Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
キャッチコピーは「この恋を、一生忘れない」
この作品もオリジナルだったようです。
2018年春アニメは、オリジナルの作品が豊作なのが特徴なのかもしれませんね。
アニメーション制作は動画工房で「月刊少女野崎くん」の制作チームが手掛けた作品との事です。
あの抜群の安定感はこういう事だったんですね。納得です。
この物語の主人公は、写真部に所属する高校2年生の多田 光良です。
彼の両親は10年前に事故で亡くなっており、現在は妹と共に祖父の多田珈琲店を手伝いながら日々を過ごしています。
亡くなった父親がカメラマンだった影響を受け、自分の将来もカメラマンを希望しているとか…。
小春日和のある日、光良が風景を撮影しにきたところ、偶然外国人の少女との出会いがありました。
あったといっても、接点はごく僅かだったんですけどね…
まぁ、これがフラグだというのは直ぐに分かりましたけど。
その少女…光良と同じクラスにヨーロッパのラルセンブルグからやってきた留学生だったんです。
彼女の名は「テレサ・ワーグナー」
日本の時代劇「れいん坊将軍」をこよなく愛している結構ディープな視聴者なんです。
だから、会話の節々に「かたじけない」など時折お侍さんが感じられるのは彼女の魅力の一つと言って良いでしょう。
でも彼女の一番の魅力…容姿端麗で華やかな金髪に、澄んだ翡翠の瞳…加えて明るく素直で笑顔がサイコーなところでしょうか。
つまり完璧な美少女…ということになると思います。
テレサと一緒に留学してきたのは、朱い髪色のアレクサンドラ・マグリット…
こちらもテレサに負けず劣らずの美少女です。
そしてテレサとアレクは、光良と同じ写真部に入ることになり…物語が動いていきます。
高校生活で部活は写真部…高校生活の一部が切り抜かれているので、日常の物語には抑揚が殆どありません。
故人の趣味や優しさが興じたイベントが複数回あるくらいです。
でも、写真部の活動としてみると、決して多くはありませんが、短期間の割には充実していたのではないでしょうか。
こう書きましたが、この作品の見どころが無い訳ではありません。
大切なのは、ちょっとした場面を見逃さない事…でしょうか。
少しもどかしい気持ちもありますけどね。
次に留学組以外を見てみると、一番気になるのは、光良が無口で愛想がないこと…
コミュニケーションを取るのが苦手では無いと思いますし、気遣いだってできるんです。
でも、必要以上の事を決して話そうとしないんです。
そんな光良と足して2で割ったら丁度良い按排になる存在が、幼馴染の伊集院 薫です。
兎に角元気で賑やか…そしてアレクによくちょっかいを出しては怒られていましたっけ。
自称イケメンを名乗るだけあって、写真分での活動のベースは自分自身を撮影すること…
一見軽い男に見えそうなんですが、彼…実は物凄い友達思いなんですよ。
伊集院の家は銀座老舗料亭の息子として小さい頃から料理を嗜んでいるのですが、事故で両親を亡くした光良を気遣って毎年恒例となった「伊集院薫ショー」を開催してくれるんです。
普段の行いは、本心をカモフラージュしているのかもしれませんね。
他にも個性的な部員が揃っています。
だから、部活は基本楽しいんです。
それでも日常パートは遅々として進む気配がありません。
視聴中は少し気になりましたが、今ではそれが良かった…いえ、そうじゃなきゃ駄目だったんです。
高校生活の日常はいわば凪と一緒…
だからこれに多少のイベントが加わっても、せいぜいさざ波止まり…
でも、この作品のポイントはそこじゃありませんし、さざ波じゃ伝わらないんです。
だからたった1回の波に全てを懸けて物語を動かそうとする作り手の気概が、ビシビシ伝わってきましたし、まんまとその手に引っ掛かってしまいましたよ。
実際に起こった事象としてはさざ波の域だったかもしれません。
ですが、確実に心のざわつきはこれまで以上に大きくなりましたよ。
そして一度心に起こったざわつき…全然収まらないどころか大きくなる一方なんです。
振り返ってみると、幾つか伏線はありました。
でもその先には常に揺ぎ無い覚悟が存在していたので、伏線だけでは正直役不足感が否めませんでいた。
ラストまで視聴すれば分かりますが、全てはしっかり機能していたんです。
この作品のタイトルは「多田くんは恋をしない」
これは完走した者だけの特権だと思うのですが、如何様にも解釈できるタイトルなんですよね。
大粒の涙のあとの満面の笑顔…眩しかったですよ。
満面の笑顔に続いて口をついたセリフ…もうキュン死するかと思いましたよ。
しっかりタイトルの意味も回収できました。
オープニングテーマは、オーイシマサヨシさんの 「オトモダチフィルム」
エンディングテーマは、テレサの「ラブソング」
ゲーマーズ!の千秋を見た頃から思っていましたが、石見さんの声質…私のど真ん中みたいです。
もちろん、歌も一緒です。
1クール13話の物語でした。
「後悔を繰り返さないために…」
「後悔を次に活かすために…」
最高のテーマだったのではないでしょうか。
思い切り堪能させて貰った作品になりました。
今期のBEST10の上位に食い込んでくる作品になると思います。