kurosuke40 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
世界の美しさについて
「あのシズって人はよくいろんな国に干渉するけど、キノは基本不干渉だよね。」
「そうだね。」
「なんで?」
「なんでって……。性格によるところもあると思うけど」
「性格?」
「えーと……。そうだね、ここに絶妙に積み上げられた石があるとする。」
「絶妙? 今にも崩れそうな?」
「そう、なんで崩れてないのかわからないような。」
「僕はね、その状態自体が好きなんだと思う。だけどシズさんは危なっかしいと思って地に降ろしちゃうんだろうね」
「なるほど、性格の問題だ」
「だね」
「でも、キノも干渉したこともあったよね。そのシズって人の国とか」
「僕にだって好きな作品もあれば嫌いなのもある」
「キノの好き嫌いが激しくなくて良かった」
「全くだ」
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原作ははるか昔学生のころに。
口調とか呼び方とかは異なっていたらごめんなさい。
国と国の間を巡る旅人のキノとエルメスの寓話的お話群。
1巻の冒頭にある「世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい」という言葉について、なんとなくそういうことかと腑に落ちた。
世界は美しくない。
世界は理想とはかけ離れた、不揃いなものばっかりだ。
完全な円なるものもなければ、理想的な人や人生なんてものもない。
世界を構成するのは人の臆病さ、あるいは偶然だ。
準安定的な位置で立ち止まって、より安定的な位置に怖がって移動しない人の弱さ、
あるいは、たまたまとしか言いようのない周りの環境やいろいろなタイミングの偶然。
ただそれらがあれやこれやと積み重なった状態が、今ここに現存するということ。
どうやったらこの状態になってしまうのか、と訝しる状態。
砂上の楼閣のごとく成り立っている一見平凡に見える今の状態。
設計という言葉とは無縁な構造物が世界に存在する。
キノが感じる美しさとは、さながら、「定規では描けない不規則な人模様」といったところか。
世界には完璧さ、完全さという意味の美しさはないけど、
絶妙なバランスで積み上げられた石に対するような感銘を与える構造物になっている。
嘘つきたちの国の構造が見えたとき、
あなたはその構造の美しさを感じなかっただろうか。
また、その美しさは当の本人たちには往々にしてわからないものらしい。
キノ自身だってなぜ今彼女自身がここにこのようにいるのか。このようになっているのか。
彼女自身には意味がわからない。
彼女にとって、彼女はただ彼女であり、普通で、何の変哲もないものである。醜くさえ見える。
ただ我々から見て、キノの人生は壮絶なもので、
実際、キノという男性の旅人や師匠との出会いや、彼女自身の1つ1つの選択から成り立っている。
私にとって私の人生は何の変哲もないものだけど、
きっと他の人から見ると美しくも見える。そういうものなのでしょうね。
誰の人生も。
蛇足
アニメは主要人物に関わる話を選んで、1つの物語としてまとめている。
いわゆるコナンで言うところの黒ずくめの男たちに関わる話をピックアップした感じで、
そのため、キノと同じ楽しみ方は原作より薄いかもしれない。
人模様を描いた作品だから、皮肉になり、寓話になるのでしょうね。
優しい国はちょっと非現実的じゃないかなーと、郷土愛がない私からは思えてしまうけど、
郷土愛にあふれた人だとああなるのかな。
もう視聴したのは結構前ですが、ちゃんと感想は書いとかないと前に進めない感じがあったので、書いとく。