あぱぱ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
実録 この世界の片隅に
視聴回数 5回くらい
世の中に反響を与えた有名な作品。戦争と生きるメッセージが刻まれています。
私の住まいは、この舞台になったところの目と鼻の先にあります。
子供の頃から馴染んでいたせいか、作中の防空壕や、将棋板のように走っている道の風景、山の勾配へ狭い路地に並ぶ住宅など、作品の中で描写されている情景がごく当たり前のように目に浮かびます。
実体験で言えば、防空壕の中はひんやりと冷たくて、奥に入っていけば外の音も聞こえなくなり、太陽の光も射してこない絶望的な気分にさせる空間になっています。人が掘った穴なので安全性もなく、いつ崩れて生き埋めになってもおかしくない場所。むき出しの地肌で、作品のような添え木は無かったです。
(今では封鎖されたり、埋められたりして入れません)
作品の描写で空襲のたびに防空壕へ非難する場面を見ると、私が感じた以上に恐怖と絶望に毎日怯えながら生きていたのだと感じます。
小学生の頃でしたが、7月1日に空襲追悼のために黙祷をする時間と、戦争について学ぶ時間がありました。
{netabare}空襲でスズさんが手を無くしてしまいますが、実際にそういう傷を残した人たちも身近で見てきました。
(両足がない人、両目が潰れてしまった人、喉がやられて声が出せなくなった人など)
そんな境遇になってしまった人たちも、スズさんと同じように精一杯行き続けています。{/netabare}
{netabare}物語中では語られていないですが、実際にあったお話です。
度重なる空襲で持病と空爆で生きるのが精一杯だった方がいました。
その家族の人たちは治療することもできず、苦しむ家族の姿を見続けるのが辛く、苦しむ本人のために穴を掘って生き埋めにして家族を殺すようなこともあったとのことです。{/netabare}
作品全体のイメージは地味な感じに受けますが、食へのありがたさや、生きていくための心の糧(絵を描く)など、平和な時代であっても大切にしていきたい内容が含まれています。
声優のキャストたちの演技も忠実で驚かされます。
広島弁と呉弁は若干イントネーションや語尾など違いがあります。この細かい部分を聞き分けるのは困難ですが、私が聴いた限りでは上手に表現されています。
2度と起こしてはいけない戦争の悲惨さを知るテーマとは別に、辛いことがあっても前向きに生き続けていく気持ちを大切にしたいという方に視聴していただきたいです。
映像で描写されるより、現実はそれ以上に悲惨です。体や心に傷を残して今日も生き続けています。