ワドルディ隊員 さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
社会風刺を題材とした1990年代のミッキーマウス短編アニメ
この作品は、1995年に公開されたミッキーマウス・シリーズ
の一つとして制作された約7分の短編アニメである。
当時のアメリカでは、ディズニーの実写映画
タイムマスター時空(とき)をかける少年と同時上映されていた。
おおまかなあらすじとしてはこんな感じ。
暗い空間の中、ミッキーマウスは目の前のテレビゲームに没頭していた。
ミニーマウスが訪れたのだが、デートの約束を
忘れてしまい、挙句の果てには邪魔者扱いしたことで
ミニーを怒らせてしまう。途中で我に返り
デートの埋め合わせとして海外旅行を提案したが
後に大金が必要であると分かり、途方に暮れてしまう。
プルートが見つけ出した求人で、安心したミッキーは
大金を得るために怪しげなアルバイトに挑むのだが…。
全体を通した感想としては、ミッキーマウスシリーズの中でも
特に風刺が効いているアニメだと感じた。
また、他作品のオマージュを上手く取り入れているのも高評価。
古い映画を沢山見ている方ならばオオっと驚く
場面が多いのではないだろうか。
冒頭、テレビゲームに熱中しているミッキーを見れば、
ダメ彼氏っぷりが直ぐわかるようになっているのも
よい。目が完全にイっちゃっているしね。
途中で自我を取り戻し、「ハハッ☆」と発しながら
ミニーに詰め寄るシーンは流石に笑ったが。
ミッキーに愛想をつかしたミニーが
「ミッキーなんてゲームとデートすればいいんだ!」
と一蹴するのも物語の本質を突いているなと思った。
今回に関しては、どう考えてもミッキーが悪いので
ミニーに同情するしかないのだが。
海外旅行で、彼女の機嫌を取ろうと考えたが大金が必要であると分かり、
途方に暮れてしまったシーンも見ていて辛いものがある。
『ミッキーはディズニーの広告塔なんだから金なんか
有り余るほどあるに決まってんだろ』
と言いたくなるが、恐らくサラリーマンなのだろう。
家の中に大金が眠っているような状況ではないらしい。
ミッキーの金遣いが荒いという可能性も捨てきれないが。
明らかに怪しい求人でも、安堵するミッキーを見ると
かなり不安な気持ちにさせられるが、ここは温かい目
で見守ってあげよう。じゃないと、ストーリー展開が疎かになるからね☆
そこのバイトで、マッドサイエンティストに捕られたミッキーは
強制的に怪物のジュリアスと脳を入れ替えられてしまう。
入れ替えられる最中に、耳の部分まで脳みそがぎっしり
詰まっているのが判明したシーンは大爆笑した。
やはり、ディズニーの笑いのセンスは衰えていないようだ。
ジュリアスの意識が乗り移ったミッキーは正にモンスター。
ホラー映画に出演できそうな風貌だ。
(体はジュリアス)ミッキーが、(体はミッキー)ジュリアス
に説得を試みる際、写真のことを教えるのだが、蒸気船ウィリー
時の写真が出てくるとは思わなかった。
突然、メタ発言を入れてくる製作スタッフには感動すら覚える。
それからはミッキーとジュリアスの熱いバトルが繰り広げられる。
ここでは、キングコングのシーンがさりげなく挿入されている。
非常にテンポがよく、飽きさせない作りになっている。
強いて言うなら、かなり早い段階で元の姿に戻ってしまうのが欠点か。
ミニーを救うために覚悟を決めたミッキーには、敬意を表したい
ものの、その時の顔はかなり目つきが悪い。武器を手にしたので
気分が高揚したのだろう、殺意を込めて向かっているように
しか見えない。時には手を汚すことも必要だという教訓なのか。
それなら納得だ。
最後の落ちは、ボートに括りつけられたジュリアスが写真を餌に
目的地に向かっているのだが、これには流石に不自然だと思った。
だって、ミニーがすぐそばでミッキーといちゃいちゃしてるんだもん。
それまでの流れは良かったのに…。勿体ない。
だが、それを踏まえてもとても見ごたえのある短編アニメであることに
変わりはない。社会風刺が好きな方にも楽しめると感じた。
個人的には良作だと思う。