みかんとラッパ さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
心温まる作品
原作が良くできていたそうなので
京アニがNetflixでジャパニメーションとして
堂々と世に放ったのも納得です。
―「愛」の意味を知りたいのです。-
そう言った少女の想いに周囲も巻き込まれてゆく。
ある意味「最終兵器彼女」だった少女が
戦後、手紙の代筆業に就くことに。
最後の戦闘で大切な主(あるじ)から言われた「愛してる」。
その言葉の意味を知らない少女は手紙の代筆を重ねるとともに
その意味を少しづつひろいあげてゆく。
とても面白かった点は2つ。
まず、手紙の代筆の依頼主という役柄で毎回違った人を登場させることで
様々な事情を抱えた戦後の人々にスポットをあてた点。
「戦後もの」というジャンルに勝手ながらカテゴライズしても
そう作品数はありません。
「ガンダム(1年戦争後)」はこの際置いておくとして、
具体的に戦後社会を背景にした作品は
「ソラノヲト」
「パンプキン・シザーズ」
くらいでしょうか。
「音楽」という瞬間芸術を媒体にした「ソラノヲト」も
面白かったのですが、
「手紙」は存在する限り遡及性をもつ芸術である点をうまく媒体として用いています。現代批判ではありませんが、死んだ人からメールは届きませんが、手紙は届くことはあります。
3/11の震災後、1年後やご遺体発見後、死亡届を出した当日などに死者からメールが届いたという事例が少なからず報告されているそうです。現在、脳科学と人文学の研究者が論文執筆中だというのですが興味深いですね。
話がそれましたが、
手紙特有のタイムラグも小説では昔から使われてきました。
そもそも小説の内容が手紙に記されたものだった、なんて「入れ子構造」も読者を楽しませる工夫の一つです。
この作品も、そうした工夫が随所にみられるのが見所です。
あれ、普通のアニメとちょっと違うぞ?という演出が多々あります。
もう一つの点は
京アニの強みをここぞとばかりに発揮した描写の数々です。
主人公の表情、特に目で語らせることができるのは京アニならではだと思います。
悲しければ雨が降る、希望があれば朝日が昇る。
よく見るありふれた演出もとても新しく感じます。
この対極にあるのが「ガンダム」(特に新作のTHE ORIGIN)だと考えています。
スローモーションでコップや水瓶が落ちて割れる。倒れるダイクン。
大げさにも思える昔ながらの演出の良さに対し、
違った新しい手法を示す京アニ。
どちらが良いかではなく、
どちらも踏まえて、作品の幅の広さをジャパニメーションとしてとらえるのが正しい認識でしょう。
一方で、京アニの弱点も露呈させた本作品。
ずばり、「音楽」ですね。
作品世界にマッチした音楽を書ける先生をつかまえられていないのが
京アニ唯一の弱みでしょうか。
在京の先生だっていらっしゃるでしょうに。
今回のEvan Callがダメということではないですが、
声優アーティストのコネクションでしかないというのが残念なところ。
恐らく、彼を雇うからEdに彼女を起用せざるを得なかったというのが裏事情でしょう。PVのViolet Snowはどこへ行ったのかと、その点は悔やまれます。