドラマを120%引き立てた王道の中の王道アニメであり同時期でこれを一番に挙げなければモグリだと思えるほどの一級品でした(…と最近観たモグリが言っております)

なら何故酷評なのかというと、リアリティのある設定なら実写でいいし、作画の綺麗さなんて脚本演出人物の魅力等々の二の次三の次でいいと思っていて、王道から逸れることの無い優等生たちが青春ドラマのど真ん中をやる為に犠牲になった[人間ドラマ8:競技2]の割合は、吹奏楽が絡んだシーンで感情移入もへったくれもない空虚なものになりました。何かを極めようと切磋琢磨する若人の姿には何歳になっても熱いものが湧き上がるので、「響け!ユーフォニアム2」も吹奏楽部での練習や生徒のぶつかり合いに、惚れ惚れする画作りで印象的な場面などありましたが、現実と非現実の狭間で揺れ動く作品だからこそ見逃せない違和感は大きくなっていきます。

纏まりのない吹奏楽部が全国を狙えるチームへどう成長するかが描かれ、他校と一朝一夕で差が付くことが難しい団体競技だからこそ感動へ持っていけるプロットのはずでした。荒唐無稽ではなく前例があるからこそ想像がつくもので、指導者のコーチングによって変わることが多い。競技の選手や指導者にスポットを当てた番組を見ると尋常じゃない練習量や根本からの意識改革に、画期的な育成術を取り入れるものが散見されます。本作でも父が有名な指導者である先生からの指導描写が有りますが、指導者の視点を入れず主人公視点で物語が進行するため、指導法や差を埋めるための練習より群像劇のドラマとして完成度を高めていくエピソードが展開される中、練習シーンは一期の頃に飽きるほど観ていても「元々ポテンシャルがあった」「優秀な指導者が頑張った」だけで、当たり前の練習シーン以外は省いてしまう。この時点で「競技に感動するアニメでは無い」と整理がつき、女の子たちの美しい友情劇へと自分の視点をシフトさせることになります。

度々思う違和感で、自身が感じている魅力との乖離が本作にも有ります。一つを極める競技者とは、他に何を持っている訳では無く、愚直に努力をして、あるのは特別になりたい欲求だけ。自分の価値観がすべて競技に集約されるようなそんな人間です。作中でも「あすか先輩」はじめそんな価値観を持った子がいました。感動するのは努力が報われ花開く瞬間で感情移入や共感は自身の叶えられなかった夢を託すことの出来る人物に対してです。少なくとも自分がやってきた団体競技や好きな競技は、普通の人でも格好良く映る人ばかりでした。

他の優劣と関係なく輝ける場所が競技だと思うのです。作中の数人が美男美女ならアクセントですが、全員のビジュアルを整え、差を無くしたことで魅力を大きく奪っている。これが本作と京都アニメーションのブランドが敬遠される理由でしょう。良く言えば人気俳優を集めたドラマ。悪く言えばバービー人形を並べて真剣に物語を作っているようで、一人ひとりは可愛くてもここまで同じだと勿体無いとシリアスな展開になればなるほど思います。スポーツや音楽の世界でも一般人が知るのは目鼻立ちの整った人間で、悪いとは言いません。だからこそ出るミーハー感で、競技者だけが好きな人間ではなく自身が競技者である人や競技自体が好きな人はそれを見て仕方ないと思いつつ嘆いています。

本来何かしらの競技者は自身の生きる道と定め一つのことに打ち込むのと同時に、他者より秀でることが出来る特別を見出したからこその真剣さが生まれると感じるのです。憧れの選手のようになりたい、あの舞台に立ちたい、歓声を浴びたい、負けたくない、異性にチヤホヤされたい、動機は何でも良いのです。欲にまみれて汚いのではなく夢を目指すための原動力や起爆剤だからこそ過酷な道程も腑に落ちるわけで、他の道へ進んでも特別になれないと感じた人間がすがりつく思いで打ち込むからこその執念とも言えます。何かを修め極める世界において乾きを癒すものがあってしかるべきで、無いと競技者には思えない。間にあるドラマでブレますが、本作の登場人物にも確かにその渇望は存在しています。

最初から仲良く(喧嘩しながら)楽しくやってる吹奏楽部の話なら良かったのに、中途半端に一流を目指すから間のドラマに入り込めないし最終結果はそうだろうね、と何の感慨もない。緩くバンドをやっているなら良いです。頭身が下がって日常をやるならなお良い。宇宙人や未来人が出てくる話や、妖怪退治のメガネっ子なんて大好きだ。ただ…、競技に打ち込んでいた人間の挟持をもしわかっているなら真正面から挑んだような顔をして作る事はしないで欲しいし、自社のブランドを崩すくらいの気概を持って欲しかった。同ジャンルで感動したことなんて山のように有りますけど、本作に関して団体競技経験者がドラマ自体を評価する事や郷愁に駆られることはあっても実際あったエピソードと比べた時以上に心に響くことなんて無いと思っています。本物の体験の方がよっぽどドラマチックでした。

一期の頃は競技に対する熱が見えましたが二期は一期でやった分、回が進むごとに薄れ、可愛い女の子たちの美しく繊細な青春ドラマとして展開していきます。観ているうちに泣いて吐くほど真剣に取り組んだ人間を嘲笑っているようにも感じられました。そこまで思っても音楽や演出の巧さで感動することは何度か有りましたから、幅広い人にオススメしますが何かしらの競技の本質を愛している人には一切オススメしません。何でもかんでもアイドルや顔が良い役者を使うような映画を憎んでいて、内容がどうでもよくなる方も観ないほうがいいでしょう。

投稿 : 2018/07/20
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