oxPGx85958 さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
手堅い佳作ではあるが…
何も知らずに見始めたので、特に第1話は衝撃的で、その後も物語に引きこまれて一気に見ました。現在、本サイトでは59.7点でランキング3614位ですが、こんな位置にいるべき作品ではありません。
登場するキャラクターたちがそれぞれしっかりと性格付けされていて、物語世界の中で起こる事件に対応してそれぞれの動機で行動し、その相互作用の結果として物語が進んでいきます。日本のアニメ作品には珍しい王道の作りであると感じました。原作のマンガは未読ですが、もともとマンガがしっかりしていたのに加えて、アニメ化にあたっての脚本もうまく作られていたようです。
と、そこまで持ち上げておいてなんですが、最後まで見ての感想は、なんか物足りなさが残るなというものではあるのです。破綻がなく構成力がしっかりしているが、センス・オブ・ワンダーに欠ける小粒なスティーブン・キング・ワナビー、みたいな。
センス・オブ・ワンダーの欠如は、アニメ作品としての諸要素についても言えます。もともと地味目な絵と登場人物たちであるだけに、とんでもなく異様な世界を描いているはずなのに、何世代も前の日常系アニメを見ている感覚。もともとそのギャップが狙いではあったのでしょうが、映像としての異化効果がうまく働いていなかった。
一つ思ったのは、「止まっている世界」というのをアニメで描くのはそんなに簡単なことではない、ということ。実写作品だと、空中の物体や動作途中の人間を静止させるだけで異様さが生まれますが、アニメだと何らかの工夫をしないと、作画の手抜きをしている作品と区別がつかなくなりかねない。
このことを含めて、特殊な話であるだけに、アニメ化にあたって計算しきれない部分があったのかな、と感じました。マンガで描かれているものをそのまま動かすだけじゃ足りない、と。
主演の安済知佳はほんとに素晴らしい。この人の力は、こういうキャラクター・ドリブンのしっかりした脚本でこそ発揮されると改めて思いました。
他方で、その他のキャラクターのほとんどが典型的な声優演技をしていたことが、「地味なアニメ」感を強めていたことは確かです。