Dkn さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
白オカリンと黒オカリン。(STEINS;GATEもそろそろ10周年‥。)
【知らない人への作品紹介】
本作はシリーズ正統続編である「シュタインズ・ゲート ゼロ」のアニメ化で前作の後日談となっていますが、
シリーズを知らない人に説明すると“あったかもしれないIFの世界”の後日談だということを注意して下さい。
ゼロを観る時は変更前のストーリーを視聴した後に、変更されたもう一つの世界、
第23話(β)「~境界面上のミッシングリンク~」をゼロより先に視聴してから観るのが正順かと思います。
ゲーム「シュタインズ・ゲート ゼロ」発売時にアニメ23話の内容を変更し放送しました。
(内容自体は本作「シュタインズ・ゲート ゼロ」の一話で補完してくれるため特に問題はありません。)
【少し複雑なアニメ視聴の順番】
「STEINS;GATE」
「第25話 横行跋扈のポリオマニア」
「劇場版STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ」
「STEINS;GATE 聡明叡智のコグニティブ・コンピューティング」
「第23話(β)境界面上のミッシングリンク」
「STEINS;GATE 0」
※ポリオマニアは9巻の追加エピソードでコグニティブ・コンピューティングはWeb限定ショートストーリー。
本編を追うだけなら「STEINS;GATE」と「STEINS;GATE 0」だけで大丈夫です。他は番外編と考えて下さい。
【シュタインズ・ゲート ゼロ感想】
{netabare}
牧瀬紅莉栖を救えなかった世界線で運命を変えることを諦めた岡部倫太郎は、蓄積された記憶に苦しみながら
少しづつ日常を取り戻しつつあった。そんな時、紅莉栖のいた大学の教授で同じチームにいたレスキネン教授が
開催するセミナーに参加することになる。そこで知ったのは紅莉栖が残した理論を元に作られた人間の記憶を
データ化し保存したものを“自身で考える心を持つ人工知能”にする「Amadeus(アマデウス)」の存在だった。
ミッシングリンクを視聴していなくても経緯と世界のその後がわかるように丁寧に話を進めます。
ゼロの名前が過去編と思われそうですが前作の別ルートで補完も多いので必ず前作を観ないとダメですね。
前作からの変化が多く見られました。携帯電話は本作でも用途が変わり大事な要素として盛り込まれています。
過去改変の鍵であり主人公の人格を表す上で大活躍だった携帯電話が、今度は牧瀬紅莉栖との唯一の繋がりへ。
オセロのように白から黒へと表から裏へ、白衣を着て危険に首を突っ込み失敗しても諦めない岡部倫太郎から、
衣装は喪服を思わせる黒になり、独り言はアマデウスとの会話へ。蓄積された経験から消極的で慎重な考えに。
正統続編というより別ルートで無印の補完。前作に対するアンチテーゼを盛り込んだ脚本や設定が目立ちます。
勿論、娯楽性や謎解きに、不可能を可能にするヒーローを体現させた明るく泥臭い前作より幅広い支持を得るのは
難しいでしょうが、同じ路線で劣化させず表裏としてデザインしたことで異なるアプローチと世界の掘り下げを
メインに据えられたんじゃないでしょうか。
岡部を導くために来たβ世界線の阿万音鈴羽と、橋田至(ダル)との親子関係なども気になっていた点ですね。
ゼロ8話のラスト、「ハイルナ」のメール。無印22話でβ世界線へ帰った時のDメールの真実が明かされました。
ゼロ8話は岡部がEnterキーを押す直前に紅莉栖が現れて「あたしも岡部のことが好き」と言えた世界線で、
幾度もの世界線移動を経験し心が壊れかけていた岡部の話を聞いて自身が犠牲になると選択したものの、
Enterを押す前に素直な気持ちを伝えてしまった事で決意を鈍らせてしまった結果の世界線だったようですね。
つまり、紅莉栖はこの出来事を変える為にあの「ハイルナ」のDメールを送っていたことに。何年越しの真実だw
このα世界線でまゆりの死により心が壊れてしまった岡部を見て、おそらくα世界線の紅莉栖はずっと後悔し、
β世界線へ変動させる「ハイルナ」のメールを送るために一人で電話レンジ(仮)改を作っていたのでしょう。
携帯画面の送り主は“岡部”でしたが、実は紅莉栖が自分を止めるために送ったものでした。…切ないです。
ロシアのタイムマシン実験や岡部につけていたGPSなど、想像が膨らむ描写やセリフも幾つかありました。
この第8話、あとで聞いたのですが原作をアニオリで大幅補完したらしいですね!マジかよ花田十輝、最高かよ…。
{/netabare}
アニオリも含め、世界の広がりや知られざる真実に、前作から変わった登場人物の立場など環境を見せて
物語が収束していくのでしょうね。あれ?アニメ版シュタゲゼロ、これはアニオリの出来栄え的にファン必見では?
【シュタインズゲート2009】
初めて触れたのはゲームで、プレイ時に驚いたのはSFを現実に持って来られた感覚。ゾクゾクしましたね。
作中の時代は―2010年7月28日―。ここから始まる出来事は、発売日の2009年10月15日より少し未来の話。
{netabare}
プロローグは今となっては懐かしい2009年当時の秋葉原駅電気街口、見知った光景が広がり蝉の声が聞こえます。
手前に携帯の画面がこちらを向いて、主人公岡部倫太郎が何も聞こえてない携帯相手にブツブツと呟いてました。
その後、中鉢教授の講義で一悶着有り、牧瀬紅莉栖が何者かによって襲われた現場に出くわしてしまいます。
こちらも今はなきラジオ会館で件の事件が起こった後、初めて岡部が世界線を移動することになります。
変な感覚の後ざわめいていた街の喧騒が止み正午にもかかわらず誰もいない中央通りが視界に広がっていました。
(始発前4時~5時くらいのアキバあんな感じ)
何千人もの人が一瞬にして消えてしまったことで、混乱し、ふと見上げた先に更に信じられない物が―――。
目に飛び込んできたのは、ついさっきまで自分がいた、ラジオ会館の八階。そこに突き刺さった人工衛星。
ここで音楽が流れだし、秋葉原の景色が変わり人が消え、OPの「スカイクラッドの観測者」が聞こえてきます。
歌詞の内容はアニメを観た人も知っている通り、作中で少しずつ分かる重要な情報がこれでもかと詰まっていて、
意味がわかるとそういう事か!と背筋がゾゾゾ~っとする、いとうかなこのボーカルがカッコイイあの曲です。
アニメ版もエンディングで作中のストーリーに合わせ曲の歌詞が変わったり、次の話に繋がる特殊な演出など、
世界に没入させる工夫が随所に見られキャラクターやストーリー以外のアプローチから面白くなる為の仕掛けが
散りばめられたタイトルでした。
{/netabare}
時間遡行作品は小説や映画など今までも数多く存在しました。良い部分を真似つつ新しいものに作り変える、
簡単そうに聞こえますが、SFという要素にエンタメを肉付けした偉大な先人がいるからこそ難しいです。
個人的に決して万人が面白さを共有できる作品ではないと思っていて、
東京都内に住んでいる人、秋葉原に行ったことがある人、発売当初にプレイした人、アニメ開始時に観た人、
アキバの移り変わりを知ってる人、ラジオ会館に突き刺さった人工衛星(現実のイベント)を見た人など
作品に入り込むスピードも、オタクか非オタかノリについていけるかいけないかで変わり、共有は難しいです。
ただスピードは違えど、作中に仕掛けられたものは確実に面白さへ繋がるのだと、確信もしています。