バンバン さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
人間と自然のつきあい方
自然をテーマに含む宮崎駿のアニメとしてはナウシカと似たように見えますが、ナウシカがあくまで人類を主題に置いているのに対し、もののけ姫では徹底して人間vs自然の二項対立です。そして自然の猛威の前に人間がただひれ伏すなんてバカはしません。人間が普通に自然をぶっ壊し、そのしっぺ返しを喰らうという、歴史の中で何度も繰り返された構図をストーリー上で見事に再現してみせています。
人間とは不思議な生き物で、自然から生まれてきた種の癖に生きていく上で徹底的に自然を排除して自分好みの環境を作り上げ閉じこもるんですよね。しかし命を繋ぐには自然の恵みが不可欠というジレンマにある。その回答として、ラストでタタラバの人々は自然を排除する工業社会を捨てることを選びます。でもこれは現代では到底ありえない選択。じゃあ際限なく自然を食いつくして良いのかと言うと良い訳がない。サンのように野生の生活をするのかっていうとそれも論外です。つまりアシタカの言葉通り、「人間は人間の世界で、自然は自然のままで」生きて、折り合いをつけるしかないということ。これまた現実ではそう上手くいってないんですけどね。
最後のシーンでは自然の強靭な回復力が暗示されます。余韻の残る締め方ですが、かつて近畿の山々を禿山にしたりと、回復力をいいことに自然破壊をやらかしてきたのは他ならぬ日本人であることを忘れてはいけないですね。同じことが繰り返されるかもしれない。ただ手放しでハッピーエンドとはいかんのです。