kurosuke40 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
人間と怪物
私は要らない子という呪いを背負った智世と
感情的なアプリオリを言語化できておらず、また自らの感情と他者との付き合い方に疎いエリアスのお話。
全編を通しての智世の解呪と
後半からは、人外のエリアスが、感情と他者との折り合いの付けあい方を学んでいく。
前半は智世が居場所を決めていくまでの過程。
おそらく智世にとって適切な場所を見つけたものの、関係性を深めていくことができない。
エリアスも自分は化け物だから、怖がられて嫌われるのではないかという思いから、踏み込めない。
智世は智世で、エリアスが望まないならば深入りしたくない。深入りすると私は要らない子だから、また捨てられてしまうかもしれないと踏みとどまってしまう。
しかし、お節介な管理人やネヴィンの後押しもあって、智世は踏み込んでいく。
エリアスから寂しいという言葉を引き出し、ただ買われたから、ではなく
寂しがる人がいるから、と居場所を決めていく。
ただ居場所があればよかった、から、関係性を深めていけないことに対する不満がでてきていることへの葛藤だったり、
「そんなに怖がらなくていいですよ」とエリアスの内実を指摘していく様は、
見えない心の動きを指摘していて、あーそうだよなーと見ていて心地よかった。
ただ踏み込んだ分後半からはエリアスの内実が見え、子供っぽさが顕現してくる。
冒頭からエリアスは理性的に書かれているだけに肩透かしを食らった感があったけど、
実はこの部分が人外というジャンルの強みなんでしょうね。
感情はどのように言語化されていくかというと、
赤ん坊のときに、母親から「嬉しいね」「悲しいね」というアプリオリに言葉をもらって言語化していくものらしい。
エリアスは出生の特殊さや、また人との付き合いも薄いこともあって、そのような経験は薄い。
現実にも感情を言語化できていない人間男性はいるだろうが、物語の主要人物としてはあまり受け入れられないだろう。
あくまで人外だし、しょうがないよね、となる必要がある。
心の人外的な要素の描写が薄かったため、当初は子供っぽさが見えた際には驚いたが、だがこの穴は計算されたものにも思える。
また人間と人外では、論理が違う部分が多々ある。
人外では生きるために親は子を崖に突き落とすかもしれないが、
人間ではあくまで慣習的にはそのような行為は認められていない。
人外(怪物)の論理では、大切なものは相手の意思に関係なく、自分のものにして大事にしまっちゃおうねだが、
人間の論理では、一緒に話し合って妥協点を見つけましょうになる。たとえ、智世が竜の呪いに殺されてしまう結論になっても、だ。
どちらの論理が正しいか、は置いておいて
家族として暮らしていくには智世とエリアスは折り合いをつけないといけない。
弟子だったら師匠に合わせるだろうが、あくまでタイトル通り嫁の話なのだ。
このような人外側の感情的な自覚の薄さからくる感情への対処法を知らない子供っぽさや、
セロリが好き嫌いレベルではない論理の違いがラディカルに表れ、乗り越える様が主題になる。
まぁぶっちゃけ内実的には見た目以外はエリアスは疎い人間男性ぐらい、の程度の違いになっていて、そこまで人外人外してないですが。
智世が居場所を見つけて、自尊心を取り戻していき、私を縛るのは私自身だったと気づく過程には
完全な人外ではなく、元々人間で人間的な慣習が残る野獣で十分だったかもしれない。
ただ個人的には、歩み寄るという必然性が多い分、完全な人外の方が好きかなーと思いました。
前半の素直じゃない二人の様子や、
後半のエリアスの子供っぽさを踏まえてお互いやっていこうと歩む様は見ていて心地よかったですね。
誰も他人と完全に理解しあうことはできない。
言葉は分かり合うためではなく、話し合うためにある、とステラさんの言でした。
ご精読ありがとうございました。
蛇足
智世が一緒に話し合いましょうと提案する割に、一人で決断と実行に先走るのは、
もうちょっとエリアスは怒っていいと思う。
作中でも長生きしようよと、別方向から諭されているけど。
あくまで人間側の論理に人外が合わせる方向になっていますが、
(智世が人間の先生という立場で、エリアスも妖精女王の前で受け入れ先を人間に求めているのがわかる)
理屈から言う人間が人外側に合わせることもありといえばありで、
どのような結論になろうと、そこは他人が立ち入るところじゃない。
人外ジャンル、闇が深そうだ……。
好みだったので原作買いましたが、原作に忠実なアニメ化でしたね。
2クールでじっくりと再現してくれたのは良かった。
この作品での自由は、自由意志かな。
OP1、良いね。
ヨセフも強引に救い上げる剛腕さ、すきだわー