◇fumi◆ さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
虹の都光の都キネマの天地 花の姿春の匂いあふるる処
2002年公開のアニメ映画 87分
監督脚本原案キャラデザ 今敏 音楽 平沢進 作画監督 本田雄
制作 マッドハウス
今監督は1997年に初監督作品となる「PERFECT BLUE」で高い評価を受けました。
さて、第二作と言うことで筒井康隆の「パプリカ」制作を企画しましたが頓挫、
今監督によるオリジナル作品へとシフトしました。
調べて見たところ、前作と同様の低予算作品だったらしいんですが、
物語、作画、声優、音楽共に一級品で時期を考えると奇跡のような出来です。
現代では今監督の代表作は最初期の2作で意見一致するでしょうが、
現実はハングリー精神たっぷりの根性の作品だったようですね。
この作品の構成はSF作家カートヴォネガットの「スローターハウス5」を参考にしたと思われますが、
同作家の「タイタンの妖女」、ディックの「去年を待ちながら」、ゼラズニーの「北斎の富獄二十四景」
などなど、今さんの好きなSF作家の匂いがしてきます。
でも、それは構成に関してのみであって作品はSFではなく、
「信頼できない語り手による物語」というジャンルの設定です。
嘘が混ざっている可能性を示した部分が各所に見受けられます。
藤原千代子(70代) CV荘司美代子
藤原千代子(30代~40代) CV小山菜美
藤原千代子(10代~20代) CV折笠富美子
声優の紹介はこれだけでいいでしょう。
昭和の時代を生き抜いた女の一代記です。
協力に入っている映画会社「松竹」が舞台であると思われます。
なので、「蒲田行進曲」のアニメ版と理解して間違いないと思います。
設定も物語もテーマもキャラも全然違いますが、映画の映画という点では一致します。
今は無き松竹の蒲田撮影所のはずですが、特に現実背景(撮影現場など)に凝るわけではなく、
主人公の回想をリアル(空想的に)に描いた作品です。
松竹の怪獣映画「ギララ」など松竹キネマを存分に味わえます。
見た感想としては、人生の鍵を探す女の生涯を描く純文学的物語と言うよりは、
昭和30年代の日本人の魂ともいえるキネマの天地を、一人の女性を使って描いた作品と感じました。
「スローターハウス5」の体裁を借りた「蒲田行進曲」
つまりキネマのほうが主役と。
オリリンと菜美さんの声の切り替えもぞくぞくしますが、
やはり、主役は40~60年代の日本映画を現代的に再現した魂の作画。
この時代の日本人にとって映画館はお茶の間の続き部屋だったのです。
怪しい「電影箱」などに手が届かない庶民にとって最も身近な娯楽は映画でした。
映画は毎週のように新作続編が公開され、ドラマの続きを見るように殺到しました。
もちろんほとんどは超低予算でいつも同じ俳優の適当演技でしたが。
だからこそ、一人の俳優が千年の時代に匹敵する役どころを演じることが可能になったのです。
「千年の呪い」とは「千年の歴史を演じる」または「この演技が千年残る」と言う意味かと思いました。
監督の才能が爆裂した最高傑作として日本アニメーションに千年残る傑作でしょう。