ひー さんの感想・評価
3.7
物語 : 2.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
メッセージ性の弱い作品
物語の序盤は変化する世界に何が起こっているのかと鑑賞者を惹き付ける魅力がある。しかし中盤以降は世界観の深みが増すことはなく、最後も「人間の幸せは複雑」で済ませてしまうフワッとした曖昧でメッセージ性の極めて弱いオチで終わってしまう。
創られた個々人の幸せを叶える世界には創られた人間と現実世界で生きている人間が共存する格好になっているが、そもそも後者が同一の創られた世界に存在する意味が全く感じられない。作中でも言及されているように個人の幸せが人それぞれでトレードオフの関係にもなり得るのであれば、各人が別々の創られた仮想世界で生活した方が効率的ではないだろうか。
作品全体を通して理由付けが弱いため、意味不明に感じてしまう点が多い。なにが原因で違和感に気がつくのか、なぜ歌で変異するのか、変異する個人としない個人の相違は何か、襲われて変異する理由はなんなのか、わざわざ卒業式で「あぶりだし」をする理由はなにか(違和感を与えるきっかけをわざわざつくっているだけなのではないか)、願いが叶うのであれば願いを妨げる存在を排除する力も自然に働くのではないか、など疑問はきりがなく湧いてくる。
戦闘では、それぞれが覚醒し身体に変化が生じることとなるが、外見も戦闘能力・技術も登場人物の特徴をクリアに反映したものでなく、展開も単調で戦略的な戦闘シーンは皆無である。それぞれの覚醒の理由も曖昧で一時点に複数人が同時に覚醒するシーンは「やっつけ感」がひどい。
キャラクターひとりひとりに十分な時間を割いておらず、彼らの過去をまとめて紹介する「自分語り回」は状況の不自然さに思わず笑ってしまう。
主人公はコミュ障設定だが仮想世界では円滑な意思疎通を披露している。もちろん願いの叶う世界では当然のようにも思えるが内面的な変化がこうも著しいと最早別人であり、それを自分と認識できていることに共感を抱くことは難しい。
作画はキレイだが戦闘時のあの胸を貫く棘のようなものはなんなのだろうか。戦闘時のビジュアルにかっこよさや可愛さが感じられない。μの崩壊時の羽に眼が出現するところなどもすんなり受け入れることが難しい変容である。
音楽・歌が素敵で、本アニメで最も評価できる点ではないだろうか。