Seven_7G3A さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
良かったけど、スッキリしない物語。
(原作未読で)見終わった直後の感想
「感動はした、名作は間違いない。げど何か胸のモヤモヤが...」
「(エンドロールで)えっ、硝子の声優、早見沙織!? 流石ですね...」
作画:京アニだけあって素晴らしい作画。満点です。
声優:特に主役の早見さんと妹役の悠木碧が良かった。
物語:ここなんですよねー。物語は主人公の男子高校生(将也)、そして、その主人公の小学生時代に同級生だった聴覚障害の少女(硝子)の妹(結絃)の視点から語られていきます。
とりあえず、主人公がクズです。もう本当にクズ。眼をそむけたくなるクズ。
{netabare}小学校時代、聴覚障害のある転校生の少女(硝子)をいじめて、それでも健気に(聴覚障害を持っている自分が悪いんだから)「ごめんなさい」と言って友達になろうとしてくる硝子を、うざがり更にいじめます。そのいじめっ子グループは、硝子の味方になった子もいじめで転校させ、硝子も最終的には転校させます。硝子の補聴器すら強引に取り上げ、怪我をさせ、補聴器を壊す、故障させるなどしています。もう本当に胸糞展開。映画冒頭に出てくる主人公が計画的に自殺しようとしてるシーンにも同情できない。いくら反省し報いを受けようとしたとしても。本当に心底嫌いな主人公の出来上がりです。 {/netabare}
ここが、この前提が、「校正した、反省した、罰を受けた」としても、視聴後のモヤモヤを生んでいます。
そもそも扱っているテーマ「いじめ問題」自体が重すぎる。
{netabare} 自殺失敗前後に、 いじめの加害者(将也)が被害者(硝子)を訪ねていき、今でも健気な被害者(硝子)と交流を深めていき、その妹とも交流を深めていく。その後も、小学校時代のいじめグループの人間やら、硝子の味方で引っ越した子やら、主人公の高校からの友達も巻き込んで、仲良しごっこ集団を形成していく。そして、被害者(硝子)が加害者(将也)に「づき」と伝わらなかったけど告白。{/netabare}
うーん、うーん。えー。あっそー。
{netabare} 将也が元「いじめの加害者」であったことがバレて、硝子の前で 仲良しごっこ集団崩壊。おばあちゃんも死去。硝子・結絃が主人公を家に呼んで被害者母と表面上の和解→被害者一家と花火大会→何故か突然、硝子が帰ると言い出す。見送る。妹が機転を利かせて主人公を被害者家に行かせる→硝子が自殺スタンバイ→助けた代わりに主人公が被害を受ける。意識不明で入院。{/netabare}
なんやろ、主人公周りのくっついたり離れたりの動機描写が結構「ふわっ」としてるなー。ただのラブストーリーったらビビッと来た!的「ふわっ」とした動機でも許せるけど、被害者と加害者ですよ。よっぽどの動機がないと納得いかないけどなー。超えなきゃいけないハードルはかなり高いスタート設定だけどなー。
{netabare}しかし、この事件で元被害者家と元加害者家の立場が逆転し、硝子の母親が、主人公の母親に土下座して謝るシーンには本当に泣かされました。妹も加わって土下座。病院の外では硝子が元女いじめっ子リーダーにより、暴力を受けてる。それにより、硝子の自殺の原因が、「自分は災いの原因で、自分さえ居無くなれば、みんな幸せになれる」というものだったとハッキリ分かる。両母親が止めに入り、硝子は元加害者母の足に地べたですがり付き謝罪。{/netabare}
そしてしばらくして主人公も回復し、また仲良しごっこ集団が回復し、主人公自身の問題も解決していき。尻切れトンボな感じで終了。
硝子は最初から最後まで健気で優しい。
主人公は、栄光の時代に罪を犯し、どん底まで行って回復する。
自業自得やん!不良がちょっと良いことしたらすごく良い事してるように見えるのと同じで、まず「不良である」という前提を忘れすぎ。この主人公も、罪の意識にさいなまれ校正して回復する。でもクズやん!
お前の回復に被害者利用するのは止めてくれ、そっとしてあげてくれ、という思いが、常にモヤモヤを生んでしまいました。
でも両親は、当事者じゃないけど責任を負わなきゃならない。結果、両家が加害者であり被害者になってしまう。その健気な硝子の母親が謝罪するシーンは本当にやりきれなくて泣いてしまいました。
良作です。間違いなく。しかし、スッキリしない。
主人公が成長し回復する、これハッピーエンドですか?
成長を喜べるか? 僕にとっては両方ノーでした。
◆追記◆(「3月のライオン」2期までを未視聴の方は見ないで下さい){netabare}
「3月のライオン」2期のひなちゃん中心回なのですが、本当にいじめの展開がリアルで、結末も説得力がありました。被害者は本当に心に傷を持ちます。「聲の形」を見た後に、「3月のライオン」2期を観ましたが、「聲の形」の中盤以降の展開で、被害者と加害者が仲良しごっこ集団を作るのだけど、本当にリアリティーがないと改めて感じましたね。それぐらい、被害者と加害者の間には高い壁があると思います。ましてや恋愛感情なんて!「聲の形」作者はたぶん加害者寄りの視点の持ち主なのかな...と思います。「被害者は謝れば許すでしょ?その後、加害者と友達になったり恋愛対象になったり被害者もできるでしょ?」という考えですよね本作も。でも「3月のライオン」作者は被害者寄りで、「絶対許さない!」と結論付けています。 善悪論ではなく、どっちが加害者・被害者双方の心情描写として現実味があるか?という意味で、断然「3月のライオン」でしたね。僕個人的には。「3月のライオン」も良作ですのでおススメです!{/netabare}