ひら さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 2.0
状態:観終わった
ヒーローは「蘇る?」
3~6月辺りまでGYAOで配信されていたのでそちらで全話完走。
横山光輝氏の代表作「鉄人28号」の続編で、かつて鉄人を駆って活躍した金田正太郎の息子と新型の鉄人「FX」が父や世界各地の27号までの鉄人達と共に悪に立ち向かうという物です。この世界各地の鉄人やそのパイロット達というのがそれぞれの製作国の特徴などを反映したデザインだったりで面白かったです。ただ主人公サイドについては、横山作品の主人公は正太郎君含め敵には手段を択ばず容赦しない、清く正しい正々堂々なヒーロー像とは外れた者が多いイメージなので、本作の主役にあたる正人たちが本編や予告で「ヒーロー」という語を強調していたのは(正人のキャラ自体はこれはこれで好きですが)鉄人の続編としては少し違和感がありました。
{netabare}また、続編ものということで旧作要素も取り入れており、前半の敵ネオブラック団は正太郎のかつての宿敵・不乱拳博士のクローンを作りだし、彼との攻防が作品前半の見所の一つとなります。フランケン以外にもデビル火刀(-かとう)という凄まじい名前の幹部を筆頭にギャグ枠のゾルリックや強烈オカマ・エルビス兄弟等個性豊かな面々が名を連ねていて面白かったです。デビル火刀に関しては主人公が「いい加減にしろ火刀ー!」という場面があって吹いた記憶があるのですが、外見や言動がシリアスなのに名前だけで笑かしに来る悪者というのも珍しいのではないでしょうか(笑)
欲を言えば一部幹部の出番がフランケンに奪われて少なめだったのが残念だったり不乱拳博士以外にも旧作キャラが見たかったなというのはありましたが、敵ロボは新ブラックオックス(のちに鉄人29号として味方に)を初めとして格好良く、首領・ゾーン総統を巡った終盤の展開も意外性がありました。
ところがこのネオブラック団は2クールで壊滅してしまいます。
しかし正人達の戦いは終わりません。敵組織壊滅後の番組後半はその回ごとに敵が変わるという一話完結方式になっていき、マッドサイエンティスト・軍事国家・テロリスト・某国の革命軍・宇宙海賊、果ては古代エジプトの邪神等々、個性豊かな悪党たちが正人と鉄人の前に立ちはだかります。
こういった悪役の存在やそれに立ち向かう世界各国の鉄人たちの存在もあって話の内容もバラエティーに富んだ感じになっていったのが番組後半でした。故に面白い話も多く個人的には父親である正太郎の活躍回が多かった30話代がこの番組の一番の売りともいえる新旧鉄人の活躍を描けていて一番面白かったと思いました。
一方で面白い回やキャラもある反面、残念な物もあり、個人的にその最たる例が本作の事実上のラスボスを務めたスカーレット・ローズでした。後半の敵としては唯一複数回(計3話分)にまたがって登場する敵だったのですが、初登場回では金さえ払えばどんな仕事も引き受ける暗殺者だったのが、次の回では法で裁けない汚職権力者を狙う暗殺者に、という具合にキャラが少し変わっていてこの時点で違和感を感じました。そして3度目の登場回(事実上の最終話)、暗殺者である彼女の最大の標的「ブラック博士」が登場します。さて、最後の標的となったこの博士、ローズ曰く親の仇にしてとんでもない悪人との事なのですが、一体どんな悪党なのかと思いきや、全然良い人な上に、博士が地球に迫る隕石を退けるため行っていた研究が彼女の襲撃によって台無しになり、地球が危機に陥る始末。ローズの母に関しても娘に性善説や人命の重さを説くような人であり、最愛の母にそう育てて貰ったのに暗殺者になって悪人を殺していくのもどうなんだと思いましたし、彼女に関しては動く度にキャラが破綻していって不快感を覚えるキャラでした。正直ネオブラック団の残党や初代鉄人因縁の敵とかにラスボスを務めて貰いたかったです。{/netabare}
こんな感じで残念な箇所もありましたし、原作者の横山御大からもあまりよろしくない評価を受けてしまったなんて事も言われたっりしますが、いざ見てみると印象的なキャラや面白いエピソードも多く、ゲスト等の声優陣が今見ても無駄に豪華だったりといろんな面で楽しめました。あと最後に特筆しておきたいのが後半のED。映像も相まって凄くカッコイイので一見の価値ありです!