oxPGx85958 さんの感想・評価
3.2
物語 : 2.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
うまく作られているが、同時に限界も見える、のか?
最初の3話ぐらいまでは、これは大傑作なんじゃないかと思いました。物語の導入の例として教科書に出てくるんじゃないかと思うぐらい、よくできています。その後、これはちょっと問題なんじゃないかと思う点が出てきて苛々し、最終話の展開にがっかりするものの、すべてが終わってみればこういうのが狙いだったのかなとも思い、複雑な気持ちになりました。
これ、個々のエピソードの構成と演出はほんとによく計算されていて、繊細な工芸品のようです。その点は最後まで変わりませんでした。ただ、これは個人的なバイアスも入っているのかもしれませんが、前半のうちに提示されて解決する1つの問題があまりに重大すぎて、その後に起こるすべてのトラブルが些細なことのように思えてしかたがない。
後半に入って、この違和感をどう解決するんだろうか、という考えがずっと頭の中にあったため、集中して見ることができませんでした。で、最終話まで行って、「これはもしかしたら」と思ったのは、このアンチクライマックス的な展開は最初から予定されていたものだったのかもしれない、ということだったわけです。
実際、登場人物たちが行うパフォーマンスは、最後のものも含めて、もともとそんなに大したものだとは想定されても描かれてもいない。そういうものだと私が勝手に思い込んでいた、ということなのかもしれない。
繰り返しになりますが、個々のエピソードはほんとに教科書的にしっかりと作られている。だからこそ、シリーズ全体も教科書的にクライマックスに向かうものと思い込んでしまった、ということなのかもしれない。
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もう1つの可能性は、これは別にアンチクライマックスではない、というとらえ方。その立場も理解できないわけではない。 {netabare}母親の死{/netabare}という出来事が、多感な年頃の登場人物たちにとって、{netabare}体格がよくて騎手になれないとか、ペンパルが引っ越してしまったとか、文化祭が中止になる{/netabare}とかの出来事と同等以下の物語上のギミックである、と思う人にとっては、これはアンチクライマックスではないかもしれない。
もしそうなのだとしたら、私はもう多感な若者じゃないんで、困ってしまいます。登場人物たちよりも彼らの親の年齢に近い私が、このアニメから得た最大の教訓は、{netabare}死ぬときにはちゃんと身辺整理しておかないと、まわりの人に迷惑をかける{/netabare}ということだったりするし。
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そうは言っても本作はほんとによくできています。P.A.WORKSという制作会社にはまったくいい印象がなかったんだけど、ネット上で高い評価が見られることの理由がようやくわかりました。
いや実際、近年のこの会社の作品を列挙すると、最近になってアニメを見始めた私がそう思うようになるのも理解できると思います。2018年には『ウマ娘』という当たりがあったものの、その前には『サクラクエスト』、『クロムクロ』、『ハルチカ』、『Charlotte』など。あと、本作と前後してですが、『Angel Beats』、『花咲くいろは』、『凪のあすから』などもありました。
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主役5人の声優たちはいずれも良く、好感が持てる演技をしていました。ただ、それぞれにどんな見せ場があったかと振り返ってみると、類型的なキャラクターの類型的なシチュエーションばかりが思い出される、というのも本作の限界の1つではあるんでしょう。