退会済のユーザー さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
“アニメ化”という名の再解釈
マンガ原作既読。
原作が古典ということもあって,観る世代によって評価がわかれる作品だろう。僕は原作を読んだ世代だが,このアニメ化はとてもよく出来ていたと思う。
若き日の永井豪の,荒削りだが躍動的な作画を,湯浅政明監督独特の動きで表現したのは正解だったろう。特にデビル化した人間たちが疾走する姿を横から捉えたカットは素晴らしかった。湯浅アニメの「人の四肢はあんな風に動かない」という不自然さが,「デビルマン」というキャラクター造形にはむしろ自然にマッチしたと言える。
また,舞台を川崎に置き,不良グループをラッパー集団に置き換えたのも秀逸な解釈だ。「川崎」「ラップ」による再解釈については,以下のTBSラジオのトークを聞いて頂くのがいいだろう。僕の駄文なんかよりもはるかに面白い話が聞ける。
「デビルマンCrybaby」湯浅監督,生出演で宇多丸と本作の神髄語る
https://www.tbsradio.jp/245133
美樹の最期を初めて映像化したというのも大きな功績だ。原作を読んだ時,例のシーンで「まさかまさかまさか…」と思ったものだが,今作を観た時にもやはり「まさかまさかまさか…」である。やはりこのシーンはデビルマンという作品に必要不可欠なのだ。逃げも誤魔化しもしなかった湯浅に拍手。
飛鳥了役の村瀬歩の演技も素晴らしかった。彼の英語力を存分に活かせる役どころというのもあるが,それ以上に,ラストシーンでアンドロギュノスが露呈した瞬間の声のトーンの変化には驚いた。わずかな違いだが,説得力があった。
この作品に関し「オシャレサブカルアニメvsオタクアニメ」などというありもしない対立構図を持ち出して扱き下ろした某氏や,「昔ながらのオタクに訴えかけていない」などと言って過小評価した某氏が登場して物議を醸したのは印象的だった。偏見のない現代のアニメ視聴者なら,「オシャレっぽいかオタクっぽいか」などと言う偏狭な価値判断でアニメを観ていないだろう。彼らにとってアニメはアニメだ。また,彼らにとって「昔ながらのオタク」の価値観は,ノスタルジーの対象ではあっても,もはや全くリアリティのない話だ。結局,こうしたアーカイックな評価軸で反発した評者がいたということが,アニメの表現が変化しつつあることの証拠かもしれない。
あらゆる変化が劣化にしか見えなくなったとき,老化が始まると僕は思っている。