雀犬 さんの感想・評価
3.4
物語 : 2.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
女性向けカップルラブコメ
2018年春のノイタミナ枠。2組の社会人オタクカップルの不器用な恋模様をコメディタッチでゆる~く描いたラブコメです。原作は女性に大人気のWEB漫画。もともとはpixivに投稿されていたそうです。
■タイトル詐欺?
"ヲタクに恋は難しい"
けっこうタイトルに噛みつく人が多いんですよね。「こんだけルックスが良ければ恋なんて難しくねーだろ!」と。このアニメの登場人物は美男美女でスタイルも良い。何が難しいのかさっぱり分からんと。
でもこの意見はよく考えるとおかしい。「オタク=ブサイク」という等式が頭の中で成り立っていることになる。要は、「俺がイケメンに生まれたらアニメなんてオタク趣味に走ることなく週末は彼女とデートして、夜はめちゃくちゃセクロスしていたはずなんだ!」と言いたいのですか?そして恋人ができた時点で目的が達成されるという認識があるように見えます。
でもヲタ恋ってそういう話ではないじゃですか。オタクは自分の趣味にお金と時間を使っちゃうから恋愛が難しい。いわゆる非オタの人と付き合っても相手に合わせないといけなくて長続きしない。第一楽しくない。それならオタク同士で付き合っちゃえばいいじゃない!と言ってるわけですよ。
早い話が「私って実はけっこうオタクだし~www」みたいなライトなオタク女性に夢を見させる内容なのです。なるほど、ヒットするはずだわ。男性オタクにはけっこう壁を感じるかもしれません。カップルがイチャコラしているのを見てイライラするようなら、この作品は向いていないので避けた方が良いと思います。僕は若干イラつきながらも頑張って最後まで見ましたけど!
■仲良きことは美しきかな
このアニメの良さは何よりカップル同士の仲が良いところ。これに尽きるでしょう。オタク同士のカップルラブコメなので、一般的な感覚で見ればほほえましい、オタクから見ればうらやましいと思わせたら勝ちです。僕は後者の立場で見るわけですが、その点で成功しているように思いました。
成海と宏嵩はぶっちゃけラブラブだし、小柳と樺倉はよく口喧嘩になるけど、小柳が樺倉がベタ惚れなのは見ていて丸わかりなんですよね。沢城みゆきさんの演技は流石だと思いました。
正直男女4人の第一印象はあんまり良くなかったです。成海は調子こいてるし宏嵩はブツブツしゃべるのが気持ち悪いし小柳は面倒くさいし樺倉は口が悪い。そういった短所も彼らが幸せそうにしているのを見ていくうちに許せてくるから不思議なものです。特に声も性格も苦手だなーと思ってたヒロインの成海は見終わる頃には、一緒にいると楽しそうでいい子だなぁと評価爆上げしました。
■正直さ
本作は男目線で見ると、ややご都合主義に感じることがあります。最たる例が第10話で登場する光。彼女はコミュ症のゲームオタク。スタバでゲームをしていると同じ大学の同級生の爽やかイケメン店員の尚哉に声をかけられ、オンラインゲームを通じてとんとん拍子に仲良くなる。おいおい都合良すぎるだろ、まんさん!!・・・と男なら憤慨したくなりますが、男性向け萌えアニメのヒロインは100倍都合よく主人公に惚れるので大きなことは言えないんだなぁ。
それはともかく、同じオタクの願望であっても男と女はやはり違うなと思いました。男なら「ダメな僕でもモテたい!」という願望がライトノベルをはじめとする男向けオタクコンテンツからはひしひしと感じられる。これが女だと「ダメな私でも愛されたい!」になるんですね。批判もあるかと思いますが、僕はヲタ恋のこういう正直さは嫌いじゃない。
このアニメは作者がどういう価値観を持っているのか、とても分かりやすい。ヲタ恋の特徴として、お仕事に関する描写の薄さが挙げられます。登場人物は同じ会社で働く社会人なのに仕事に関するエピソードがひとつもない。彼らがどんな業種で働く人でそれぞれどういう業務を担当しているのか、最後まで見てもさっぱり分からない。でもまぁ作者にすれば「どうでもいいこと」なのでしょう。
私たちは給料もらうために働いていて、アフターファイブにこそ人生の楽しみが詰まっている。充実したオタクライフを送ることが大事。そして趣味に理解力のある恋人がいれば最高。…という気持ちがあからさまで、かえって清々しい。
また、このアニメのキャラはみな飾り気がなく、自分の気持ちに正直です。今この人物がどういう気持ちでいるのか非常に分かりやすい。全体を通じて共感しやすい作風になっている。これが本作の優れているもうひとつの点でしょう。
■欠点
さて。ここまでこのアニメを褒めてきましたが、評価サイトで辛めの点数を付けている以上、欠点だと感じたことも書いておきます。
恋愛物としてはキャラの配置もいいし造形もしっかりして良いのですが、ヲタ恋はラブが2でギャグが8くらいの割合の作品なのです。大半を占めるギャグがちょっといただけない。ありきたりなオタクあるあるネタが多くて新鮮味がない。コスプレ、BLといった女性オタクネタも浅い。原作はオタクネタを畳みかけるようにぶち込んでいくので気にならないのだけど、主人公の宏嵩がボソボソしゃべることもあってアニメ版はテンポが悪く感じました。恋愛物らしいデート回があるのは後半の第9話。まぁこれはもともとの作風だからどうしようもないことですが、個人的にはラブとギャグが1:1くらいでも良かったかな。
作画。素人目に見ても低品質だと思います。A-1は自社でアニメーターを抱えているわけではないので作品によってバラツキがあることは承知していますが、ノイタミナ枠のアニメとしては少しがっかり。また演出にもやや疑問を感じる場面がちらほら。特に不評なのはRPG的なメッセージを機械声で読み上げる演出ですね。他の方も指摘されている通り、ファミコン風であるなら読み上げる必要はありません。違和感が半端ない。他に例を挙げると、みんなが据え置きゲームで盛り上がっている場面をずっとモニタの裏側から映す構図で見せるのはどうかと思いました。ここはゲーム画面もちょっとは見せてくれないと視聴者は置いて行かれる。まぁ手抜きですね…全体的に作りに粗さがあることは否めません。
■まとめ
女性なら共感できて楽しめるんじゃない?