しんちゃん さんの感想・評価
2.7
物語 : 1.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 2.5
キャラ : 1.5
状態:観終わった
ザ☆御都合主義
F-15やF-2といった空自の戦闘機が実はドラゴンだったら?という、奇想天外な設定に興味津々で見始めたものの、毎回毎回ありえないほど身勝手で自分勝手な主人公の言動にイラつかされ、でもきっとここまで壮大な風呂敷を広げたのだからきっと何か最後にどんでん返しで驚かしてくれると思ったら、まさかの主人公が勝手にわがまま言って自分で人身御供になるというバッドエンド、でもそのあとで声だけ生き返るという究極の御都合主義。空自や宮内庁が公式に取材協力してるにもかかわらず死人を出すわけにはいかなかったとはいえ、最後まで観てこれほどがっかりさせられたアニメも最近ちょっとなかったなあと。ストーリーの出来と後味の悪さは、私がこれまで観たアニメの中でもピカイチです。いやーひどい。
声優さんも、主人公ひそねとその周りのDパイや、空自の面々はなかなか渋いメンバーの起用でハマっていると思っていたのですが、JK巫女が出てきたところからぶち壊し。クライマックスに絡むあんな重要な役どころに、セリフ棒読みのOP歌手を起用するなんて、監督もプロデューサーも、声優という仕事を何だと思っているのでしょうか。
唯一のカタルシス(というか、それをカタルシスと呼んでよいのかどうかも自信がありませんが)は、11話の柿保飛行班長の主人公に対するマジギレのシーンでした。公務員としての矜持と自分の欲望の投影の区別がつかなくなった葛藤を表現する釘宮さんの本気の演技がすごかったのと、ひそねに対するイライラを全部ぶちまけてくれたので、テレビの前で「よくぞ言ってくれた、俺たちの柿保さん!」と叫んでました。でも、全体的に言えばストーリーの壮大さに比べてそうした人間の内面の葛藤のドラマといったものが弱く、物語としては薄っぺらい印象しか残りませんでした。
なによりも一番がっかりしたのは、ミタツ様の移動が74年周期、すなわち前回が1944年(太平洋戦争終戦の前年?)だったという重大極まる設定が、ほとんど何も回収されずに終わったことです。
現人神たる天皇の守る国だった日本の敗戦は、ミタツ様に対する国家の不義によって、あるいはミタツ様の何らかの意思によってもたらされた国難だったのか?それを引き起こしたきっかけは貞さんだったのか?貞さんはそれをどう総括しているのか?物語の作者は、戦後70年以上経っても今もって回収されずにいるこの「神国日本」伝説に対する終止符を、どのように打とうとしているのか?…ということに興味津々で最終回を見たのですが、それに対する答えは何も示されず、74年周期という数字に大した意味もなかったことが顕わになってしまいました。本当にがっかりです。
前回のミタツ様のお目覚め当時、少なくとも10代後半だったはずの貞さんは計算上は90歳を越えているはずなのに何であんなにぴんぴんしてるの?というご都合主義を全部取っ払っても、樋口×岡田のコンビがこの大きなテーマに対してどんな思想を見せつけてくれるのか、これにずばり答えを示してくれたら、それこそあらゆるご都合主義批判を跳ね返せるパワーをこのアニメは持つはずでした。しかし、それはなされませんでした。
その他にも、Dパイのスーツの意味とか高卒で空自に入った主人公の年齢やマツリゴトと自衛隊の関係など、細かいところで色々と設定が破綻しているというか、御都合主義があちこちに垣間見えてしまい、いっしょに観ていた子どもにすら突っ込まれる始末。壮大なスケールのアイデア倒れ、というべきでしょうか。残念でした。