ぺー さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
これは父と母の物語
2018.06.05記
と、団塊Jr.近辺の私は思うのであります。
原作未読。実写映画化がらみでの再放送にて視聴。
時代設定が昭和40年代始め(1966年)、Jazzで繋がる二人の男を軸にした友情の物語です。
セリフ回し、特に男女のやりとりは今の私たちから見ればよく言えば謙虚、むしろもどかしさが目立つのですが、これも50年前ということを考えれば父母世代から伝え聞く話と妙に一致してたりするので父母世代の青春時代を想像しながら堪能しました。人によっては祖父母世代の話かもしれませんね。
セリフ回し以上に、世相や背景絵など時代を切り取った描写にあふれてます。
{netabare}・学生運動に翻弄される男女
・夜行電車にまつわる人間模様
・軍港佐世保の名残り
・ビートルズだけではなくスパイダーズまでも
その他大なり小なり時代考証きっちりやったなと感心します。{/netabare}
以前、大正生まれの祖母を連れ立って『三丁目の夕日』を鑑賞した時に「懐かしい」と涙を流しておりました。このアニメ作品を父母が観たらどんな反応をするのだろう?父母の若い時ってどうだったんだろう?と世代間コミュニケーションを促してくれそうなそんな稀有な作品です。
時代考証がイマイチだとそうは思わなかったと思います。
物語は王道で後半ちょっと駆け足、声優さんの演技も普通、作画は好き嫌い別れそう、音楽は演奏描写も含めてGood、等々及第点の佳作の印象。
どっぷりこの時代の空気に浸るくらいの心持ちで鑑賞するのがおすすめです。
■モーニンの人の小噺
{netabare}アート・ブレイキー
大の親日家と言われてます。wikiにもそれらしいこと書いてます。ジャズプレイヤーとして名声を得てる中でも黒人に対する差別はすさまじく、相当端折るとブレイキーもヒトではなく本国ではモノ扱いでした。遠い異国では会う人みんなヒトとして扱ってくれる、奏でる音楽をそのまんま評価してくれる。そこにシビれて憧れてくれたという背景があります。{/netabare}
{netabare}モーニンはこの作品の中では特別な曲で、要所要所でかかります。千の苦悩もきっかけは混血であったこと。バーで白人のおっさんがからんできたこと。人種問題に絡めると風呂敷拡げすぎなんでしょうが、それこそアメリカで公民権法が制定(1964年)されて間もない時期にブレイキーのモーニンをメインにもってくるあたり、作者の意図なのか粋だなぁ、と思うところですね。{/netabare}
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2018.10.23追記
《配点を修正》
ある種の時代ものでした。しかも切り取った年次がけっこう珍しい気がしてます。比較対象は20世紀少年あたりか!?
昭和40年代は面白そうな時代。高度成長で日進月歩する経済と、かたや泥沼化するベトナム戦争の厭戦気分など入り混じるカオスな状況。
この時期に青春を送ったのが団塊の先輩たち、齢70前後。
この時期に少年期を過ごしたのが今会社で中核を成している諸先輩方、齢60前後。高橋留美子氏、浦沢直樹氏や細野不二彦氏あたりの世代ですかね。
目に見える事象は追えてるのでしょうが、作品を通して空気感のようなものを再現できているのか?
この時代を生きてきた諸先輩に聞いてみたいところですね。
多くの方が言及されてる魅せどころ{netabare}(学園祭の演奏シーン){/netabare}は、その通りたしかに名シーンと言えるでしょう。
前後の物語の流れもそのシーンだけが浮いてしまうような展開ではありませんでした。
それゆえ、さらに欲深く、ある種の時代ものとしての本作について、私が知り得ない空気のようなものまでリアルだったらうれしいな、という願望です。
だいぶ先でしょうが、そのうち戦争ものと同じく時代の証人はいなくなりますから。