ワドルディ隊員 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
色々とパワーアップして帰ってきた(初期の)ミッキーマウス
この作品は、『アナと雪の女王』と同時上映
されていた短編アニメである。
ミッキーマウス・シリーズの短編アニメとしては
『アルバイトは危機一髪』以来、18年振りの公開となった。
また、初の3D作品でもある。
内容を一行で言い表すと、ピートに捕らわれたミニーを
助けるためにミッキーがありとあらゆる手を駆使し、ピートに
戦いを挑むという王道物である。
蒸気船ウィリーの頃のデザインが元になっているので、初期作品の
ミッキーマウス・シリーズはある程度把握しておいた方がいい。
作風も当時の物をベースに制作しているからだ。
まず驚いたのは、初期作品における特徴を忠実に再現していること。
ノリも当時のままだ。コミカルな動き、急に流れ出す音楽、
足を階段状に変形させる特殊能力…。時間をかけて、丁寧に
作られていることがよく分かる。初期作品を知っている方ならば、
懐かしいと感じることだろう。
流れが変わるのは、ピートが出てくる辺りから。ミッキーが、咄嗟の
判断力でピートの目を一時的にごまかすことに成功したものの、
ピートは怒りの余りミニーを誘拐しようとする。
そして、ピートがミッキーとホーレス・ホースカラーを
画面側に投げつけることで、3Dカラー画面に飛び出してくる場面。
これには、流石に驚かされた。要は、先程までのモノクロシーンは
劇場でスクリーン上に映っていた映像の一つに過ぎなかったという訳だ。
その際に、ポップコーンが散乱する場面があるのですぐに気づくはずだ。
これにより、モノクロと3Dカラーを上手く調和させることに成功している。
ミッキーが「赤い!」と呟く場面も中々興味深い。途中で、
ホーレス・ホースカラーと合流するのだが、なぜか、スマートフォン
を持っていたり、キャプテンアメリカのシャツを着ているのだ。
これは現代だからできる手法だろう。
初期作品が上映されていた頃に、スマートフォンは登場
していなかったし。キャプテンアメリカに関してだが、過去に
ディズニーによるマーベル買収があったから実現できていることだ。
気になる方は要チェック。
ホーレス・ホースカラーを瞬時に飛行機に変形させる特殊能力
は今でも健在のようだ。これに関しては、プレーン・クレイジー
を見れば直ぐに分かるだろう。
その際に、カメラワークが瞬時に切り替わるのもお見事。見応えがある。
スマートフォンを利用し、ピートの電話を通じて攻撃を仕掛ける
など実にユニーク。ここで「ハハハハ☆」と高笑いするミッキー
はやはり腹黒い。ミニーが池に落ち、溺れそうになった際は瞬時
に穴をあけ、救出することに成功したが映画館はビチャビチャ。
これでは映画館が水没しても仕方ない。だが、ピートが直ぐに奪い返し
更に状況は悪化してしまう。
スクリーンを回転させ、天地をひっくり返す手法を直ぐに
思いつくミッキー達。これが気に入ったのか、ミッキー一同は、
今までの恨みを晴らすべくピート虐待を開始することに。その際、
ピートと同じ空間にいるミニーもかなり腹黒い。
もう一度回転させてと頼み込み、2回目はサボテンを置く有様。
全く持って末恐ろしいヒロインである。
味を占めたミッキー一同は、巻き戻しの性質も利用しピートが痛がる
姿を楽しんでいる。「ん?悪役っていったい誰なんだろう?」
と思ったそこのあなた。その考えは正しい。むしろ、初期作品は
こういう展開になるものばかりなので正常運転だと言える。
少なくとも、ピートファンの方は目をつぶった方がいいのは
間違いない。見なかったことにするのはかなり厳しいだろうが。
そして、ミニーとミッキー一同が合流し、ピートは映画館に
締め出されるという落ち。最後まで、物語を楽しむことが出来た。
やはり、一回見ただけでは物足りない。
出来れば、『アナと雪の女王』とは別の映画で同時上映
して欲しかったのだが…まあ仕方なかろう。初期作品の特徴を
取り入れつつ、上手く現代の要素と絡み合わせた良作だと感じた。
ディズニー作品が本当に好きな方ならば、
必ず見るべき短編アニメの一つだと思う。