STONE さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
この形式は今後のスタンダードの一つになるのでは
原作はプレイ済み。
複数のヒロインが登場するマルチエンディング形式の恋愛ゲームをアニメ化
する場合、それぞれのヒロインとのイベントをこなしつつ、最終的にメイン
ヒロインとくっついてしまうと、結構主人公はイヤ奴になってしまうところが
ある。
その点、この作品は「ゲームがマルチならアニメも」という感じで、
ヒロインごとにストーリーを分けたオムニバス形式を取っている。この形式は
それまで皆無だったわけではないが、最もうまく成功した作品じゃないかと
思います。
1ヒロインに対して4話割り当てられているため、駆け足になることなく、
ちゃんと各ヒロインの魅力を拾い上げることができている。この辺は2クール
という長尺の強みかなと。
一つの編を1作品として見た場合、1クールのアニメ作品と較べて短い
ように思えるが、1組の男女の恋愛が成就するまでの(しない編もあったが)、
ごくごくシンプルなストーリーであるため、ごれぐらいがちょうどいい。
シンプルと言えば、あるヒロイン編において、別ヒロインが割り込んでくる
こともなく、新手のライバルキャラが登場することもない。ドラマとしては
こういった多角関係の方が面白かったりするが、話数の関係からも、更に
ヒロインの魅力を推すにはこれでいいように思える。
この「ヒロインの魅力」というのがこの作品の一番の売りのようで、
橘 純一の変態性もヒロインの魅力を浮き出させるための方法の一つといった
感じ。
始めにイベントありきで、そのイベントを生かすためにストーリーが
成り立っている印象で、極論すればヒロインの魅力を出すためには
ストーリーは犠牲になってもいいぐらいに思える。
実際、桜井 梨穂子編は恋愛ドラマとしてはどうかと思うし(一種の女子部も
のとして見るとそれなりに楽しいが)、他にもストーリーを文字に起こして
しまうと、それほど面白い話ではないものが幾つかあった。
基本、主人公である橘 純一とメインヒロインの、恋愛相手としての出会い
から、その恋に結果が出るまでを描いたものであるため、いずれの編も
画一的なものになりやすいが、それを演出によって差別化しているのが
上手いなあと。
ヒロイン編によって、シリアス度とコミカル度の比重が異なるし、
橘 純一とメインヒロインの視点の比重も編によって異なる。
特に、中田譲治さんによるナレーションを設けて、両者を俯瞰的に描いた
中多 紗江編と、メインヒロインの方を主人公にして、女子視点重視にして
しまった桜井 梨穂子編が印象的だった。
あるヒロイン編において、他のヒロインはサブキャラとして登場するが、
これもうまいこと機能していた印象。
自分がメインヒロインになるまでは、他のヒロイン編において、その
キャラを紹介する役割を果たしており、これは後になればなるほど有利。
それを最大に生かしたのが6番目のヒロインであった絢辻 詞。他のヒロイン
編では徹底していい絢辻さんであったため、他のヒロイン編が絢辻 詞編の
伏線になっていた。
こういう点では、先に登場したヒロインほど損するように思えるが、メイン
ヒロインとして、その人となりが充分に判った後、別のヒロイン編でサブ
キャラとして登場すると、ネタとしての面白みが増している。
実際、トップバッターとして登場した森島 はるかは、第1話において6人の
ヒロイン紹介に時間を取られてしまい、割を食った印象があったが、他の
ヒロイン編においては、一番ネタとして機能していたように思える。
そして、最終話では、ゲームの隠しキャラだった上崎 裡沙が登場。
1話だけでうまくまとめたのも良かったが、単なるファンサービス回で
なかったことが大きい。
それまでの6人のメインヒロイン編をうまく取り込んでおり、それまで
バラバラであった各ヒロイン編を一つにつなげた役割も果たしている。
また、この編において橘 純一の2年前のクリスマスのトラウマの真相も
明らかになる。ストーリーを進めるための単なる基本設定かと思われた純一の
トラウマがそれなりのドラマ性を持つもので、「アマガミSS」という作品の
世界観を補完した、最後の1ピースとしての重要性を持っていた。
面白いのは、純一が各ヒロイン編において、それぞれ異なった印象を与えて
いること。この辺は演者である前野智昭さんの演技力によるものが大きいが、
実際に現実世界でも相手によって対応を変えるため、同じ人物でも相手に
よって印象が異なることは多々ある。
各ヒロイン編ごとにEDを変えるのは大変だったとは思うが、その徹底
ぶりは好印象。