101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ゆるふわして始まらない真の終末世界
原作コミックは未読。
特に大きな事件を起こさなくても作品を維持できる。
これまで日常系作品が積み上げて来た成果が終末に最接近した。
そんな感じの珍品でした。
文明崩壊後の世界や、人類が滅亡に向かう絶望を描いた物語は数多いですが、
終ってるはずの世界でも、まだ超人的なヒーローが立ち上がれば、再起出来るはず。
こんな感じで文明が発達している我々の世界よりも
余程スペクタクルな伝説が、むしろ始まりまくってる作品が大半。
けれど本作に関しては、凡庸な少女二人が
豆大福みたいなゆるい顔面を並べて、
とりとめもないトークを延々と繰り広げていくばかり……。
人類起死回生の大逆転劇など始まる予感すらしません。
私にとっては初回冒頭がとにかく衝撃的でした。
{netabare}二人の最初のセリフ。「暗い」「暗いー」「暗ーい」「くーらーいー」と滑り出す件。
私にとって文明亡き後の物語世界における暗闇とは、
失われた人類の遺産に挑んだり、破滅の真相に肉薄したり……。
己の存在意義を試される神聖な領域。
……などと勝手に美化されていたため、
二人の率直な感想はもの凄いインパクトでした。
いや、ま、確かに暗いんだけどさ~w
いきなり先制の膝カックンを喰らった気分w
そこから私は為す術もなく?一気に作品世界に引きずり込まれましたw{/netabare}
終末世界にだって凡人はいる。
この視点から繰り出されるセリフの数々は、
伝説的武勇伝の構成等には全く役に経ちませんが、
庶民目線ゆえ、ハッとさせられる要素が数多くありました。
文明が終る時は、チョコレートが失われるだけでなく、
チョコレートという概念そのものが人々の記憶から失われていく。
亡くした当たり前の概念をいちいち再確認していては始まりませんが、
端から始めるつもりなどない二人にとってはノープロブレム。
それどころか、我々が普段問い直すことがない常識について、
認識なき無自覚がふわっと盲点を突いてくる。
それらが現代社会に対する批評の風味も醸して、
本作の作品価値を高めていると思います。
この観点や、今の季節から、思い出されるのは、第5話の「雨音」
{netabare}「音楽」という概念が消えかかっている二人が、
金属を叩く雨音から音楽を認識していくお話。
文明が滅び去り、科学や武器が失われても、音楽や芸術は残る!
と古より作家らは頑強に主張して来たわけですが、
それにまつわる記憶や知識が人々の脳裏から欠落していけば、
楽譜や書物などただの暗号文。
天候変化など、もっと人類の原初的な体験から音楽の一端が再生されていく。
これまた庶民目線に裏をかかれた良回でした。{/netabare}
今後、本作より終末に迫るエンタメ作品は、
迫る動機を見出せるか否かも含めて、なかなか現れない気がします。
ゆるく終っていくこの世界で、ゆったりと思索に耽る。
一日の締めなどにも適した?終末アニメです♪