北山アキ さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
絶妙な神話的舞台設定
原作未読
明治末期の蝦夷地という舞台が、地理的・歴史的空白地帯であるがゆえにロマンに満ち溢れているわけで、多神教の神話から抜け出てきたような奔放なキャラ達が跳梁跋扈する様に妙な説得力を与えている。
有り得ないけど有り得たのかもしれないみたいな。
(超人だけど「バキ」みたいな喜劇的な説得力の無さとは違う感)
フロンティアの歴史は実際は空白なんかじゃなくて、先住民と侵略者の生存競争である。
本作で言えば、前者がアイヌで後者が日本人と言えるけど、日本人と言っても国民国家の日本は始まったばかりで、藩政の記憶が残っている時代の日本人である。また、北海道は流刑地であり、薩長土肥の新政府に敗れた藩民の集団入植地であり、諸外国に対する国土防錆の前線基地であり、戦時特需に沸く新興市場であり、とにかくメインストリームから外れた日本人もわんさか流入していたのである(勝手なイメージ入っていて道民に怒られるかも)。
単純に開拓者がアイヌの秩序を揺るがしただけではなく、同時に日本の秩序の揺らぎや世界の秩序の揺らぎも持ち込まれて、そこには思想や理想や欲望の混沌が生まれていたはずである。
善悪とか平時の価値判断が通用しない混沌の世界で、人間より人間臭い神々のやりたい放題をただただ楽しむ神話のような作品と言えるかもしれない。