天啓 さんの感想・評価
4.2
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
親友の作り方
南極観測隊に同行した女子高生4人の友情と絆を育てる様子を描いた作品
さて、皆さんは南極というとどういうイメージを持つだろうか?
おそらくは、雪と氷に覆われた大地 とても寒いところというイメージをもっているのでは無いだろうか?
あとは、オーロラ、ペンギン、ブリザードだろうか
それも南極の一面ではあるが、そのイメージを固定的にしてしまったのは
過去に色々作られた 南極越冬隊を題材にした実写映画の影響が大きい
タロ、ジロで有名な南極物語や、宗谷物語、南極料理人等々
それらは、南極越冬隊の過酷な自然の中で死の危険と隣り合わせの状態で任務を遂行する隊員達を描き、時折見せる オーロラなどの美しい自然現象のギャップで視聴者を感動させるというコンセプトの作品だった
本作も同じ南極を題材にしてはいるが、上記のイメージとはまったく違う
越冬隊の活躍を描いた作品は多いが夏隊の活躍を描いた作品は皆無である
それは何故か、ぶっちゃけ夏隊は物語にしても面白くない、夏場の昭和基地周辺も正直絵にならないからである
本作はその夏隊の滞在期間に同行した女子高生4人の話
ここで、出来れば本作を視聴する前に知っておいた方が良いと思われる情報
1、南極観測隊は 夏隊と越冬隊とがある
夏隊の滞在期間は南極の真夏に当たる1月~3月の約3ヶ月で、主な任務は建築、土木、観測装置、通信機器の設置設営であり まあ土建屋さんに近い
また越冬隊の滞在期間は1月~翌年の3月(次期観測隊の夏隊と一緒に帰る)の1年3ヶ月のかなり長期である
任務は 気象観測、地質調査、生物調査、天体観測etc を行う学者さんたちが主で構成される
2、昭和基地周辺の平均温度
昭和基地は沿岸地域にあり南極大陸の中でも 比較的温暖な地にある
と言っても 年間平均気温は氷点下10度であるから冬場は氷点下20度 を超える日もある
観測隊が到着する1月の平均気温はなんと氷点下0.7度であり、仙台や福 島より暖かい
そのため、基地の周辺の氷雪は溶け 周囲は地表が露出し、みずたまりだ らけという状態になる
3.オーロラが見えるタイミング
オーロラは年中見えるわけでは無い 9月~10月の真冬と 3月~4月の間 だけ 太陽活動の影響は判っているものの、何故その期間だけ黒点活動が 活発になるのかは判っていないらしい 太陽活動の影響なので南極と北極 とで 両方同時にオーロラが観測される
ということで夏隊が南極大陸から オーロラを見ることは無い
帰還の途中 3月末に帰還船の上から見られれば超ラッキーである
以上を踏まえ、本作を視聴することをお勧めしたい
さて前置きが長くなってしまったが、本作の感想
民間南極観測隊に参加して遭難した小淵沢報瀬の母 タカコ
娘、報瀬は、その事実を直視できずに 自分の目で確認したいという思いに駆られ南極へ行きたいと常々思っており、南極までの渡航費用を捻出するためバイトをして渡航費(100万)を溜めていた
ここで思ったこと
この母親、いくら仕事とは言え、そんな長期間 娘ほったらかしでいいのかよ?
と少し思った まあ仕事だし仕方ないか?
周囲からは、女子高生が南極なんか行けるわけ無い バカじゃないの
と揶揄されていた
そんなとき、同じ学校のキマリと出会う
キマリは報瀬の真剣さを目の当たりにし、報瀬と南極に興味をもち
自分も一緒に行きたいと言い出す
その頃、報瀬、キマリに対して学校で悪い噂が流れる
普通の高校生活に何か物足りなさと閉塞感を覚えており
何か変わったことをしたいと思っていたとしても
南極行きの決意としてはちょっと弱いように感じた
報瀬の母への強い思いがあるから、余計弱く感じたんだと思う
そして動機が弱いもう一人 コンビにでバイトしていた日向と出会う
彼女は高校を中退し、自力で大学を目指している頑張りやさん
キマリや報瀬の南極行きたいという話しを聞き
大学受験までに何か大きなことをしてみたいと考えていたので
その話に乗った訳だが、これも動機としては今ひとつ弱い
そして4人目 結望
彼女は新進のアイドルであり 南極レポートをするという仕事を母である
マネージャーが勝手にとってきたとしており
自分は行きたくないと思っていた
幼い頃から芸能活動に明け暮れ、友達がまったくいなかった
そこへ、キマリ、報瀬、日向の3人がその話を聞きつけ
自分達も一緒に行かせて欲しいと懇願する
そして結望の話を聞き、彼女の心情を理解し、無理にお願いするわけにも
いかないと 引き下がる結望は親身にって話を聞いてくれた彼女ら3人に 何か友情めいた感情をいだくようになり、あの3人が一緒に行くならということでこの仕事を受諾し、晴れて4人揃って南極行きが決定する
もちろん、そうと決まれば、観測隊の一員として行くわけで
事前に訓練を受けることになるのだが
ちょっと訓練受けましたよ程度の描写で やや不満
作品のテーマや尺の関係で いたしかた無い部分ではあるが
見せ場1
南極出発が近くなったある日
キマリの幼馴染で親友のめぐみがキマリの元を訪れ
悪い噂を流したのは自分だと告白する
{netabare}キマリが自分に依存していると思っていたが
実は自分がキマリに依存しており
なんか 報瀬にキマリが取られた様な感覚に陥り、悪い噂を流した
こんな自分を許せないだろうから、絶交してくれと懇願する {/netabare}
それを優しく許すキマリ 別に気にするようなことじゃないから
私たち親友でしょ だから絶交は無効 と絶交しないことを宣言する
ここも親友のあり方を表現した良いシーンだった
南極までの道程やその中で起こったハプニング
パスポート紛失事件や荒れた海で経験したことの無いような激しい船酔い
といった苦境を同時に体験することにより、少しづつ 連帯感が強まっていく
南極に着き 思わず報瀬はざまあみろ!と叫ぶ
観測隊員達も釣られて同じ様に叫ぶ
報瀬は、女子高生が南極なんか行けるわけないと揶揄され続けたことに対しての発言ではあるが、もう一つ 重要な演出でもある
本来の目的である母の遺品探しのことを忘れかけてるという表現でもある
母の遭難場所へいくことをためらうことへの伏線でもあると感じた
南極へ到着したときに見えた光景 地表がむき出しになって、茶色と白のまだら模様
これが南極の1月の真実であり、よく描けている
さて南極での彼女らの仕事ぶり
まあ、遊んでる様にしか見えなかった
報瀬以外の3人は南極に行くこと自体が目的だったので
それはそれで仕方ない
見せ場2
南極からのライブ配信の日
{netabare}
画面の向こう側に日向の同級生が現れる
彼女らは日向を退学に追い込んだ連中だった
それを謝罪しようと 日向がレポーターとして南極へ行っていることを知り
そのときの謝罪をするつもりで来たらしい
彼女らの対面にストレスを感じ、荒れる日向
配信が始まり、カメラの前にでようとしない日向
そんな彼女の心中を察し、報瀬が彼女達を一喝する
一生罪を背負って生きていけ!{/netabare}
私が一番本作で気に入ったシーン
単なる知り合い程度と親友の比較を明確に表していた良いシーンだし
報瀬の一括もすっきりした。
見せ場3
結望の葛藤
{netabare}幼い頃から芸能活動に明け暮れ、友達がまったくいなかった彼女 友達の定義がわからない
他の3人が私たち もう親友でしょと声をかける
友達ってお互い思いやって 感じる物だと教えてもらい
納得する{/netabare}
見せ場4
報瀬母の遺品探し
{netabare} 母が遭難した場所へ 行くことが決まり(おそらくは瑞穂基地)
一旦はいく事をためらう報瀬だったが
本来の目的を思い出し 4人とも同行することに
そして遺品探しをする4人だが、なかなか見つからない
報瀬のため、なんとしても探し出すという決意のもと
1台のノートPCを見つける
これが報瀬母の遺品だった
そして昭和基地まで戻り、電源を入れ、メールをチェックする報瀬
注,NET環境があるのは昭和基地だけで他の基地には無い
メールソフトが起動し、自分が母宛に送った何百通にもなる
未読メールが次々に流れるのを見て 大粒の涙を流す報瀬
それをこっそりと見ていた他の3人も 大粒の涙を流す{/netabare}
親友との共感を描いたシーンで
一番泣けるシーンだった
そして、南極の滞在期間が終わり 再び観測船へ乗りこみ帰還の途へ着く
船上からまだ完全に暗くならない空にオーロラが見える
オーロラが見え始める3月である これもリアルな描写であり 綺麗な演出だった
ラストは成田か羽田か判らないが 空路で帰還、その際 友情を確かめ合うように {netabare} またこの4人で旅に出ようと約束する {/netabare}
でも、これ、本当に行けるのか?という疑問が残った
それぞれ、高校を卒業したらしたで、忙しくなるからね
大学なら夏休みは2ヶ月くらいはあるから可能かもしれないけど・・・
親友の在り方がどういうものかを教えてくれた素晴らしい作品でした。