しんちゃん さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
可愛いJKアニメ・・・と思いきや、実は結構深い「クリエイター自伝」
原作漫画未読で、キャラデに対して原作と違いすぎるといった批判もあったようですが、アニメはアニメと割り切って見れば、メインの4人も周りの登場人物も十分可愛かったと思います。3ヶ月間、楽しませてもらいました。
ネットの評価を見ていると、どうやらこの物語は原作の半沢かおり先生自身の半自伝的な作品のようです。
で、そういう目で見ていると、現役漫画家女子高生たちのゆるーい日常系のエピソードの中に、クリエイティブな仕事で食べていくことの辛さ、楽しさといったものがエッセンスとして隠されているように思えてきて、面白いです。
{netabare}他人の作品の良さに憧れるあまりそれらに引きずられて、自分自身のオリジナリティを出す勇気がいつまでも出せないでいるかおすちゃん、
「エロ」という自分の作品のジャンル自体が親や先生から認めてもらえないものであるために、仕事をしている自分自身に対しても後ろめたさと自己嫌悪を感じ続けていた琉姫ちゃん、
卓越した画力とストーリーテリングの技量を持ちながら、家族の期待や自分の社会的属性のためにそのことを隠し続けざるを得ない翼ちゃん、
そして少女まんが家でありながら男性と恋愛どころか間近で観察した経験すらもなく、男性をリアルに描けないことにコンプレックスを抱えている小夢ちゃん。{/netabare}
4人の主人公たちそれぞれが「クリエイティブな仕事をする」ということの代償としてさまざまな悩み・葛藤を抱え、でもそれを何とか乗り越え、あるいは自分なりに解決策をさぐり当てながら生きています。
世間で認められたクリエイターだからといって、かっこ良くて羨ましがられるような生活をしているわけではなく、むしろ人一倍自分の仕事と自分自身のアイデンティティに悩んでいるんだよ、それが当たり前なんだよ、ということを、この作品は訴えているのではないか。
その葛藤を乗り越えていくきっかけは、一人一人で異なります。でも、最後は4人ともその悩みを何とか自分で乗り越えていく。
アニメとしてはあくまでコメディの形式を取っているので、毎回きちんとテンポよくギャグは挟んでいかないといけない。その分、シリアスな葛藤とそれが克服されるカタルシスの描写は少ないかもしれないけど、そうした制約の中でクリエイターという仕事の内面に迫り、その内面で悩みが克服されていく様子をきちんと丁寧に描いた、なかなかの良作だったように感じました。
{netabare}4人がそれぞれの葛藤や悩みを乗り越えていけたことには、実はその周りにいる大人たち(寮母さん、編集者、高校の先生)の存在も大きかったでしょう。というか、この3人もまたかつてはまんが家を志したものの、それぞれの理由でその夢をあきらめて後進をサポートする側に回った人たちだったという設定が、非常に興味深いです。つまり、私たちクリエイターは最後に一人で自分の内面的葛藤を乗り越えなければならない、けれどもそれが可能なのは過去に多くの思いを持って同じ道を歩こうとして来た先人たちが、陰から私たちを支えてくれているからだ、というふうに読めるわけです。{/netabare}
もちろん、そんな深読みをしなくても、可愛い女の子たちをただぼーっと眺めながら流し見することもできますが、個人的にはかなりターゲットが狭いけれどクリエイティブ業界の人が見ると心にじーんと沁みるもののある、味わい深い作品だったと思います。
声優さんもヒロイン4人、サブキャラとも、どれもそれぞれの声優さんにどハマりの役柄でした。実際、アドリブがかなりたくさん入っていたそうですが、違和感感じるところはまったくなく、最後まで気持ちよく没入できる演技でした。あと、OPもEDもそれぞれとても良い曲でしたが、それを4人がパートを分けながらキャラ声で歌っているのがとてもしっくり来て、心に染みました。