Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
空に重ねた未来に、君が聞こえた。
この作品は、オリジナル作品だったみたいですね。
懐かしさを感じるキャラデザや背景は、否応無く視聴者の心を惹きつけます。
そして声優さん…
Dパイメンバーの一人を演じた河瀬茉希さんは、これが初の主演作だったようですが、周りをみてみると、くのちゃん、黒沢さん、新井さん、名塚さんに釘ゅ、と豪華なメンバーが名を連ねています。
そして物語の舞台は、航空自衛隊の岐阜基地…地元指向性の強い作品はむしろ好物なので、視聴を楽しみにしていました。
この物語の主人公は、航空自衛隊岐阜基地に配属された新人の甘粕ひそね…
彼女は思ったことを無意識に口にしてしまう癖の持ち主…
だから知らないうちに友達を傷付けてしまった過去のトラウマから、周囲との関わり合いの薄い自衛隊を選択しました。
甘粕ひそねは自衛隊でひっそりと職務を全うする筈だったのですが、ある日基地内でこれまで行ったことのない格納庫に行く必要が生じました。
ですが、そこで彼女はとんでもない物体に遭遇してしまうんです。
その物体とは…架空の生物とこれまで認識してきたドラゴンだったんです。
このドラゴン…ただのドラゴンではありません。
F-15J戦闘機…イーグルに偽装して空を飛ぶ、国家機密級の「変態飛翔生体(OTF)」だったんです。
それだけではありません。
このOTFには誰もが乗れる訳ではなく、高い適正が求められるのですが…
ひそねは、たまたま特性を持ち合わせていたことが幸いし、OTFを操縦するDパイとなって物語が動いていきます。
ひそね本人は、Dパイになることなど夢にも思っていなかったでしょう。
只でさえ、人とのコミュニケーションに難があるからこの自衛隊に来たのに…
飛行するための必須スキルであるドラゴンとの交流を深化させるなんて…
まぁ、そう思うのも無理ないと思いますけれど。
ですが、Dパイになったことで、これまで見えなかった世界が見えるようになったの事実です。
だってDパイって…なりたいという自分の意志だけでどうしかなる職務じゃないんです。
Dパイを夢見て、膨大な研鑽を積み重ねて…そしてどんなに恋焦がれても、OTFに認めて貰えなければ、乗る事すらできないんです。
それがぽっと出の新人に狙っていたDパイの座をあっさりと奪われてしまったら…?
当人にとっては決して面白い事態ではありません。
でも、そういうのって…人と関わらないと言葉や感情を受け止めることもできませんよね。
だから、ひそねは今までの意固地で偏屈な考え方を変える必要があったんだと思います。
だって自分が変わることで見える世界が広がってくるから…
そしたら、これまで受け入れられなかったモノが変わって見える筈だから…
勿論、これまでの自分を全否定してこれまで受け入れ難かったモノを受け入れる…
言葉にすると簡単ですが、実際に遂行するには相当ハードルの高い所業だと思います。
だから生半可や中途半端では全然ありませんでしたし、そのために相当自らを窮地に追い込みました。
それはその必然性に誰もが気付ける状況が目の前に転がっていたから…
日本全国のDパイ乗りが集結し、共に訓練を行うようになってから暫く経った頃…
物語は急展開…というより、ようやく見えてきた全容は、思わぬ方向に舵が切られていくのです。
伝統やしきたりは、古くから日本人が大切にしてきた文化や日本人らしさそのものだと思います。
そして伝統やしきたりは、繰り返し遂行することで、その姿かたちを今の世まで繋いできました。
だから、そのしきたりの一部に抜擢されるのは、とても名誉なこと…だと私たちは思ってきました。
だって、他の誰でもない…自分が選ばれたのですから…
でも…伝統やしきたりは名誉だけじゃ支えきれないんです。
輝かしい出来事の裏側には、数えきれない涙と後悔が詰まっていて、それら全部で伝統やしきたりを下支えしているんです。
本当に答えはその一つしかないのでしょうか…?
この物語では、その答えの一つを導き出してくれています。
とても優しい物語に昇華していると思いますよ。
オープニングテーマは、福本莉子さんの「少女はあの空を渡る」「少女はあの空に惑う」
エンディングテーマは、Dパイの「Le temps de la rentrée〜恋の家路(新学期)〜」
特に印象的だったのはエンディングです。
絶対カラオケで歌える気がしないんですけど…と思ったらDAMにはもう入ってるんですね。
1クール12話の物語でした。
ラストのオチもこの作品らしさが溢れていたと思います。
声優陣も凄かったですが、製作スタッフの顔ぶれも半端ない作品です。
オリジナルらしい痛快な作品だったと思います。